You Could Be Mine 【改訂版】

てらだりょう

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そのじゅうよん

そのじゅうよん-11

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手を。

あたしに伸ばして。

あたしの頭の後ろひっつかんで。

「んんーっ!!」

キスしやがった。

しかも舌入れて。

こ、コイツ起きてんやないか!?

「みのりさん…」

唇離してあたしを抱き締めて。

その手で髪を撫でる。

「みのりさん…」

何度も名前呼びながら。

あたしの頭抱え込んだまま。

「みのりさん…」

何度も。

何度も。

小さい声で呟くように。

あたしの名前、呼んで。

髪がぐしゃぐしゃになるまで撫でて。

「…みのりさん?」

ようやく。

眼を開いて。

あたしを見た。

肩掴んで。

抱き締めてたあたしを起こして。

あたしを見る。

口開いてるぞ。

「みの…りさん」

そうだよ。

ぼんやりしてたのがはっとした顔なって。

あたしから眼そらした。

「な…にしに来たの…んだよ」

言い直すなよ。

「ああ…」

もっかいこっち向いた。

「また俺に抱かれたいとか。そう言うワケ?」

見えすいてんだよ。

なに。その必死な笑顔は。

「いいけどさ、俺入院中だしめいわく…いたっ!」

両手でほっぺた叩いてやった。

ちょっと冬馬くんの真似。

「なにす…」

「ばあか。ネタは上がってんだよ」

「は…?」

きょとんとした顔で。

あたしを見つめる。

「松本さんから聞いたし」

「え」

びっくりした顔。

「え」のまま口固まってやがる。

ったく。

「一人でなにやってんのよっ!この」

「み…」

「どあほっ!!」

泣きそうな顔。

眼にいっぱい涙溜めて。

「だって俺…みのりさんを守りたくて…」

「で?」

「俺みたいのが一緒にいたらみのりさんにキズがつくから…みのりさんの邪魔になっちゃいけないから…それだけはダメだと思って…守るためには俺が離れるしかないと…思って」

ホント。この。

ばかやろおが!! 

「なんでよ!あたしを守るんならちゃんと傍にいて守ってよっ」

「みのりさん…」

「ずうっと一緒にいるって言ったの」

「俺…」

「尊やろっ!!」

名前を口にした途端。

涙が溢れる。

ずっと閉じ込めてた。

名前。

「みのりさん…」

少し震える手。

ぎこちないくらいゆっくり伸ばしてきて。

両手であたしのほっぺた触る。

「みのりさん…」

髪触って。

眼触って。

鼻触って。

唇触って。

「みのりさん…」

泣きながら。

あたしの名前呼んで。

「みのりさんっ」

ぎゅう、っと。

あたしを。

抱き締めた。

「さっき…みのりさんとキスする夢みた…」

いや、してたし。

「いつも…みのりさんの夢ばっかみてた」

「うん」

「初めて会った時の事とか。みのりさん抱っこしてる時の事とか」

「うん」

「毎日みたいに夢に出てくるのに…眼が覚めたらみのりさんいなくて…」

「うん」

「悲しくてたまんなかった…」

「うん」

「もう会わないって自分で決めたのに…会っちゃいけないと思ってみのりさんにひどい事言ったのに…」

「うん」

「でも…」

「うん…」

「ずっと会いたくて会いたくて…」

「うん…」

はあ、っと。

尊が息吐いた。

「みのりさんに会いたかった」

抱き締めた手離して。

またほっぺた触る。

ばかたける。

泣くくらいなら最初から変な事考えんなよ。

そう思うあたしの涙も。

止まんない。

「みのりさん…」

尊があたしのほっぺたに手あてたまま。

自分の顔に近付けて。

キスした。

優しくて。

優しくて。

優しいキスで。

尊の全部。

思い出した。

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