時の宝珠~どうしても死んだ娘に会いたい~

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26 暗黒の国 スペロ4

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26 暗黒の国 スベロ4
俺とマルーンは対峙している。

俺は正眼に構え、呼吸を整える。



マルーンは、杖を前方にかざし、こちらを見つめている。



杖を上から下に振ると、黒い光の刃がいくつも重なって向かってくる。



俺は、それを最小限の動きでかわし、かわし切れないものは、刀で振り払う。



黒い光の刃は正面からだけではなく、左右上下、いろんなところから俺を襲ってくる。



「避けてるだけでは後がないぞ」

そう言いながら、マルーンは杖を戻し、スクロールを広げようとした。



攻撃が途絶えたこの間、これを逃すな。



俺は居合いだけでなく、もう一つ習ってたものがあった。



俺の爺さんは、鹿児島に住んでいた。

子どもの頃、長い休みになると、鹿児島に行き、爺さんから武術を習っていた。



薩摩示現流

「一の太刀を疑わず」

「二の太刀要らず」

木刀を立木に向かって気合と共に左右激しく斬撃する「立木打ち」

「居合」と共にはまった少年時代だった。

俺は、「キィエーイ」という掛け声と共に刀を振りかざしてマルーンに飛び込んで行く。

全ての願いをこの一撃に込めて、



その時、爺さんが俺に言っていた言葉を思い出した。



「しゅうよ、人生で困ることがあった時は、一生懸命を忘れんことじゃ。

大概の事はなんとかなる

それでもどぎゃんもならん時は、腹を括れ、命がけじゃ」



あの時は何のことか分からなかったけど、何となく今なら分かる。

今がその時か!



マルーンがスクロールを使用する前に、俺の一撃は届く。

マルーンは持っていた杖で受けようとしたが、俺の刀は金色に輝き、杖ごとマルーンの身体を切り裂いて行く。



マルーンは俺の刀が触れた部分から金色の光が溢れ出し、徐々にその姿が消えて行く。

最後に顔が消える時、マルーンはふっと微笑んだ気がした。



マルーンが完全に消滅すると、俺は元の場所に戻っていた。



「シュウさん」

姫が俺に声をかける。



「姫さん、俺は今どうしてた?」



「その場所を動かないでずっとたたずんでました、ちょっとの間でしたけど」



「どのくらいだい?」



「ほんの2~3分位でしょうか」



「マルーンが現れたのは分かるかい?」



「いえ、私には分かりませんでしたよ」



「そうか、姫さんには見えなかったのか」

「マルーンは逝ったよ」

「今度は、家族と幸せになれるといいな」

「姫さん、向こう側に黒い門があるのが分かるかい?」



「いえ、私には何も見えませんが、シュウさんには見えるのですか?」



「ああ、見えるよ。ここから先は、俺だけ行けばいいのかな」

「姫さんは、ここで待っててくれるかな」



「分かりました。気をつけて下さいね。」



そう言う姫さんに振り返って微笑むと、俺は黒い門に向かって、ゆっくりと足を踏み出した。



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