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27 最後の対決
しおりを挟む俺は一人で黒い門をくぐった。
中は薄暗い空間で、5m先の岩の上に彼は一人腰掛けている。
そう、あれはテネブリス
最初に合った時と比べると、全然違う様子をしている。
髪は乱れ、痩せこけた頬、下げていた頭を上げ、こちらを睨みつける目は黒く淀んでおり、ずっと見ていると、奈落の底に吸い込まれそうだ。
暫くして、テネブリスはしわがれた声で俺に問いかけた。
「アマールはどこだ?」
右手に持つ黒い杖、コンフェシオが赤黒く光る。
「テネブリス・・」
「それも分からないのか?」
「アマールは、今のお前には渡せない」
「渡せば壊してしまうだろう、貴方のは、愛ではない、独占したいだけだ」
俺が淡々と話すと、
テネブリスは、
「ならば・・お前を殺して奪うだけだ」
黒く淀んだ眼を見開き、俺に向けてコンフェシオを向けてきた。
俺は、刀を正眼に構え、静かに眼を閉じた。
テネブリスがの目が赤黒く光り、持っているコンフェシオから黒い渦が出てくる。
黒い渦は俺の周りをうごめき、俺を包み込もうとしている。
「テネブリス・・最初にお前に会った俺なら、この力に屈したかもしれないが・・」
「今の俺には、力を貸してくれる仲間たちがいる」
俺は眼を開き、正眼に構えた刀を振りかぶり、振り下ろした。
すると、黒い渦は霧散した。
刀を構えなおすと、気合を入れ、テネブリスに向かって飛び込む。
一の太刀に全てをかける。
俺の刀がテネブリスに届くと、あたり一面が金色色に包まれた。
光が収まると、そこには一粒の白い宝珠があった。
「これはなんだ、白い珠・・テネブリスなのか」
「シユウさんありがとう」
振り返ると、そこにはパルチャームが佇んでいた。
パルチャームが胸の前で、手を組むと、身体が金色に輝き、一粒の白い珠が出てきた。
その珠は、前の珠の元へ行き、一緒になり、一瞬鋭く光り、思わず、俺は眼を閉じた。
光が収まり、目を開けると、直径15cmの白い宝珠があった。
「シユウさん、それが時の宝珠です」
パルチャームが俺に告げる。
「テネブリス、それにアマールはどうしたんだい?」
俺が姫さんに尋ねると、姫さんは
「テネブリスとアマールの2人の神は、祭壇と一緒に、今、私の中にいます」
「その時の宝珠を持って、シユウさんが戻りたいと思う時間を願えば、きっと戻れます」
「そうか、戻れるのか 姫さんはこれからどうするのかい」
「私は、祭壇を復活します」
「俺も付いて行こうか?」
俺が尋ねると、姫さんは顔を横に振って、
「大丈夫です、私には神様が2人付いていますから」といい、
優しく微笑んだ。
「シユウさん、時間があまりないのですよ。これ以上此処にいると、もう戻れなくなります」
「そうか、時間がないのか。すまない、俺は帰りたい、どうしても」
「いいえ、シユウさん。こちらこそ有難うございます。貴方のおかげで、この世界は救われました」
「アマールさまからの伝言です、宝珠を使って戻れた時に、この世界の記憶は無くなっているそうです」
「でも貴方の強い気持ちがあれば、きっと大丈夫です」
「さあ、もう時間がありません。」
「シユウさん、本当に有難う。私たちはあなたの事を忘れません」
俺は、姫さんに深くお辞儀をしたあと、宝珠を手に取り強く思った・・香織!
「お父さん、どうしたのボーっとして」
香織が心配そうに俺の顔をのぞいている。
「あれ、どうしたのかな、ちょっとボーっとしてたよ、ごめん、ごめん せっかくのお祝いなのにね」
「おとうさん、最近働きすぎで疲れてるんじゃないの」
「ごめん、もう大丈夫だよ」
俺は香織の為のワインを開けようとしたとき、胸の奥がチクりと痛んだ。
「香織、今日雨で車で来たけど、ワインは内に帰ってから飲もうか?」
「うん、それで良いよ」
その時、「良かった・・」という声が聞こえ多様な気がした。
おわり」
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