4 / 17
スコットと狩りと晩餐と
しおりを挟む
白髪の髪を綺麗に纏めた年配の女性、リズは屋敷の裏近くで仁王立ちをしている。
いつもながらシャキッとしたメイドの着こなしであった。
”今日こそはお嬢様を屋敷から一歩も出しませんよ。”
正にそういった形相に見える。
金髪でセミロング姿をしたご令嬢、エラは堂々と正門の前にいた。
皮ブーツにパンツスタイル、フリルの入ったドレスシャツにボレロを着こなした姿。
正門の前には門番にあまり似つかわしくないひょろっとした若者が立っている。
その門番に少女は体を横に曲げて覗くかの様に尋ねた。
「ねぇ、ドニー。
もしかしてエミリーが好きでしょ。」
ドニーと呼ばれた門番は緊張したようにシャキッと背筋を伸ばした。
「お嬢様、何故それを。」
動揺したドニーに続けて耳元で囁く様にエラは言葉を続けていく。
「だって屋敷で噂になってるよ。
二人が出会うとソワソワして様子がおかしいもん。
所で、ちょっと屋敷を出たいんだけど、どう?
エミリーと話をつけてあげる。」
ドニーは困惑しながらもキッパリ断った。
「いくらお嬢様の相談でも無理です。」
エラは動じず、ドニーを追い詰めた様に囁く。
「エミリー、実はドニーに気があるみたいよ。
私が保障してあげる。
出してくれなかったらドニーの困る事を色々考えてみるわ。」
決まり文句の次にエラはバッチリと決めたウインクまでして見せた。
この返し文句にドニーは飲み物を盛大に吹き出すかの様に激しく動揺する。
「わかりましたよ、わかりましたよ。
その変わり、何があっても知りませんよ。」
首をすくめたドニーの顔は”やれやれ”と言った酷いやけくそ感に溢れている。
門が開くとエラはしめしめとした顔をみせるのだった。
その後、エラの仲買でドニーと薬草売りのエミリーがようやくぎこちない会話を交わした先、周辺の人達のやきもきした言い知れぬ苛立ちを抱えながら恋愛と結婚に至った経緯はまた遥か先の別の話である。
こうしてドニーを手玉に取り、脱走に成功したエラは馬を飛ばして町に繰り出すのだった。
まんまと騙されて遠くに去っていくエラを見届けたメイドのリズは放心状態であった。
町についたエラは近くの近衛兵を探していた。
そして華麗かつエレガントに、そしてにこやかに挨拶を試みる。
「スコット、ごきげんよう!」
腕に筋肉のついているスコットと呼ばれた男は目が大きく飛び出た様に吹いて驚く。
「お嬢!どこをどうやって屋敷から出られたのですか!!?」
エラはスコットに経緯を話し、半ばドニーを脅した事を打ち明かす。
気が気ではないのはスコットであった。
「お嬢、今日は私に何の企みを持った御用ですか?
お嬢のイタズラで暇を貰うのは御免ですよ。」
正にスコットの顔は触らぬ神に祟りなしの形相である。
その様子を感じ取ったエラはスコットの得意な武器を聞き出す事にした。
「ところでスコット、弓の名手ってホント?」
スコットは一呼吸を置き、答える。
「町の狩猟競争で一番を取ったのは事実ですよ、名手かどうかは・・・」
獲物を捕らえたかの様にエラは続ける。
「弓の使い方を教えてくれないかな・・・」
嫌な予感しかしない・・・
スコットの脳裏には色んな最悪パターンが浮かんで来る。
「お嬢、弓の使い方なぞ練習して何をなさる気で???」
困惑したスコットには皆目見当もつかなかった。
そしてエラはスコットを煽て倒して褒めちぎった末、スコットから弓の扱い方を知りえるのだった。
まんまと騙されたのはスコットである。
エラはそのまま町の武器屋を訪ねる事にした。
武器屋の主人は坊主でいかつい風貌をしている。
あれから2か月とも経たないテントを派手にブチ壊して町を大騒ぎにした事件の張本人お出ましである。
「お嬢、木刀の次は何をご所望かい・・・」
エラもさる事ながら、武器屋の主人も戦々恐々としている。
エラは両手の人差し指を突き合わせながら聞き出しから始める。
「バズー。
弓を譲って欲しいの。
こう・・・なんというか初心者向けのとか。」
ヤキモキしたたどたどしい話をするエラだった。
そうこうしている内、バズーと呼ばれた主人は武器マニアの魂に目覚めて弓のうんちくを語り始めていく。
やはりエラのおだて様に負けた様だ。
ツケで狩猟弓を得たエラは屋敷へ戻る道の森に足を踏み入れるのだった。
スコットに教えて貰った構え方で弓を放ってみるがどうにも上手くは飛ばない。
そうこうする内、スコットの大きな声が聞こえた。
「お嬢!どこにいますか!!」
エラはスコットの声に反応する。
「大丈夫よ、心配しないで!!」
スコットは血眼になったかの様に急いでエラを探し当てる。
「お嬢、みんな心配していますぞ!!」
今までにあまり感情を出して来なかったスコットはこの日ばかりは本気で怒っていた様である。
そうしてスコットはエラから話を聞いた上で答えるのだった。
「お嬢、人に弓を向けてはなりません。これだけは絶対に守って下さい。
お嬢が本当に殺されると思った時だけしか人に向けて使ってはなりませぬ。」
それからエラはスコットに手ほどきをして貰うのだった。
スコットはこの時、こうも考えたのでした。
「この先、お嬢様が身を守る為に弓を扱えるのならばそれも悪くはないだろう。」と。
そうこうしている内、スコットは肝心な事を見落としていた。
何故かうさぎや野鳥などに矢を放って仕留めた数が多くなり持ち帰り出来ないくらいの量になっている。
「お嬢様、動物を殺めるのは食べられるだけにしてください。
森に住む動物は無限ではありませぬ。」
スコットがヤレヤレとした顔をしていると、エラは指を指して答える。
「スコットも十分に仕留めてるよ。
ほらこれ。」
エラに指摘されたスコットは目も当てられないものであった。
狩猟競争で1位を取っただけの事はある程に狩られた獲物の数。
これを再確認したスコットは”お嬢にハメられた”と今更になって気づき、頭を抱えるのであった。
こうしてスコットとエラは狩った肉を置いた場所に印の棒を立て、持ち帰り出来るだけの肉を持って町に戻る事に。
町に戻った後、残りの肉は別の町の人が引き取りをする約束となった。
「今日は狩り過ぎた。
誰か調理して欲しい、手伝ってくれ。」
そう、大きな声を出したのはスコット。
町の居酒屋や肉屋の主人などが集まり、狩猟した肉をさばかれていった。
出来た肉は保存用に塩漬けやソーセージに加工されていく。
余った肉は丸焼きやシチューなどに調理されて町中で振舞われる事になったのだった。
この日はエラを囲んでちょっとした町のお祭りとなった。
「エラ様。
久々のご馳走にありつけたよ。ありがとう!」
後にこの庶民との関係がその後のエラの人生を大きく変えうる事になろうと、この時は誰にも知る由が無かった。
この祝福が行き交った後、顔を立派に赤く染め上げた年配メイド、リズの叱り文句も続いたのであった。
「まったく!
貴方は本当にお嬢様なのですかっ!!」
いつもながらシャキッとしたメイドの着こなしであった。
”今日こそはお嬢様を屋敷から一歩も出しませんよ。”
正にそういった形相に見える。
金髪でセミロング姿をしたご令嬢、エラは堂々と正門の前にいた。
皮ブーツにパンツスタイル、フリルの入ったドレスシャツにボレロを着こなした姿。
正門の前には門番にあまり似つかわしくないひょろっとした若者が立っている。
その門番に少女は体を横に曲げて覗くかの様に尋ねた。
「ねぇ、ドニー。
もしかしてエミリーが好きでしょ。」
ドニーと呼ばれた門番は緊張したようにシャキッと背筋を伸ばした。
「お嬢様、何故それを。」
動揺したドニーに続けて耳元で囁く様にエラは言葉を続けていく。
「だって屋敷で噂になってるよ。
二人が出会うとソワソワして様子がおかしいもん。
所で、ちょっと屋敷を出たいんだけど、どう?
エミリーと話をつけてあげる。」
ドニーは困惑しながらもキッパリ断った。
「いくらお嬢様の相談でも無理です。」
エラは動じず、ドニーを追い詰めた様に囁く。
「エミリー、実はドニーに気があるみたいよ。
私が保障してあげる。
出してくれなかったらドニーの困る事を色々考えてみるわ。」
決まり文句の次にエラはバッチリと決めたウインクまでして見せた。
この返し文句にドニーは飲み物を盛大に吹き出すかの様に激しく動揺する。
「わかりましたよ、わかりましたよ。
その変わり、何があっても知りませんよ。」
首をすくめたドニーの顔は”やれやれ”と言った酷いやけくそ感に溢れている。
門が開くとエラはしめしめとした顔をみせるのだった。
その後、エラの仲買でドニーと薬草売りのエミリーがようやくぎこちない会話を交わした先、周辺の人達のやきもきした言い知れぬ苛立ちを抱えながら恋愛と結婚に至った経緯はまた遥か先の別の話である。
こうしてドニーを手玉に取り、脱走に成功したエラは馬を飛ばして町に繰り出すのだった。
まんまと騙されて遠くに去っていくエラを見届けたメイドのリズは放心状態であった。
町についたエラは近くの近衛兵を探していた。
そして華麗かつエレガントに、そしてにこやかに挨拶を試みる。
「スコット、ごきげんよう!」
腕に筋肉のついているスコットと呼ばれた男は目が大きく飛び出た様に吹いて驚く。
「お嬢!どこをどうやって屋敷から出られたのですか!!?」
エラはスコットに経緯を話し、半ばドニーを脅した事を打ち明かす。
気が気ではないのはスコットであった。
「お嬢、今日は私に何の企みを持った御用ですか?
お嬢のイタズラで暇を貰うのは御免ですよ。」
正にスコットの顔は触らぬ神に祟りなしの形相である。
その様子を感じ取ったエラはスコットの得意な武器を聞き出す事にした。
「ところでスコット、弓の名手ってホント?」
スコットは一呼吸を置き、答える。
「町の狩猟競争で一番を取ったのは事実ですよ、名手かどうかは・・・」
獲物を捕らえたかの様にエラは続ける。
「弓の使い方を教えてくれないかな・・・」
嫌な予感しかしない・・・
スコットの脳裏には色んな最悪パターンが浮かんで来る。
「お嬢、弓の使い方なぞ練習して何をなさる気で???」
困惑したスコットには皆目見当もつかなかった。
そしてエラはスコットを煽て倒して褒めちぎった末、スコットから弓の扱い方を知りえるのだった。
まんまと騙されたのはスコットである。
エラはそのまま町の武器屋を訪ねる事にした。
武器屋の主人は坊主でいかつい風貌をしている。
あれから2か月とも経たないテントを派手にブチ壊して町を大騒ぎにした事件の張本人お出ましである。
「お嬢、木刀の次は何をご所望かい・・・」
エラもさる事ながら、武器屋の主人も戦々恐々としている。
エラは両手の人差し指を突き合わせながら聞き出しから始める。
「バズー。
弓を譲って欲しいの。
こう・・・なんというか初心者向けのとか。」
ヤキモキしたたどたどしい話をするエラだった。
そうこうしている内、バズーと呼ばれた主人は武器マニアの魂に目覚めて弓のうんちくを語り始めていく。
やはりエラのおだて様に負けた様だ。
ツケで狩猟弓を得たエラは屋敷へ戻る道の森に足を踏み入れるのだった。
スコットに教えて貰った構え方で弓を放ってみるがどうにも上手くは飛ばない。
そうこうする内、スコットの大きな声が聞こえた。
「お嬢!どこにいますか!!」
エラはスコットの声に反応する。
「大丈夫よ、心配しないで!!」
スコットは血眼になったかの様に急いでエラを探し当てる。
「お嬢、みんな心配していますぞ!!」
今までにあまり感情を出して来なかったスコットはこの日ばかりは本気で怒っていた様である。
そうしてスコットはエラから話を聞いた上で答えるのだった。
「お嬢、人に弓を向けてはなりません。これだけは絶対に守って下さい。
お嬢が本当に殺されると思った時だけしか人に向けて使ってはなりませぬ。」
それからエラはスコットに手ほどきをして貰うのだった。
スコットはこの時、こうも考えたのでした。
「この先、お嬢様が身を守る為に弓を扱えるのならばそれも悪くはないだろう。」と。
そうこうしている内、スコットは肝心な事を見落としていた。
何故かうさぎや野鳥などに矢を放って仕留めた数が多くなり持ち帰り出来ないくらいの量になっている。
「お嬢様、動物を殺めるのは食べられるだけにしてください。
森に住む動物は無限ではありませぬ。」
スコットがヤレヤレとした顔をしていると、エラは指を指して答える。
「スコットも十分に仕留めてるよ。
ほらこれ。」
エラに指摘されたスコットは目も当てられないものであった。
狩猟競争で1位を取っただけの事はある程に狩られた獲物の数。
これを再確認したスコットは”お嬢にハメられた”と今更になって気づき、頭を抱えるのであった。
こうしてスコットとエラは狩った肉を置いた場所に印の棒を立て、持ち帰り出来るだけの肉を持って町に戻る事に。
町に戻った後、残りの肉は別の町の人が引き取りをする約束となった。
「今日は狩り過ぎた。
誰か調理して欲しい、手伝ってくれ。」
そう、大きな声を出したのはスコット。
町の居酒屋や肉屋の主人などが集まり、狩猟した肉をさばかれていった。
出来た肉は保存用に塩漬けやソーセージに加工されていく。
余った肉は丸焼きやシチューなどに調理されて町中で振舞われる事になったのだった。
この日はエラを囲んでちょっとした町のお祭りとなった。
「エラ様。
久々のご馳走にありつけたよ。ありがとう!」
後にこの庶民との関係がその後のエラの人生を大きく変えうる事になろうと、この時は誰にも知る由が無かった。
この祝福が行き交った後、顔を立派に赤く染め上げた年配メイド、リズの叱り文句も続いたのであった。
「まったく!
貴方は本当にお嬢様なのですかっ!!」
0
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
亡き姉を演じ初恋の人の妻となった私は、その日、“私”を捨てた
榛乃
恋愛
伯爵家の令嬢・リシェルは、侯爵家のアルベルトに密かに想いを寄せていた。
けれど彼が選んだのはリシェルではなく、双子の姉・オリヴィアだった。
二人は夫婦となり、誰もが羨むような幸福な日々を過ごしていたが――それは五年ももたず、儚く終わりを迎えてしまう。
オリヴィアが心臓の病でこの世を去ったのだ。
その日を堺にアルベルトの心は壊れ、最愛の妻の幻を追い続けるようになる。
そんな彼を守るために。
そして侯爵家の未来と、両親の願いのために。
リシェルは自分を捨て、“姉のふり”をして生きる道を選ぶ。
けれど、どれほど傍にいても、どれほど尽くしても、彼の瞳に映るのはいつだって“オリヴィア”だった。
その現実が、彼女の心を静かに蝕んでゆく。
遂に限界を越えたリシェルは、自ら命を絶つことに決める。
短剣を手に、過去を振り返るリシェル。
そしていよいよ切っ先を突き刺そうとした、その瞬間――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる