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魔姫の章

99.続・試練

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「えい!やっ!とおっ!」


 色欲の神の試練の遺跡。その扉の前で何やら声を上げながら扉の宝石に手をかざしている魔族の少女ミミリ。
 そんなミミリを、同じく魔族の少女エルマーが呆れ顔で見ている。


「さっきから何してるんですかミミリ」
「何って、扉を開けようとしてるんだよぉ!エルマーちゃんも手伝って手伝って!」


 どうやら開けようとしていたらしいが、とてもそんな風には見えない。と言うより、この扉は開けて入るのではなく、吸い込まれる様に入るのは先ほど見た筈ではないか。


「ミミリも見てたでしょう。この扉は開けるのではなく吸い込まれるものです」
「じゃあさ、頑張って一緒に吸い込まれよ!?」


 頑張って吸い込まれる。改めてそう聞くと、何故だか凄く嫌な感じだ。どうも「吸い込まれる」という表現は無駄に恐怖心を煽って来る。


「さっき散々試したでしょ。この扉はおそらく男女が一緒に触らないと駄目なんです。だからわたし達にはどうにも出来ません」
「む~、今頃リティアちゃんとアルト君が試練受けてるのに待ってるだけかーっ。リティアちゃん大丈夫かな?」
「男女で受ける試練で、名前は色欲…………正直あまりいい予感はしませんね」


 ふぅっと溜め息をつくエルマー。ミミリが首を傾げてエルマーを見る。


「それってエッチな試練って事?」
「ゴ、ゴホン!まあハッキリと言うとそうですけど………ミミリ貴女、意外と耳年増ですね………」
「ふふーんまあね!リティアちゃんはエッチな事からっきしだけど、わたくしミミリはこれでも結構ーーーー」


 ミミリの発言を受け、エルマーが驚愕の表情を浮かべる。いや、驚愕と言うよりは明らかに狼狽している。


「ミ、ミミリ貴女………まさかもう誰かと経験を…………」
「え?あははは無い無い!流石にそれは無いよエルマーちゃん!ってか、知ってる癖に~」


 ホッと胸を撫で下ろすエルマー。何故か頬が少し赤い。


「エルマーちゃん?ほっぺ赤いよ?」
「な、何でもありませんよ!ほら、ミミリは剣の手入れでもしてなさい!」
「え?え?何で急に…………」
「い・い・か・ら!」
「ひぃ~っ!は、はひぃ~~ッ!!」


 何とか話を逸らす事に成功し、再びホッと胸を撫で下ろすエルマー。そんなエルマーは、自分達では入れない扉の向こう側に思いを馳せる。どうか、リティアが無事に帰って来ますように……………と。



■■■



 今まさに目の前で、無垢なリティアが見た事の無いその行為が繰り広げられていた。
 青い髪の青年が、赤い髪の少女の上に乗って激しく腰を動かしている。その度に赤い髪の少女は大きな嬌声を上げ、悶絶した表情は何処か気持ち良さそうにも見えた。


「はぁはぁ………はぁはぁ………」


 心臓がバクバクと激しく動く。これが、これが後世に子を残す為に愛し合った男女が行う最終的な行為。
 それは淫らに乱れていて、想像すらしていなかったリティアの心に深く刻まれていく。と同時に、身体の感覚も無くなって立っているのも辛いのに、やはり身体はピクリとも動かない。強制的にこの光景を見せられる。


「なるほど、これは君の幼馴染の情事なのだね。まだまだ子供だと思っていた幼馴染達はとっくに大人の階段を登り始めていた訳だ。そして、そんな幼馴染を見ながら君がしていたのはーーーー」


 再びパチンッと指を鳴らすフォーゼリア。すると場面が変わり、アルトが映し出された。そのアルトはーーーーー


「はぁはぁ…………ぁ…………ぇ…………?」


 膨張した自分の陰茎ペニスを握り、その手を上下に動かしていた。
 

「ぇ………ぇ…………?」
「フフフ、これはね、自分で自分の生殖器を鎮めているんだよ。手で擦る事によって刺激を与えて、自分の力だけで射精しようとね」


 今までで一番顔を真っ赤に染めるリティア。いや、顔だけではなく、全身が真っ赤に染まっていた。それほど、この行為を見ている事が恥ずかしい。しかし、本能的に感じる興奮も今まで以上で、リティアの膣内では性的興奮によって更に愛液が分泌され、膣口から溢れ出る。それはもう下着だけでは抑えられず、遂にはリティアの太ももを伝い始めた。


「いや………いや……ぁ……」


 流石に気付くリティア。自分のアソコから、何か分からないが液体が溢れ出ている。下着はびしょびしょに濡れ、遂には下着から溢れ出て太ももを濡らし始めた。そしてその事実が、たまらなくリティアを不安にさせる。恐怖心が襲って来る。
 無知なリティアはそれが愛液だとは知らない。先ほどセリナやエリーゼも同じように濡らしていたが、こんなに溢れていなかったし、そもそもこの液体は一体何なのかすらまだ良く知らない。
 それなのに、こんなにも溢れさせ、自分の身体が変になってしまったのではないかと不安で押しつぶされそうになる。なるのに、目の前の行為からは目を逸らす事も出来ず、もう頭がおかしくなりそうだった。


(フフフ、随分と出来上がって来たね。これこそがボクの生み出した色欲の神の試練。極限まで刺激された性欲に抗えるかどうかの試練だよ)


 色欲の神の試練を受ける為の資格は三つ。

 一つは若い男女である事。

 一つはお互い未経験である事。

 一つは力を欲する者が魔族である事。


 アルトもリティアもまだ十五歳の若い男女で、共に性行為は未経験。そして、力を欲しているのはリティアであり、彼女は魔族である。なので、特に力など欲していないアルトも一緒に試練の場に立てたのだ。それはこの試練を作ったフォーゼリアにとっても予想外の事で、彼女の興味は一気にアルトに引かれた。


(神の予想した範疇の外から来た人族の青年アルト。君が此処に導かれたのは………の仕業だろう?)


 フォーゼリアの視線の先には、アルトが腰に挿した魔剣『黒鳳凰』。まさか巡り巡って自分の元に現れるとは、本当に予想もしていなかった事だった。


(さて、彼女の方はもう準備が整っている。あとは君だが…………)


 フォーゼリアがアルトの顔に視線を向けるとーーーー


「………………」


 アルトは何の感情も表に出さずに、かつての自分の光景を見つめていた。羞恥心も、怒りも何も無く、まるで他人事の様な目で自分の事を見つめていた。


(おや?どうやら君はまだまだ性的興奮が足りないみたいだね?)


 考えても見れば、今見せたどちらもアルトにとっては恥ずかしい記憶だ。直前まで行ったのに出来なかった事も、幼馴染の情事を盗み見しながら自慰行為に耽った事も。


(君は無垢なそちらの彼女とは違い、色々と知識も経験もあるのだったね)


 フォーゼリアはまたも指を鳴らし、今の光景を消し去る。リティアの方は色々と準備万端なようだが、アルトはまだ刺激が足りない。もっとアルトを興奮させなければ、最終的な試練には臨めないのだ。


(さて、君の人生で一番興奮した記憶は……………なるほどコレかい。君も随分と難儀だねアルト。しかし、この記憶はいい。これを見せることによって、そちらの彼女の同情も買う事が出来る。そうすれば最終試練はより一層…………)


 クックッと口端を緩めて小さく笑うフォーゼリア。その表情はとても楽しそうであり、何かを期待している表情でもあった。


「さあ、君たちに見てもらう最後の記憶はコレだ。見事に見終えたならば、最終試練へと臨もうじゃないか!」


 そしてアルトとリティアの前に映し出された記憶はーーーーー、アルトにとって地獄の様な忌まわしい記憶。
 

「え…………あの人は………さっきアルトさんと…………」


 アルトが大切な許嫁を寝取られたーーー










 ーー忌まわしき勇者邸の記憶。
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