VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

文字の大きさ
125 / 199
4ー1:風が舞い込んで

◇125 翅音が止んだら

しおりを挟む
 何とかギリギリ間に合った。
 ベルがメガビブラートに襲われていたから慌てて飛び出したけど、何とか無事に助けられた。私はホッとすると、ベルに声を掛ける。

「間に合ったよ」
「間に合った……ですか?」
「うん。なんだか嫌な予感がしたからね」

 私はベルが心配でやって来た。
 如何やらその予感は的中したみたいで、メガビブラートが好戦的だ。

「あの、アキラさん。今、私の……」
「そんなこといいよ。それより戦える? それとも逃げる?」

 ベルが何か言おうとしたから、私は口を差し止めた。
 代わりに二つの選択肢を投げ掛ける。戦うor逃げる。
 どっちも間違っていないけれど、ベルは即答する。

「……逃げませんよ。私を虚仮にしたんですから」
「そっか。それじゃあ、頑張ろっか」

 ベルは何だか苛立っていた。それが本当のベルなのだろうか?
 私には分からないけれど、戦うなら頑張る。私ができるのはそれくらいだ。

「それっ!」

 先に仕掛けたのは私。【キメラハント】で【甲蟲】を発動し、いつものように殴り掛かる。
 けれど攻撃は空振り。
 メガビブラートは悠々と躱してしまう。

「あれ?」
「やはり速いですね。では!」

 空ぶってしまった私を援護してくれるベル。
 矢を番えると、弦を引き寄せて一射。
 真っ直ぐに飛ぶ矢は空気の抵抗を失い、メガビブラートを襲った。

「チッ、外しましたか。ではこれでどうですか!」

 けれどメガビブラートはこれすら優雅に躱す。
 四枚の翅を上手く使い、空中に停滞。
 スライド移動を駆使してホバリングすると、簡単に避けられてしまった。

パシュン!

 空気が渦を巻き、風穴を生み出す。
 もちろん目では追えないし、見ることもできない。
 けれど確かにそこにあり、風が渦を巻き上げる。

「【風招き】。放て!」

 矢を放つと、風穴の中に吸い込まれる。
 私は矢が異常な軌道を走る姿に慄く。

「な、なにこれ?」

 人間技じゃない。もっと高度な、高次元の技術が披露される。
 流石にこれにはメガビブラートも驚愕。
 かと思えば、四枚の翅を巧みに操り、体を浮上させた。

「あっ、また逃げちゃう!」
「上昇気流を使いましたか」
「上昇気流?」

 確かに風が浮き上がっている気がした。
 自然と体が浮き上がりそうな程、風力は強い。
 もしかすると、もしかする。私はバカみたいな作戦を考えた。

「ベル、私を飛ばして!」
「はい?」
「いいから、私が仕留めるから」

 これは今の私にはできない。今持っている私のスキルじゃ無理。
 だからベルを頼ると、意味不明な顔をする。
 「なんだコイツ」とか言いたそうな程、眉間に皺が寄っているけど、私も本気だ。

「お願い、ベル!」

 私は必死に頼み込んだ。
 あまりにも無謀なことは百も承知。でもこれくらいしかできない。
 その意図を組んでくれたのか、溜息を付かれる。

「はぁー……分かりました。ですがくれぐれも怪我はなされないように」
「ありがとう。せーのっ」

 ベルは迷った末に私にも風を招いてくれた。
 忠告を聞きつつ、体の周りを風が覆う。
 感触として肌に伝わると、フワリ地面から足が離れた。

「うわぁ、私浮いてる!? いや、飛んでる!」
「アキラさん、この状態は長く持ちませんよ」
「分かったよ。それじゃあ……えいっ!」

 体が宙に浮かび上がり、自由自在に空を飛ぶ。
 だけど体幹が強くないと全身を持っていかれそうになる。
 それくらいの強風に、現実では絶対に真似しちゃいけないし、できないって分かった。

「なっ、風穴の中に!?」
「そうだよ、後はこの状態で……翅だけを狙って」

 私の行く先は風穴の中。メガビブラートを標的に定めた。
 風穴の頭上に行くと、もう風が残っていない。
 つまり下は丸見えで、メガビブラートの姿が簡単に見つかる。
 この状態で私は見たいもの。それは翅の位置だ。

「【キメラハント】+【灰爪】+【熊手】」

 【キメラハント】を発動。今回は【灰爪】と滅多に使わない【熊手】の出番だ。
 すると私の両手が巨大化し、分厚い皮と毛に覆われる。
 ここだけはいくら風が当たっても痛くない。完璧に風を弾いていた。

「まさか、そのようなことは」
「します!」

 ベルは私の考えを読んでくれた。
 あまりにも無謀で、バカの一つ覚え。
 それでも私は宣言する。このバカな技をやると。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「まぁ、そうなるでしょうね!」

 ベルに散々ツッコまれてしまった。
 私は複雑に絡み合う風に巻き込まれてしまう。
 例えるなら洗濯機で、私は洗濯機の中にダイブしていた。

 だから発狂が止まらない。目が回って体が痛い。
 八つ裂きにされそうな中、この中を飛ぶメガビブラートの凄さを見る。

「で、でも! えいっ」

 私はメガビブラートを見つけた。
 つい目の前を悠然と飛んでいるので、私は【熊手】を使って風を押しかえる。
 その間に鋭い灰色の爪が何をするのか。決まってる。動きを止めるんだ。

「そこだっ!」

 私は爪を尖らせ、鋭く突き出す。
 メガビブラートもこの上昇気流を上手く使っている身。
 簡単に避けれるかと思いきや、私が風を邪魔したせいで、微かにだけど動きがブレる。
 そのおかげか、私の爪が翅に届いた。ほんの微か、ほんの隙間に触れる。

「せーのっ!」

 爪で引っ掻くと、翅が一部千切れる。
 そのおかげか、メガビブラートは体勢を崩す。
 風穴の中上手く飛べなくなると、そのまま体を風穴の壁面に叩き付けた。

 ギュンギュンギュンギュンギュンギュンギュン!

 断末魔のように翅が擦れる。
 いくら振動を送ってもここは風の中。
 これ以上変なことは起きないので、メガビブラートに生き残る術はない。

「ベル、もういいよ!」
「本当にいいのですか?」
「うん、大丈夫だから。【幽体化】」

 私は即座にスキルを発動し、風穴の影響下から外に抜け出す。
 メガビブラートだけが風穴の中に取り込まれると、ベルはスキルを解く。
 すると如何だ。風穴が消え、メガビブラートは逆さまに落下する。

 パサッ!

 そのまま奇跡的に草の上に落ちた。
 衝撃を吸収すると、メガビブラートは死んでしまうが、一応形は残る。
 最後に綱渡りをしてしまった私は、なんとかなったと安堵した。

「よっと」
「アキラさん!? いつのまにそこに」
「あはは、驚いたでしょ?」

 私も地上に降りてから【幽体化】を解く。
 突然消えたかと思えば目の前に現れた私に、ベルは驚いた。
 瞬きをして本物かと疑われるが、私は本物で本人だ。

「とりあえずこれでよかったかな?」

 私が不安になってしまう。何せまだ結果が出ていない。
 経験知的には美味しくないと思うけど、私は表示された画面に視線を奪われる。


——ドロップアイテム獲得! 古代トンボの標本を獲得しました——

 一番欲しかったアイテムがドロップした。
 私は苦労が実ったと、心底喜ぶ。

「やったぁ!」

——固有スキル:【キメラハント】が新しいスキルを獲得しました——
——適合率判定の結果、スキルとの相性を確認し、固有スキル:【キメラハント】に、メガビブラート:【衝撃波】を追加しました——

 次いで私は新しいスキルまで手に入った。
 これは凄いいい結果じゃないのかな?
 私は達成感に仰がれると、いい気分だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】VRMMOでスライム100万匹倒して最強になった僕は経験値で殴るゲームやってます

鳥山正人
ファンタジー
検証が大好きな主人公、三上ハヤト。 このゲームではブロンズ称号、シルバー称号、ゴールド称号が確認されている。 それ以上の称号があるかもしれないと思い、スライムを100万匹倒したらプラチナ称号を手に入れた主人公。 その称号効果はスライム種族特効効果。 そこからは定番の経験値スライムを倒して最強への道かと思ったら・・・ このゲームは経験値を分け与える事が出来て、売買出来るゲーム。 主人公は経験値でモンスターを殴ります。 ────── 自筆です。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

処理中です...