VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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4ー2:流れ、流され、川下り

◇133 筏に乗ってみよう

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「A-スさん、何処に向かっているんですか?」

 私達はA-スさんを先頭に歩いていた。
 合流地点から少しだけ下流に向かうと、A-スさんは口にする。

「筏だよ。筏。アタシ達の船」
「「いかだ?」」

 私とフェルノは声を出す。
 ここに来て、ファンタジー味が一層強まる。
 だけど感嘆と言えば簡単に紐づく。私達はA-スさんに続くと、何か見つけたのか、A-スさんは指差す。

「アレだぜ!
「「アレ?」」

 指差す先にあったのは岸に寄せられた船。
 しかも木製で、職人が手造りした感満載だった。


「この筏ですか!?」
「そうだよ。その筏だ!」

 A-スさんに案内されて見つけたのは、そこそこ大きめの筏だった。
 しかし、瞬きをしてしまう形をしている。

「い、筏ですね。ですが……」
「少し違うわね」
「確かにー」

 何が違うって全体的に違う。
 まず先端がどんぐり型。水の抵抗を上手く受け流してくれそう。
 それと左右にヘンテコな何かが棒で繋がっている。コレはなんだろう?

「ねぇ、これはなに?」
「ん? これはよぉ」
「アウトリガーだな。カヌーやサップを安定させるための浮きだ」

 A-スさんが説明しようとするが、Nightが言葉を奪った。
 アウトリガー? 何だか聞いたこともある。
 だけど筏と言うより、カヌーやサップを安定させるものを積んでいるんだ。なかなかハイテクに仕上げている。

「おっ、知ってんのか船員」
「船員?」
「おうよ。アタシは船に乗る奴らを船員クルーって呼ぶようにしてんだ」

 ますますアトラクション感が強まった。
 ついつい言葉に出してツッコんでしまう。

「本当、何処かで聞いたようなアトラクションだよ」
「あはは、まあいいじゃんかー」
「人の認知はイメージに結び付きやすいからな」

 Nightの言っていることは間違ってない。
 人がイメージしやすいってことは、それだけ親しみやすい。
 結びつくものが近ければ近い程、関心は寄り惹くことができる。
 そんな所かな? 私はちょっとだけ頭を使った。

「それは筏じゃないんじゃないかな?」
「気にすんなよ。もうこれで行くしかないんだからさ」

 今の台詞、もの凄く向こうサイドの言い分に聞こえる。
 きっと広告をそれで作っちゃったんだ。
 今更変更ができない仕様のせいか、カヌーを筏と言い張る。

「とりあえず、乗って大丈夫かな?」

 私は不安になりながら、筏に足を掛けようとする。
 けれどちょっとだけ怖い。
 私は臆病になりそうだったけど、A-スさんに背中を押された。

「ほらほら、とっとと乗ったー」
「うわぁ!?」

 絶対にやっちゃいけないことをされた。
 私は背中を押さえ、筏に足を引っかける。
 転びそうになった瞬間、体重移動で何とか耐える。体幹、鍛えておいて良かった。

「なにするんですか、A-スさん!」

 私は踵を返してA-スさんに怒鳴り付ける。
 危うく怪我をするところだった。
 しかしA-スさんは意外そうな顔をする。もちろんA-スさんだけじゃない。
 みんな私の顔を見て、ドン引きしていた。

「あ、あれ?」
「アタシさ、押したは押したけど、すぐに引き寄せる気だったんだぜ?」
「押してるじゃないですか!」
「ちょっとしたジョークだよ」
「ジョークの粋じゃないです!?」

 これはジョークで済ませられない。
 私は本気で怒ってしまうと、A-スさんは頬を掻く。
 もちろん悪気が……あったんだろうけど、他のみんなの顔が気になる。

「それで、みんなはどうしたの?」
「いや、お前は相変らずどんな鍛錬を積んでいるんだ?」
「鍛錬って?」
「今の体幹よ。筏の上で、しかも初見で立ち上がってクルンと振り返る。いくら岸だからって、水の上なのよ? 錨もなにもないのに、そんなのできる方がおかしいわ!」

 完全にドン引きされていた。
 私は普通にやっただけなんだけど、これは普通じゃなかったのかな。
 私はモジモジしてしまうと、フェルノが次に筏に乗る。

「よっと。うおっ、結構安定するねー」
「当然だ。なんのためのアウトリガーだと思ってるんだ」
「さぁ? 安定させるためでしょー?」
「転覆防止にも繋がる。私達の命のリスクを軽減してくれるんだぞ。ありがたく思え」

 乗せられている身なんだから、ありがたいとかじゃない気がする。
 私は口が裂けても言えないので、ここは押し黙る。
 その後はNightにベルとゆっくり乗り込む。意外に安定していて、丈夫そうだ。
 それから雷斬が最後に乗り込もうとした時、A-スさんが何か手渡す。

「ほい、コレな」
「コレは? オールですね」
「「「オール!?」」」

 確かにこの世界に科学文明は無い。
 私達のギルドホームとかNightがおかしいだけ。
 これが普通だと理解し、雷斬はオールを受け取った。

「オールですか。初めて使いますね」
「おっ、そうなのか? それはなこうやって」

 A-スさんは体を使ってレクチャーしてくれた。
 雷斬は真面目にレクチャーを受け、体に染み込ませる。
 流石は剣を嗜んでいる雷斬だ。とにかく覚えが早い。

「なるほど。覚えました」
「早っ!?」
「よし。一人覚えたらなんとかなるよな。それじゃあ全員分だ!」

 A-スさんは満足すると、残ったオールを私達にも手渡す。
 全員の手元に配られると、正直レクチャーして欲しい。
 けれどそんな時間は無いのか。A-スさんはノリと流れで戦う。

「それじゃあオールを使って行ってみようか!」
「いきなりですか!?」
「おうよ。そこの船員、岸からオールを使って離れろ! 錨を上げろー」

 A-スさんに促され、雷斬は「はい」と声を出す。
 オールを使って近くの岩を蹴ると、筏がゆっくり動く。
 私達は岸から離れ、いきなり川の中央に寄る。

「うわぁ、動いちゃった。動いちゃった!」
「落ち着け、アキラ」
「落ち着けないって!」

 これで逆に落ち着いていられる方がおかしい。
 むしろ色んな意味でパニックになる。
 例えば私みたいに初めての経験でドギマギしてしまうように。

「あははあははあはは、楽しいー!」
「フェルノさん、楽しそうですね」
「うん。だって揺れてるんだよ、今にも転覆しそうなんだよー」
「ちょっと、縁起でも無いこと言わないで」

 フェルノは色んな意味で楽しんでいた。
 とにかく笑顔で、この状況を楽しんでいる。
 ワクワクが止まらないせいか、胸の騒めきが止まらない。

「はぁ。とりあえず気を付けて進むぞ」
「それじゃあ楽しんでな。ヨーソロー」
「絶対に違う気がする」

 ここは海じゃない。だけどA-スさんは海に捉える。
 そのせいか何所までも海賊っぽいレジャーにする。
 本当にアトラクションのスタッフのようで、私達は変な顔で川を下った。
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