VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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4ー2:流れ、流され、川下り

◇135 今度はコンドルですか!?

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「ねぇみんな……」
「言うな」

 私はこの状況を口にしようとした。
 筏が完全に流されているのだ。
 そのことをNightは頑なに言わせないようにする。

「でも、これってさ」
「言わなくても分かってる」

 そうだ。この状況、全員言わなくても分かってる。
 だから一々現実を突き付けられるのを嫌った。
 そのせいか、全員の言葉が閉ざされる。

 そんな状況でも、Nightは作業をしていた。
 インベントリからよく分からないたくさんのアイテムを取り出す。
 それを組み合わせると、得意の固有スキル【ライフ・オブ・メイク】が火を吹く。

「なに作ってるの、Night?」
「モーターだ。電源付きのな」
「「「はっ!?」」」

 一気に世界観がぶっ壊れた。
 私達は雷斬を除き声を上げてしまう。
 もちろんこの感情は“怒り”だ。

「最初からそれでよかったよね?」
「世界観を大事にしようと思ったんだ。だが緊急事態に瀕した今、そうも言っていられないだろ」

 私は元も子もないことを口にした。
 けれどNightは否定的で、今になってようやく作業を始める。
 きっと自重していたんだ。こんな時だけ真面目にならないでよ!

「なんだろう。Nightの口から似つかわしくない言葉がいっぱい出てる気がする」

 私は最低な言葉を吐き出したが、Nightは気にしない。
 今まで世界観を壊し続けて来た当の本人がこの調子だ。
 もう訳が分からなくて、頭を抱えてしまう。

「よし。完成したな」

 そうこうしている間に完成したらしい。
 意外に小さいのは愛嬌……というより容量オーバーだからだ。

 これで上手く行くのか逆に不安。
 私達は固唾を飲んで見守ると、Nightは筏の後方にモーターを取り付けた。
 そのままスイッチをONにすると、モーターが回転。取り付けたプロペラがグルグル回転する。

「起動したな」

 モーターは壊れてなかった。当然そこには信頼がある。
 モーターが回転すると、取り付けたプロペラも回る。
 水を一気に押し流し、小さな気泡が浮かび上がった。

「凄い。推進力が……って!」
「戻ってどうするのよ!」

 プロペラが水を掻いてくれる。
 そのおかげでドンドン前に……に行かない。
 ゆっくりとだけど、川を上り始めた。

「落ち着け。雷斬、ゆっくりオールを回転させろ」
「こうでしょうか?」
「そうだ。上手いぞ」

 雷斬に指示を出すと、流れが急な中、少しずつオールを操る。
 クルクルと向きを頑張って変えようとすると、流れに逆らってくれるプロペラのおかげか、動きがややスムーズだ。

「おっ、前が戻った!」
「あはは、これで進めるねー」
「って、オール要らないんじゃない、コレ?」

 筏が少しずつ向きを変える。
 巧みなオール捌きのおかげか、どんぐり形状が前になる。
 プロペラの推進力も加わり、オール無しでも進んでいた。

「確かにこれじゃあ、レジャーじゃないよね?」
「私が改造したからな。試乗の意味がない」

 私は気が付いてしまった。これは本来の形じゃない。
 何せNight改造してしまったから。
 本人もそれを自覚していた。これって規約違反じゃないのかな? 規約は無いけど。

「それって元も子もないんじゃ……」
「余計なことは言うな」
「ごめんなさい」

私はNightに黙らされてしまった。
 だけどこれだとミーNaさん的にはよくないと思う。
 次に体験する人が大丈夫なのかなと不安になってしまった。

「まあいっか」
「いいよいいよー。私達は楽しも―」
「そうだね。もう心配は……ん?」

 正直もうこうなったら楽しむしかない。
 私達に取り残された道を進むと、ヘンテコになったレジャーを遊んだ。

「どうしたのベル?」
「いや、なんだかまだありそうよ」
「ありそうって?」
「一悶着」

 ベルの顔色が芳しくない。
 何かあったのかな? しかも一悶着とか言ってる。
 気味が悪くて私は目を逸らす。

「一悶着ですか? 一体なにが……アレは」
「鳥だな。コンドルか?」
「「コンドル!?」」

 ベルに合わせ雷斬も視線を配った。
 すると川の間を挟み込むように広がる崖。
 そこに幾つもの鳥の影がある。Night曰くコンドルらしい。

「初めて見たよ」
「そうだな。私も実物を見るのは二回目か」
「二回目?」
「そうだ。アメリカに行った時、両親に連れられて……今はそんなことはどうでもいい」

 確かにどうでもいいけど、気なる情報だった。
 だけどNightが海外に言っても不思議じゃない。
 それくらい身近な存在だからこそ、驚きもそこまで湧かなかった。

「凄い。やっぱり大自然だ」
「当然だ。ここは普段立ち入りを制限されているリュウシン大渓谷だぞ」
「それはそうだけど、あんなモンスターもいるんだ」

 私は大自然の迫力に感化された。
 このリュウシン大渓谷はいわゆる自然保護区。
 そのせいかそのおかげか、珍しいモンスターも多数いる。
 私達がここにいられるのも特別な許可を貰ったからで、自然と興奮してしまう。

「カッコいい!」
「そうだね。大きいよね」
「私も飛びたいなー」
「お前は飛べるだろ」
「そうだっけ? あんまり飛んだ覚え無いけどー?」
「それはお前の種族スキルの使い方が甘いだけだ」

 フェルノは空に憧れていた。いや、多分カッコよかったんだ。
 そのせいかコンドルから視線が外れない。

 そんなフェルノを揶揄するのはNight。
 <ファイアドレイク>なら飛べるらしいけど、そんな所まともに見てない。
 だけど飛べたらきっと気持ちよさそうだ。

「ですが、なにか妙ですよ」
「そうよね。まるで待ち構えているみたい」
「カラスってこと?」
「バカ。そんなこと言ってないけど……そうよね?」

 ベルに叱られちゃった。確かにコンドルとカラスは違うよね。
 私は反省するけれど、ベルは何処かはにかむ。
 唇を噛むと、弓をいつでも取り出せるように準備する。

「ベル、妙に警戒していますね」
「そりゃそうでしょ? この中でまともに遠距離仕えるのは誰よ?」
「ベルだけですね」
「でしょ? だから私が警戒するのよ……そう、警戒しましょうね」

 ベルの口調と雰囲気が一気に変わる。
 冷静沈着な弓使いが誕生する。
 私達は目を見張ると、ベルはいつでも弓を使えるように、矢を番えた。

「ベル、なんだか顔が濃いわよ?」
「そうでしょうか?」
「うっ、やっぱり気持ち悪いよ」

 何だか怖いな。だってコンドルはこっちを見てる。
 明らかに獲物を見定める様子だ。
 不穏な気配を感じる中、筏はプロペラの力を借りて進んだ。
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