VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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4ー2:流れ、流され、川下り

◇141 サメじゃない?

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「ここまでくれば安心だね」
「そうだねー。後は岸に停まるだけかな~?」

 私達は無事にサメを振り切った。
 フェルノの活躍もあり、筏は誰にも留められない速度を実現。
 そのおかげでとんでもない目には遭ったけれど、こうして無事を得られた。

「安心するのはまだ早いぞ。ここは川、四方を囲まれているんだ」
「大袈裟だなー。また振り切ればいいでしょー?」
「そんな単純な話じゃない。筏にだって耐久値はあるんだ」

 確かにここは水の上。河をプカプカ浮いているだけだ。
 つまりは逃げ道は無いし、逃げ場が確保されていない。
 いざ追撃されればお終いなのは分かる。

 おまけにフェルノは呑気だった。
 だけどそれを打ち砕くように筏の方が持たない。
 ピキン! 何だか聞きたくない音を聞いたけど、きっときのせいだよね?
 私は首を横に振って聞かなかったことにする。

「この筏も持たないか」
「止めてよ、縁起でもない。そんなこと言ったらまた」
「それが一番のフラグだ」
「あっ」

 確かに自分で言っておいて気が付いた。
 口元に手を当てると、目をハッと見開く。

「ま、まあ、大丈夫だよね?」

 私は苦笑いを浮かべた。
 自分でフラグを立てて置いて回収したりしないよね?
 そんな偶然は起きたりしないと高を括った私だったけど、事件はやっぱり起きた。

 ドーン!

「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 筏が下から突き上げられた。
 ドンと激しく軋み出し、体がフワリと浮き上がる。
 一体何が起きたのかと、私達は目を見開く。

「えっ、ええっ? なにが起きたの」
「下から突き上げられたな」
「下から!? そんなバカな話ある訳ないでしょ。だってちゃんと逃げ切った筈で……」

 ベルが動揺してしまう。
 それは私も同じで、フェルノがアレだけの速度を実現した。
 私達だって酷い目に遭ったのに、追い付かれたなんて信じたくない。

「だが事実だ」
「そのようですね」
「納得してんじゃないわよ!」

 Nightと雷斬はしみじみと事実を受け入れた。
 私もベルも納得したくない。
 けれどそうこうしている間も背びれが飛び出し、筏をサメは攻撃する。

 ドーン!

「うわぁ、まただ!」
「ちょっとフェルノ、もう一回逃げきれないの!?」
「逃げきれないよー。だって、筏が持たないんでしょー?」
「その通りだ。あれ以上の速度で筏を走らせれば、簡単に真っ二つだぞ」

 こんな時に限って現実的だ。
 ベルは悔しい顔をすると、私も如何しようと考える。
 意識をクリアにし、今やるべきことはなにか。逃げること……それは簡単だ。
 だけどこのサメは何処までも追って来る。それなら逃げたって無駄だってすぐに分かった。

「こうなったら!」
「なにをする気だ、アキラ?」

 私は筏の後方に走る。
 振り落とされないように体を支えると、短剣を抜いた。
 一体何をするのか。そんなの決まってる。

「えいっ!」

 私はサメの背中が見えた瞬間、短剣を突き刺した。
 ツルンと短剣の剣先が弾かれてしまいそうになる。
 そのまま滑って落ちそうになる中、短剣を何とか突き刺すことに成功する。

 ドーン! ドーンドーンドン!!

「やった。これなら……うわぁ」
「アキラさん!?」

 サメは暴れ狂った。それもその筈でHPが削れる。
 暴走して体を筏に擦り付けると、私は効いていると喜んだ。
 その拍子に足が滑りそうになると、雷斬が腕を伸ばし、私のことを引き寄せた。

「(ストン)おっと」
「痛たたぁ。ごめんね、雷斬」
「大丈夫ですよ、アキラさん。それより無茶をしないでください」
「ごめん。でもこれで……」

 私は雷斬にもたれかかった。
 振動が衝撃として全身に伝わる。
 お互い怪我はしなかったけど、体を強くぶつけてしまった。

「そうだな。少しは時間も稼げただろ」

 Nightが私の成果を褒めてくれる。
 サメは狂ったように水の中で暴れる。
 距離を稼ぐことに成功すると、Nightは水の中にガラス製の箱を落とした。

「さて、一体正体は……はっ?」

 何処からともなく取り出した箱。
 その正体はガラス製で、水中の様子を確認できる、所謂箱メガネって奴だ。
 初めて見た私は雷斬にもたれかかったままで、何故か驚く素振りを見せるNightに訊ねた。

「なるほど。そういうことか」
「Night?」
「なにか分かったの?」

 水中の様子を始めて確認した。
 するとNightの顔色が変わる。
 口角が緩み切っていて、覇気が無くなった。

「残念なお知らせだ。アレはサメじゃない」
「……ん?」

 急にNightの口振りが軽くなった。
 全然“残念”な感じがしない。
 もっとこう漠然とした“満足”な気がする。

 こんな顔をするってことは、相当なことだ。
 しかも“サメじゃない”とか言ってる。
 そんなバカな。普通に呆れるけれど、一応繰り返す。

「えっ、もしかして、サメじゃない?」
「そうらしいな」

 急に話が百八十度変わった。
 私はポカンとしてしまい、たどたどしい口調になる。

「それじゃあ一体なんなのよ? うわぁ」

 ベルは納得ができない。
 もちろん私も同じだ。
 だけどNightは無理やり納得させることにした。

 何処からともなく双眼鏡を渡す。
 ベルは咄嗟に受け取ると、表情が歪んだ。
 まさかと思いつつ、川の中に視線を落とした。

「ここまでやったのよ? サメじゃないなんてこと……はっ?」

 ベルは納得ができなかった。
 それは声として発せられると、マヌケな声を上げる。
 もしかしなくても、サメじゃないの確定だ。

「ちょっとどういうことよ! 顔が全然違うじゃない」
「顔が違う?」
「ベル、一体なにを見たのですか?」

 顔が違うってことは、獰猛なサメの顔じゃないってことだ。
 凛々しい生き物の顔じゃない。一体どんな顔?
 雷斬も興味を抱くと、ベルの口から出た言葉は突飛だった。

「どうもこうもないわ。アレ、マグロじゃない」
「「マグロ?」」
「マグロー?」

 何を言ってるんだろう。全然話が見えない。
 私達はポケッとしてしまうと、ベルは嘘を付いていない。
 顔が正直で、Nightに呆れ顔を浮かべている。

「マグロから逃げてたの、私達?」
「そうらしいな」
「そうらしいなって。そんなのってないわよ」

 ベルはつい項垂れてしまった。
 私達は顔を互いに見合わせる。
 これは真実なのかな? まだ夢の中にいるみたいだ。

「Night、マグロって?」
「事実だ。アレはサメなんかじゃない、正体はマグロだ」
「マグロ?」

 この雰囲気、如何転んでも話が変わることは無い。
 私達を追っていた、追われていたのはサメじゃなかった。
 正体はマグロ。マグロ……か? 私はイマイチな反応になる。

 そんなのは誰だって当たり前の反応だ。
 なにせ、本当に怖かった。
 死んじゃうと錯覚するくらいには迫力があった。
 それをマグロだとは言いたくないし、言わせない。

 だけどどのみち変だよね。
 サメが川にいるのも不思議だけど、回遊魚のマグロが川にいる方が普通じゃない。
 私は理解が追い付かないけれど、Nightはやれやれな顔をしている。
 やれやれなのはこっちだよとは、流石にツッコめなかった。
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