VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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2ー2:継ぎ接ぎの始動

◇55 メタクロの森

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 スタットを出て、あれから一時間。
 全然目的地に辿り着けない。

「はぁはぁはぁはぁ……」

 Nightは息を切らしていた。
 きっとこんなに長い距離を歩くのに慣れていないんだ。

 もちろん普通なら、こんなペースで一時間も歩かない。
 なにせ、先頭を切るのは……

「ふんふふーん、ふふんふーん、ふーんふふーん」

 フェルノだった。
 しかも鼻歌まで交えている。
 腕もブンブン振っていて、もはや徒歩なのに、競歩みたいな速度だった。

「フェルノ、ちょっと速くない?」
「えー、なに言ってるのさー」
「なにって、ちょっと速いよ。Nightが完全にバテてるよ」

 私はNightのことを気遣った。
 なにせ、Nightは全身から汗を流している。
 マントもインベントリの中に放り込まれ、さっきから水を飲むことさえ億劫になっていた。

「このままじゃ熱中症になっちゃうよ!」
「お、おい、余計な、ことは、言うな……」
「でも……」
「いいから黙っていろ。ったく、どうしてこんなに日に限って、馬車が一台も使えないんだ」

 私達の目的地までは、直線距離で二十キロある。
 本当は馬車を使っていく距離らしい。
 にもかかわらず、今日みたいな日に限って、馬車が一台も無かった。
 完全に誤算で、Nightは愕然としていた。

 こんな偶然があるのだろうか?
 Nightは何かの陰謀にさえ思ってしまった。
 だけど目の前のことは変らない。そう、依頼書に書かれていた期限、おまけにミーNaさんの言葉。

「まさか、他にもこの依頼を受けていた人がいたなんてね」
「あー、クソッ。最悪だ」

 強豪相手ライバルの登場に、私達も負けられなかった。
 いや、本当は一日でも開ければ変わった筈だ。それこそ、数時間でも変わった筈。
 だけど、今日、しかも今の時間と、運の悪いタイミング。
 もはやフェルノの好奇心も止められず、私達は、徒歩で行くことになってしまった。

「まさか受けることになっちゃうなんて……」
「おまけに依頼を途中棄権する場合、違約金が発生するとは……銀行か」
「あはは、シビアっていうか、リアルだよね……」

 もはや言葉も出ない。
 だって私達は歩いている。
 今からスタットに戻るなんて現実的じゃなかった。

「このままログアウトしちゃう?」
「バカか。そんなことしても変わらないぞ。街に戻されるだけだ」
「だよね。それじゃあ……」
「Go Go L‘ets Go!」

 フェルノに腕を引かれた。
 私は慣れっこだから大丈夫だけど、Nightはもはや顔面蒼白。
 熱中症手前の状態に、私は「頑張れ」と声を掛けることも憚られた。

「Night!」
「な、なんだ?」
「もうちょっとだから。ねっ」

 私は色々迷った。
 だけど反感を買いそうで、言葉を選んだ。
 超高速で脳を回し、言葉の壁を這いつくばる。
 そんな中で出たのは、もはや言葉でもない、吐息。擬音みたいな何かが出ると、Nightは何か察してくれたようだ。

 そんな過酷な状況の中、私達は目的地に向かう。
 そう、この先には憩いの場……にもならない森が待っている。
 そう、今回の標的、メタクロベアーの待つ、メタクロの森がある。


「あっ、見えて来たよ!」

 私達はあの苦行を乗り越えた。
 視線の先、ようやく見えて来たのは、深い森。
 何処か色黒い樹木の肌と葉っぱが、モクモクと茂っていた。

「ようやくか……」
「あはは、よかったねー。やったと着いたー」

 Nightは酷くグッタリしていた。
 フェルノに最後背負われることになり、マントが直射日光を遮る。
 一階帰った方がいいレベルだけど、ここまで来たからには突入あるのみだ。

「急ごうね。他の人達よりも、先にメタクロベアーを倒さないと」
「私の努力が無駄になる」
「結局、三十分は私が背負ってたけどねー」
「「余計なことは言わない」言うな」

 今はそんな話をする場じゃない。
 流石に私も怒ると、ここまでの一時間三十分の道のりを受け入れた。

「それで、なんだけど……」
「どうしようか?」

 森の入口に辿り着いた私達。
 そこで待っていたのは、何処までも色黒の森。
 影とかそんなレベルじゃない。とにかく暗かった。

「なんだか怖いくらい暗くない?」
「メタクロの森は、普通の木々は生えていない。混雑した森らしいからな」
「「混雑?」」

 一体何が混雑しているんだろう。
 もはやそれさえ分からないけれど、一歩足を踏み入れた瞬間、私達は薄っすらとした冷気を感じ取る。これはあれだ、金属系の奴で、暑い日に机の脚を触ると、ひんやりしていて気持ちが良い奴に似ている。

「なんだか涼しいねー」
「それがこの森の特徴だ。フェルノ、軽く木の表面を叩いてみろ」
「うーん、やってみるよー。それっ、痛い!?」

 フェルノはNightに言われるがまま、近くに生えていた気を殴る。
 拳を軽く作って、コツンと叩く。
 すると拳から腕に掛けて、強い衝撃が加わった。
 表情がぎこちなくて、本気で痛がっている。

「ふぇ、フェルノ大丈夫!?」
「大丈夫大丈夫―。だけど、これなに? 硬くない、痛くない?」
「当り前だ。この森の木々は、硬すぎて伐採できないからな」

 そう言うと、Nightは短剣を取り出す。
 木の表面に刃を押し込むと、ギィギィギィと、鉄板を引っ掻く様な音が鳴った。

「ううっ、この音嫌い―」
「もしかして、メタクロの森の、“メタ”って、メタルのメタ?」
「正解だ。その証拠に……それっ」

 Nightは木の表面を剥がした。
 樹皮が剥がされ、中身が露出する。
 虫がビッシリで気持ち悪いことを想像するけれど、実際には、何も付いていないし、樹液も出て来なかった。

「うわぁ、黒い」
「本当だー。鉄板みたい」

 真っ黒で少し冷たい。
 完全に鉄板のようで、鉄板を丸く筒みたいにした木が、そこら中に生えているのと大差ない。
 そんな事実が伝わるも、「だからなに?」としか言えない私とフェルノ。
 それに対して、Nightはこの森の恐ろしさに、いち早く気が付く。

「メタクロの森。思った以上に、面倒だな」
「そうなの、Night?」
「二人は気が付かないのか? この森に住んでいる、メタクロベアー。もしもこの森の性質をそのまま引き継いでいるとすれば……いや、その顔を見て伝わった」
「「どういうこと!?」」

 Nightは面倒そうに言葉を噤む。
 途中で話止めると、私達の顔を見て呆れる。
 一体何が言いたかったのかな? 私は意識を切り替えようとするけど、なんだか嫌な予感がしたので、そこで留めてしまい、メタクロの森の恐ろしさを、後で実感した。
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