VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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2ー2:継ぎ接ぎの始動

◇56 メタクロベアーはFランクじゃない!

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 私達はメタクロの森を歩き回る。
 奥に行けば奥に行くほど、空気も冷たくて、ひんやりとしている。

 もちろんそれだけじゃない。
 真っ黒な木がたくさん並んでいて、影も濃くなっている。

 何処か恐ろしさを醸し出していると、差し込む陽射しすら、霞んでしまう。
 そんな中でも私達は警戒しながら周囲を見回す。
 一応モンスターが出てくる雰囲気は何処にもなく、虫も鳥も居ない。

 不気味なくらい静かな森だ。
 私達の声だけが、森の中を木霊する。

「あーあ、早く出て来ないかなー」
「そう焦るな。そのうち出遭う」
「根拠はー?」
「これだけ無防備かつ、柔らかい肉が歩いているんだ。肉食動物にとって、格好の餌だろ」
「あはは、それじゃあ私達が囮ってことだよね。嬉しくないな」

 気持ちの良い会話は何処にもなかった。
 むしろ悍ましい会話になっていて、私達自身が、餌となっている。
 完全な囮作戦で、いつメタクロベアーに出遭っても決しておかしくは無かった。

「そう言えば、Nightはメタクロベアー相手に、作戦はあるの?」
「ん? そうだな。クマを追い払う方法として、まずは撃退スプレーなどのような、化学薬品を使うのが一般的だろう」
「そんなの持ってないよ?」
「当り前だ。他にはクマから距離を取る。それもできなければ、より大きく見せ威圧する。音を立てたり、目を逸らさなかったり、とにかくクマよりも強いことを覚えさせる。それが今後にも役に立つ適解だな」

 Nightは一般的なクマ対策を教えてくれた。
 凄くためになるけど、実践できる気がしない。
 ましてや今回の相手は、日本に生息しているような、クマじゃない。
 攻撃的で凶暴な、メタクロベアーだった。

「えー、そんなの役に立たないよ」
「だろうな。だからこそ念入りな……」

 Nightはフェルノのボヤきにも、しっかりと対応する。
 真面目だなと思いつつ、直後、空気を震わす声がした。
 
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 突然悲鳴が聞こえて来た。
 メタクロの森を震わし、草木がガサゴソと揺れる。

「い、今のなに!?」
「悲鳴だな。向こうからか」

 突然聞こえてきた悲鳴の先。
 メタクロの森の奥の方で、そこから聞こえたと言うことは、それだけ切羽詰まっていたのだろう。
 心の底、お腹の奥から出て来た断末魔は、私達の行動を急かせる。

「みんな急ごう」

 私は誰よりも先に号令を出して走り出していた。
 その機敏な動きに目を丸めたのか、Nightは驚いてしまう。

「な、なんだ、アキラの動きは。たまに面倒な好奇心はあったが……分からない」
「あはは、アキラはいざって時は、誰よりも動ける子だからねー」
「それは一種の才能だな。とは言え、他人にあまり関わり過ぎれば、痛い目を見るぞ」
「それもアキラの良い所でしょー。あれこそ、本当に必要な正義感でしょ?」
「……そうかもな」

 Nightとフェルノは何か話し込んでいた。
 もしかして私の悪口かな?
 ムッとしつつも、今は何も言いだせない。
 とにかく助けに行かないと。何となく浮かび上がった、正義感が突き動かして、私は誰よりも先に走り抜けた。


「こっちから聞こえた筈なんだけど、あれ?」

 とにかく私は走った。
 けれど悲鳴が聞こえたのは一瞬だけ。
 もう手遅れかもしれない上に、完全に道を迷ってしまった。

「どうしよう」
「落ち着け、アキラ」

 そこにNightとフェルノが声を駆ける。
 無事に追い付いたようで、Nightは息を切らしながら、アキラの腕を掴む。

「悲鳴の方向は間違っていない」
「それじゃあ!」
「とは言え、助かったとは言えないな。恐らく、手遅れだろう」
「えっ、手遅れ!?」

 根拠は無い。けれど、Nightの言葉は常に的を射る。
 青ざめる私に、残念なことを言った。
 そう、濁すことも無くハッキリとだ。

「いいか、メタクロベアーで無いとして、まず間違いなく無傷では済まない。なんの対策もしていなければ尚のことだ」
「でも、対策していたら?」
「それならここまでの道中で、なにかしらのアクションがある筈だ。けれどなにも無かっただろ。恐らく、山や森に対する知識が無いんだろうな」

 知識は武器だ。Nightはそう言いたい。
 私もフェルノもそのおかげで助けられてきた。
 まさに、Nightにしかできない戦い方だけど、ほんの少しも知識が無ければ、メタクロベアー相手に逃げ切るのは、まず絶望的だった。

「でもさー、まだ可能性はあるんじゃない?」
「もちろん残されている。とは言え、ここから私達ができることは……ん?」
「「どうしたの、Night?」」

 急にNightは口をつぐむ。
 何かあるのか、視線が一点を見つめる。
 
 私とフェルノも視線を追う。
 すると薮の奥、黒ずんだ木々が群生していた。

「なーんだ、ただの木だ」
「お前にはそう見えるのか?」
「えー、なにか意味あり気―? よいしょっと、別に変な所は無さそう……うわぁ!?」

 フェルノは【吸炎竜化】を部分的に解放。
 腕だけ竜の姿に変えると、柴刈りでもするみたいに、薮を掻き分けた。

 誰よりも先に木に近付く。
 樹皮が黒くなっていて、相変わらず硬い。
 けれどフェルノは大したことない様子だったけれど、すぐに態度を一変させた。

「どうしたの、フェルノ!? うわぁ」

 私もフェルノに続いた。
 一体何があるんだろう? キョロキョロ見回すと、樹皮の一部が剥がれている。
 否、“削り取られている”んだ。

「ど、どういうこと。しかもこの跡、爪みたい」
「そうだな。爪痕だ」
「えー、でもこの木、すっごく硬いよ? それにこんなハッキリとした爪痕、一体どんなモンスターの仕業……って、まさか!?」

 フェルノは気が付いてしまった。
 もちろん、私も気が付いた。
 こんな凶暴な爪痕を残すなんて真似、一つしか答えが出ない。

「そうだな、これが私達の狙いの奴だ」
「「メタクロベアー、怖いね」ヤバッ」

 もはやこんなのFランクのレベルじゃない。
 私は、接敵したら切り裂かれるんじゃないかと思った。
 だけどそんな感情が呼び寄せたのか、何処かで騒めいていた。
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