上 下
6 / 478

◇6 VSスライム

しおりを挟む
 アキラは近くの森にやって来た。
 この森にやって来たのはただ近かったから。
 何の気なしに、メニューを表示し、アイコンの地図マークをタッチすると、マップが簡単に表示された。

「おっ! ここよさそう」

 アキラはその足で迷わずこの森に入った。
 森の中はそこまで暗くなく、明るい方。
 ちなみになんでやって来たのか。そんなの数学の式よりも簡単で、

「よーし、モンスターを倒すぞー!」

 レベルアップを目指してやって来た。
 このゲーム、レベル上げは重要そう。
 調べてないけど、多分この手のゲームには必要そう。

 でもさ、

「モンスターとか、私に倒せるかな?」

 正直そこが一番心配だった。
 だってさ、コントローラーカチカチで、テレビやパソコンの画面を見ながらするゲームじゃないんだよ。
 実際に生身じゃないにしろ、武器を使ってモンスターを倒すんだ。
 多分感触とかあるし、ちょっとは演出で血も出るかも。
 怖いな。
 アキラはビビりじゃないけど、怯えていた。

「ううん。やるしかないよね」

 ここはすぐに切り替えていこう。
 別に問題ないや。だってアキラは切り替えが早いタイプ。
 考え込みすぎることはあっても、何事も直観を信じる。

「せっかくゲームをやるんだもん。楽しまなくちゃね」

 アキラは楽しむことにした。
 そこでインベントリを開き、中から武器を取り出す。
 唯一今持っている武器。その名も、

「はい、普通の剣。普通のショートソード」

 しかし意外だよ。
 だって初めて握ったのに、こんなに手に馴染むなんてさ。

「でもこれがゲームだよね」

 だけど切り替えの速さで、無理矢理落とし込む。
 正直ここまで触れたことないのに、手に馴染んだ。
 それもそれで怖いけど、一番の不思議はその重さだ。
 だってちょっとだけ重たい。本当に質量があった。
 しかも刃こぼれしそうで怖い。

「せめて最初は危なくないモンスターから……ん?」

 草むらが揺れた。
 ふと視線を落として、武器を構えると、そこから飛び出してきたのは、小さくて青い物体。
 生きているのか、ゼリー質だった。
 プルルンと、揺れる姿がまさにゼリー、いやスライム? みたいだった。

「これってスライム? もしかしてモンスターだよね?」

 確実にモンスター。
 だれがどんな角度から見ようが、これはモンスター。ここでは魔物じゃなくて、モンスター。
 そう、あの超定番、最弱モンスター筆頭格。
 いろんな色で使いまわされる、あの誰もが知るモンスター界のアイドルだった。
 でもまさか、

「まさか、最初に出会うのがスライムって。普通だよねー」

 アキラはふにゃけた。
 だってこんな当たり前に出て来るなんて。
 しかしスライムの方は、完全に敵対していて、アキラを見るや否や、襲い掛かったきた。

 プルンっ!——

「うわぁ!」

 するとお腹を目掛けて体当たり。
 だけど全く痛くない。
 それどころかアキラはそのままスライムを捕まえた。

「えーっと、これからどうすればいいのかな。えーっと、えーっと」

 スライムはその間も、もごもご動き回る。
 気持ちいいような。くすぐったいような。何とも言えない感覚。
 だけど私はそのまま抱きしめていると、

キュー!——

 まさかの事だった。
 突然スライムの声が聞こえなくなる。

 すると、アキラの腕の中で、光の粒子が飛び散る。
 目をぱちぱち、瞬きを繰り返すがそこにスライムの姿はない。
 まさか、こんなことになるなんて、言葉も出ない。

「ま、待ってよ。初戦がそれ! 最初がそんなのって、ないよ!」

 アキラは慌てふためく。
 だけどゲーム的にありなのか、軽快な音が鳴った。
 それからステータスが表示され、レベルが2になって、さらにパラメータも上がる。

「うわぁー、なんか複雑……ん?」

 だけど固まった。
 気になることが書いてある。
 ステータスの下、そこには固有スキルの項目。しかも、不穏なことが書いてあった。

 固有スキル:【キメラハント】
『新しいスキルを略奪しました。スライム:【半液状化】』

 ヤバい。頭がパンクしそう。
 それどころか、処理が追い付かない。
 まあでも、アキラじゃなくても仕方ない。そもそもこの【キメラハント】、他の誰も#_使えない奇怪なスキル_・__#なんだから。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

悪の組織の一番の嫌われ者のパートだ

青春 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:17

病弱な私はVRMMOの世界で生きていく。

SF / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:528

ホロボロイド

SF / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

Free Emblem On-line

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:1,671

不死王はスローライフを希望します

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:45,877pt お気に入り:17,484

異世界バーテンダー。冒険者が副業で、バーテンダーが本業ですので、お間違いなく。

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:6,740pt お気に入り:573

1人の男と魔女3人

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

飯がうまそうなミステリ

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

ほろ甘さに恋する気持ちをのせて――

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:17

処理中です...