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◇11 意外に楽しいって話

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 ゲームをログアウトした私は、ソファーの上で横になっていたことすら忘れて、転げ落ちてしまった。

 ゴトン!

「いったぁ」

 左肩から、盛大にずり落ちた。
 痛い。普通に痛い。
 もしかして、脳がバグってるせい? 
 まさかね。

「それにしても楽しかったなー。また明日も、ログインしよ」

 本当にやってみて楽しかった。
 だけど結構難しいって言うか、わからないこともある。
 それが、明輝が手にしたスキル、【キメラハント】。

「あのスキルって、何なんだろ。如何して、あんなスキルが私に……」

 明輝は不思議でたまらない。
 包丁で、ニンジンを切りながらその手際と思考は全く違う。

「それにもう一つのスキル。【ユニゾンハート】だっけ? あれはどんなスキルなんだろ」

 ニンジンとジャガイモを、鍋の中に落とした。
 軽く炒めながら、今度はタマネギを溶かす。
 ホロホロにした豚肉を同時に炒めて、灰汁を出し、それからカレー粉を入れる。
 結局、カレーを作った。
 冷蔵庫に入れておけばかなりの間、食べられる。

「でも一番は……」

 けれどそんなもの、結局、後からついてきたおまけ。
 本当に気になるのは、

「誰がこのゲームを送ってくれたんだろ」

 やっぱり、そこだった。

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 次の日。

 市立御鷹高校は新設された高校だった。
 とは言っても、昔は木造の校舎で今でもそれを再利用している、かなり長閑な高校だった。
 進学率はそこそこで、一応七割方進学している。
 とは言っても、生徒の自由性に任せるシステムで、変な部活は多いし、変わった人が多い。
 私は家から近いから通っているけど、都内から通っている人もいるみたいで、大変だなと思う。

 そんな高校で、明輝と烈火は一緒にご飯を食べていた。
 何故か、開放されている屋上には二人しかおらず、こんな時代になって、屋上に来てご飯を食べるなんて青春は流石になかった。

「ってことがあったんだけど……」

 明輝はそう話した。
 すると、烈火は震える手で、興奮していた。

「なにそれ! すっごい、いい話だよ!」
「そ、そうかな? だって、相手は分からないんだよ」
「いやいや、送り主のメーカー、すっごく有名だよ」
「それは調べたんだけどね。でも、おかしいよね?」
「うーん。よし、明輝は考えすぎだよ。楽しかったんでしょ?」
「う、うん。楽しかったんだけど……でもね」
「じゃあさ、それでいいと思うよ? もっと単純思考になってさ。純粋に遊べるのが、いいところでしょ」

 烈火の口調は高速で、明輝はついていくのがやっと。
 だけど、楽しかったのは事実で、ここはその考え方に、乗ってみることにした。

「うん。やっぱり楽しかった」
「そっか。じゃあさ、今度一緒にやろうよ。新人戦が、四月の終わりにあるからさ」
「わかった。じゃあその時までに、私、めちゃくちゃ強くなってるからね」
「ドンとこい。それまでに、パーティーとか組める人が見つかったらいいね」
「パーティー?」

 そう言えば考えてなかった。
 明輝は首を傾げるが、チャイムが鳴ってしまったから、後回しにすることにした。
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