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◇75 雷を斬る音
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こんなことがあるの? アキラはふと考えていた。頭の中は意外にすっきりしていて、とてもじゃないが、こんな呼吸の乱れからは考えられないぐらい冷静だった。
どうしてこんなことに。そもそもトカゲの戦車ってなに。確か名前はトカゲ戦車だったかな。適当すぎるよね! 絶対運営さん、何も考えてないよ! と言いたくなった。
けれどアキラはそんなことすら言う気になれない。何せ、この状況だ。灼熱の中でこんな……
「なんで、なんでまだ走っているの!」
アキラは叫んだ。喉が枯れそうになった。全身から水分が抜けていくのを感じた。
今にも倒れてしまいそう。だけど足を止めてはいけない。
真後ろから、ゴォーゴォー! とエンジンをふかすような音がする。
「止まるなよアキラ。止まったら撃たれるぞ」
「撃たれるの! ただでさえ、速いのに」
「止まったらだ。そもそも止まることは鼻っから考えるな」
「いや、それは無理だよ」
アキラはとても冷静にツッコみを入れた。
そもそもの話し、Nightにだけは言われたくない。何せNightは今、フェルノにおんぶしてもらっているからだ。
「フェルノ大丈夫。重くない?」
「うん。全然軽いよ」
「私は体重が軽いからな」
「それは別に誇ることでもないと思うよ」
「あはは。可哀そうだから、言わないであげようよー」
「お前が一番可哀そうなことを言うな」
軽快なノリツッコみを交えているだけ余裕がまだあると言える。
けれど、トカゲ戦車はしつこく追って来る。キャタピラが砂の上を走り、ガタガタと波を打っていた。トカゲの動体の横には、大砲の砲台が二つもついていて、いつ撃ってくるかわからない。怖い。怖すぎるよと、アキラは内心震えていた。
「どこかで曲がる?」
「曲がって振り切れる自信は?」
「……ない」
「ならば諦めろ。心配ない、ここは砂漠だ」
「砂漠だけど、それがどうかしたの?」
「つまり流砂がある。そこにさえはまれば、流石のトカゲ戦車も追ってはこれない」
そんなに都合よく行くとは思えない。そもそも流砂がそこら中にあるなら、こんなことにはなっていないはずだ。
唇を尖らせるアキラに、Nightは目にものを見せようとした。
【ライフ・オブ・メイク】で何かを生成する。赤くて、細長い筒に導火線が付いていた。
「フェルノ、火を頼む」
「いいよ。って、ダイナマイト!」
フェルノが作ったのはダイナマイトだった。もう世界観が崩壊している。
幻想的な世界だったはずが、急にスチームパンクな世界観に生まれ変わったのは、いつからだろうか。はたまたこれは私の周りだけのミニマムな話なのかと、脳裏がグルグルと画策される。しかしそこはアキラだ。意識の切り替えで、素直に受け入れた。
「これを投げる」
「投げちゃった……でもあれ? 効いてないよ」
「そうみたいだな」
フェルノが投げたダイナマイトは不発ではなかった。
しかしトカゲ戦車を停めることはできなかった全く気にせず、ぐんぐんスピードを上げる。このままじゃ追いつかれる。その前に撃たれると思った。
その時だった……
「来てください、【雷鳴】」
バチッ! と火花が上がった。
アキラたちはその音に気が付き自然と意識してしまう。見れば空に黄色い閃光が上がっていた。あれは何なんだ。三人は足を止めていた。
すると、トカゲ戦車が砲撃をしようとした。止まった獲物など取るに足らないというのか。
けれどトカゲ戦車の砲台は、瞬く間に破壊され、本体自体のHPが何故かなくなってしまった。
「「「えっ!?」」」
三人は固まってしまった。
しかし目線が釘付けになったままだった。その目に映ったのは、突然トカゲ戦車が崩れる光景。砂漠の中でガラクタになった瞬間。
そこに立つ何者かの影。手には刀のようなものを持ち、結ったポニーテールが風に誘われた。
どうしてこんなことに。そもそもトカゲの戦車ってなに。確か名前はトカゲ戦車だったかな。適当すぎるよね! 絶対運営さん、何も考えてないよ! と言いたくなった。
けれどアキラはそんなことすら言う気になれない。何せ、この状況だ。灼熱の中でこんな……
「なんで、なんでまだ走っているの!」
アキラは叫んだ。喉が枯れそうになった。全身から水分が抜けていくのを感じた。
今にも倒れてしまいそう。だけど足を止めてはいけない。
真後ろから、ゴォーゴォー! とエンジンをふかすような音がする。
「止まるなよアキラ。止まったら撃たれるぞ」
「撃たれるの! ただでさえ、速いのに」
「止まったらだ。そもそも止まることは鼻っから考えるな」
「いや、それは無理だよ」
アキラはとても冷静にツッコみを入れた。
そもそもの話し、Nightにだけは言われたくない。何せNightは今、フェルノにおんぶしてもらっているからだ。
「フェルノ大丈夫。重くない?」
「うん。全然軽いよ」
「私は体重が軽いからな」
「それは別に誇ることでもないと思うよ」
「あはは。可哀そうだから、言わないであげようよー」
「お前が一番可哀そうなことを言うな」
軽快なノリツッコみを交えているだけ余裕がまだあると言える。
けれど、トカゲ戦車はしつこく追って来る。キャタピラが砂の上を走り、ガタガタと波を打っていた。トカゲの動体の横には、大砲の砲台が二つもついていて、いつ撃ってくるかわからない。怖い。怖すぎるよと、アキラは内心震えていた。
「どこかで曲がる?」
「曲がって振り切れる自信は?」
「……ない」
「ならば諦めろ。心配ない、ここは砂漠だ」
「砂漠だけど、それがどうかしたの?」
「つまり流砂がある。そこにさえはまれば、流石のトカゲ戦車も追ってはこれない」
そんなに都合よく行くとは思えない。そもそも流砂がそこら中にあるなら、こんなことにはなっていないはずだ。
唇を尖らせるアキラに、Nightは目にものを見せようとした。
【ライフ・オブ・メイク】で何かを生成する。赤くて、細長い筒に導火線が付いていた。
「フェルノ、火を頼む」
「いいよ。って、ダイナマイト!」
フェルノが作ったのはダイナマイトだった。もう世界観が崩壊している。
幻想的な世界だったはずが、急にスチームパンクな世界観に生まれ変わったのは、いつからだろうか。はたまたこれは私の周りだけのミニマムな話なのかと、脳裏がグルグルと画策される。しかしそこはアキラだ。意識の切り替えで、素直に受け入れた。
「これを投げる」
「投げちゃった……でもあれ? 効いてないよ」
「そうみたいだな」
フェルノが投げたダイナマイトは不発ではなかった。
しかしトカゲ戦車を停めることはできなかった全く気にせず、ぐんぐんスピードを上げる。このままじゃ追いつかれる。その前に撃たれると思った。
その時だった……
「来てください、【雷鳴】」
バチッ! と火花が上がった。
アキラたちはその音に気が付き自然と意識してしまう。見れば空に黄色い閃光が上がっていた。あれは何なんだ。三人は足を止めていた。
すると、トカゲ戦車が砲撃をしようとした。止まった獲物など取るに足らないというのか。
けれどトカゲ戦車の砲台は、瞬く間に破壊され、本体自体のHPが何故かなくなってしまった。
「「「えっ!?」」」
三人は固まってしまった。
しかし目線が釘付けになったままだった。その目に映ったのは、突然トカゲ戦車が崩れる光景。砂漠の中でガラクタになった瞬間。
そこに立つ何者かの影。手には刀のようなものを持ち、結ったポニーテールが風に誘われた。
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