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◇123 篠月のイベント
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5人揃ってギルドホームでまったりとしていた。
アキラはテーブルの上に歯車を置き、指先でコロコロと回している。
うつ伏せのまま暇を持て余していた。
「まさかあれから1週間も経ったのに、何も情報がないなんてね」
「そうだよねー。5日ぶりにログインしたベルが驚いているんだもん。毎日ログインしてたNightは知っているんでしょ?」
「もちろんだ。何も反応がない」
文庫本片手に淡々と話すNight。
オッドアイの赤と青の瞳が寂しそうに瞬く。
「あー暇だ! 暇すぎるよ。ねえ何かないの!」
「何かって?」
「新しいダンジョンに行くとかギルド会館で依頼を受けるとか。それよか、Night!」
「何だ」
「他に町ってないの? スタットだけってことないでしょ?」
「もちろんだ。この世界にはいくつもの大陸いくつもの海が広がり、天空にも町があるとされている。私たちが動かないのは、この町で事足りるからだ」
確かにとアキラは納得した。
しかしフェルノの言うことも一理ある。ずっとこの町を拠点にし続けていても、近くのダンジョンにしか足が運べない。マンネリ化して飽きてしまうのがオチだ。
「わかった。11月になったら行くぞ」
「どうして11月なの?」
「寒くなるからな。雷斬とベルなら想像がつくだろ」
話を雷斬とベルに振った。
天井を見上げて少し考えると、共通して何か思いついたらしい。
きっとそれだと互いに納得し合うが、アキラとフェルノは置いてけぼりだった。
「モミジヤのことですね。モチーフは日本の京都。風情の良い瓦屋根の町並みに、朱鳥居。それから何と言っても……」
「温泉よね。日本人には馴染みが深いはずよ!」
2人はポンと手を叩いた。どうやら納得したらしい。
確かに寒い時期に温泉はよく紹介系のバラエティ番組でやっている。
何処に需要があるのかはわからないが、流し目で観てしまう。
やっぱり温泉は入浴した方が気持ちがいい。
「あはは、温泉って日本人好きそうだよね」
「アキラは好きじゃないのか?」
「ううん好きだよ。でもゲームの中の温泉ってどんな感じなのかな?」
「さあな」
Nightは冷たかった。水風呂のように冷たかった。
けれどまだ2ヶ月も先だ。
その前にやっておくことがある。この歯車の謎を解いてからが無難だ。
「あー、早くわからないかなー」
「攻略班の活躍に期待しよう。どうせ並みのプレイヤーでは立ち入れない」
この歯車のアイテムを入手しなければ挑めないようなマル秘ダンジョンだと予想していた。
しかしその分情報の出所がなかなか掴めない。
膠着状態になっていた。
「でしたら皆さん、このようなイベントに参加してみませんか?」
「イベントって?」
「はい」
雷斬が話を提供してくれた。
一斉に机に集まると、印刷した紙を取り出す。
そこには月のマークがプリントされていた。
「これって、イベントなの?」
「はい。季節限定のイベントらしく、ゲーム内で噂になっている程度のメジャーなものではありません」
「マイナーってことね。にしてもこの名前凄いわね」
ベルは山の名前を指さした。確かにこの名前は凄い。
イベントの内容をそのまま反映したような、わかりやすさ全開の名前だった。
アキラも首を突っ込みたかったが、ここはぐっと我慢する。話の筋を折るのは悪いと思ってしまう。
「でもどうしてこのイベントに参加するのよ」
「ベル、忘れましたか? 今の季節は」
「9月よね。あっ!」
ベルは思い出したのか、直後項垂れる。忘れていたことが許せないのか、それとも別に理由があるのだろうか。
けれどピンと来ていないアキラとフェルノにNightは顔を覆い、「やれやれ」と口にする。
Nightに尋ねようとしたが、先に応えてくれたのは雷斬だ。
「今は9月。篠月と言えば、あれですよ」
2人にもピンときた。
アキラはテーブルの上に歯車を置き、指先でコロコロと回している。
うつ伏せのまま暇を持て余していた。
「まさかあれから1週間も経ったのに、何も情報がないなんてね」
「そうだよねー。5日ぶりにログインしたベルが驚いているんだもん。毎日ログインしてたNightは知っているんでしょ?」
「もちろんだ。何も反応がない」
文庫本片手に淡々と話すNight。
オッドアイの赤と青の瞳が寂しそうに瞬く。
「あー暇だ! 暇すぎるよ。ねえ何かないの!」
「何かって?」
「新しいダンジョンに行くとかギルド会館で依頼を受けるとか。それよか、Night!」
「何だ」
「他に町ってないの? スタットだけってことないでしょ?」
「もちろんだ。この世界にはいくつもの大陸いくつもの海が広がり、天空にも町があるとされている。私たちが動かないのは、この町で事足りるからだ」
確かにとアキラは納得した。
しかしフェルノの言うことも一理ある。ずっとこの町を拠点にし続けていても、近くのダンジョンにしか足が運べない。マンネリ化して飽きてしまうのがオチだ。
「わかった。11月になったら行くぞ」
「どうして11月なの?」
「寒くなるからな。雷斬とベルなら想像がつくだろ」
話を雷斬とベルに振った。
天井を見上げて少し考えると、共通して何か思いついたらしい。
きっとそれだと互いに納得し合うが、アキラとフェルノは置いてけぼりだった。
「モミジヤのことですね。モチーフは日本の京都。風情の良い瓦屋根の町並みに、朱鳥居。それから何と言っても……」
「温泉よね。日本人には馴染みが深いはずよ!」
2人はポンと手を叩いた。どうやら納得したらしい。
確かに寒い時期に温泉はよく紹介系のバラエティ番組でやっている。
何処に需要があるのかはわからないが、流し目で観てしまう。
やっぱり温泉は入浴した方が気持ちがいい。
「あはは、温泉って日本人好きそうだよね」
「アキラは好きじゃないのか?」
「ううん好きだよ。でもゲームの中の温泉ってどんな感じなのかな?」
「さあな」
Nightは冷たかった。水風呂のように冷たかった。
けれどまだ2ヶ月も先だ。
その前にやっておくことがある。この歯車の謎を解いてからが無難だ。
「あー、早くわからないかなー」
「攻略班の活躍に期待しよう。どうせ並みのプレイヤーでは立ち入れない」
この歯車のアイテムを入手しなければ挑めないようなマル秘ダンジョンだと予想していた。
しかしその分情報の出所がなかなか掴めない。
膠着状態になっていた。
「でしたら皆さん、このようなイベントに参加してみませんか?」
「イベントって?」
「はい」
雷斬が話を提供してくれた。
一斉に机に集まると、印刷した紙を取り出す。
そこには月のマークがプリントされていた。
「これって、イベントなの?」
「はい。季節限定のイベントらしく、ゲーム内で噂になっている程度のメジャーなものではありません」
「マイナーってことね。にしてもこの名前凄いわね」
ベルは山の名前を指さした。確かにこの名前は凄い。
イベントの内容をそのまま反映したような、わかりやすさ全開の名前だった。
アキラも首を突っ込みたかったが、ここはぐっと我慢する。話の筋を折るのは悪いと思ってしまう。
「でもどうしてこのイベントに参加するのよ」
「ベル、忘れましたか? 今の季節は」
「9月よね。あっ!」
ベルは思い出したのか、直後項垂れる。忘れていたことが許せないのか、それとも別に理由があるのだろうか。
けれどピンと来ていないアキラとフェルノにNightは顔を覆い、「やれやれ」と口にする。
Nightに尋ねようとしたが、先に応えてくれたのは雷斬だ。
「今は9月。篠月と言えば、あれですよ」
2人にもピンときた。
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