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◇153 VSブラックパンサー
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2人は左右に飛んだ。
一瞬の出来事だった。あまりの速さに少しでも勘づくのが遅れれば、2人は死んでいた。
それぐらいわかるのは、2人が相当腕が立つからに他ならない。
「あっぶなーい! ぎりぎりだったね」
「そうだな。とはいえ油断はできないぞ。まだ敵が潜んでいる可能性も十分にある」
「私たち、敵の姿見てないもんね」
「そうだな。敵は暗闇の中に溶け込む。十分に注意しろよ」
「Nightもでしょ。『Sneak Combat』とは違うからね」
「誰に言っている。今期は無理だが、3連続1位だぞこっちは」
「うーん、わかんない」
「わからないか。まあいい。とにかくこいつを叩くぞ」
とは言え敵は見えない。夜の闇がどんどん深く濃くなっていて、敵の姿を山に映えた大量の木が覆い隠してしまう。
お前家に向こうの方が目も良く気配も鋭い。
完全にアキラたちは不利に立たされていた。
とは言え、こんなことで負ける2人でもない——
「【ライフ・オブ・メイク】:閃光弾」
「おお、何かそれっぽい」
「目を瞑れ。敵の姿を確認するぞ」
Nightに言われ、アキラは一瞬目を瞑る。
ピンを外す音がした。そのまま思いっきり地面に叩きつける。
すると瞬く間もなく、閃光が暗闇を支配した。
真っ暗闇が突然真っ白になり、瞼の裏まで浸透する。
アキラとNightは視力の概念を一瞬失いかけたが、すぐさま耳を頼りにガサゴソと音を立てるのを聞き逃さない。
「聞こえたな、アキラ」
「もちろん。じゃあNight、いつもの投げちゃって」
「おいおい。人をあてにするな」
とは言いつつも、Nightはベルトに差したホルダーから2本のナイフを指に挟む。
まるで忍者がクナイでも投げるみたいに、的確に音のした方に投げる。
1本は音のしたところに投げ、もう1本は少し離れた位置に投げ飛ばした。敵の位置を予測して、先手を打ったのだが見事に的中したらしい。
グサッ!
柔らかいものに何かが突き刺さった。
閃光が終わってしまい、暗闇が戻ってくるとしばらくしてから目を開ける。
音のした方に視線を向けたが、その瞬間もの凄い速さでアキラの顔を抉ろうとしていた。
「【キメラハント】:【半液状化】!」
スライムから奪った能力で、体をスライム形状にした。
顔が抉られるような恐怖心が募る。確かに爪の先っちょがアキラの顔を捉えていたが、間一髪のところでスライムになることで攻撃から身を守った。
安堵しようとしたアキラだが、その余裕もないので今度はスライム状態を解除して元の姿に戻る。いつもの戦闘形態【キメラハント】:【甲蟲】+【月跳】の構えだ。
「な、ななな何が起こったの? 今、死んだと思ったよ!」
「いいや、お前が防御系スキルを持っていなければ間違いなく死んでいた。よく見てみろ、敵のお出ましだ」
「お出ましだってそんな悠長な……あれ?」
「猫だな。しかもパンサーか」
目の前には何かいた。黄色い目が浮かんでいるが、輪郭が捉えられない。
ただNightには見えているらしい。よく見れば目が赤くなっている。
オッドアイのはずなのに、片目だけ真っ赤だ。
もしかすると何かのスキルだろうかと、アキラは首を捻った。
「Night、その目はどうしたの?」
「何でもない。気にするな」
「もしかして病気かな? この世界にもあるんだよね。私たちもうつるのかな?」
「だから気にするな。後で説明してやる。とにかくコイツを仕留めるぞ」
「うーん、見えないけど頑張るよ」
アキラは気配だけを頼りに頑張ることにした。
その隣では十字架状の剣を握りしめるNightは勇ましく立ち向かう。
「やっぱり長いねその剣」
「その分重いが私にはこれがあっている」
どんな理屈だ、それ。アキラは口を歪めてしまい、やせ我慢だと思った。
いつもとは違う雰囲気だけど、ナイフだけじゃどうにもならないことになる。
少しでも相性のいい武器はないのか尋ねようとしたが、残念なことにNightは集中していた。
Nightの耳には届くことなく、アキラの援護を待たずに見えない敵に突撃した。
「行くぞ、アキラ!」
「行くって、もうわかんないよ!」
【月跳】を使って高く飛びかかるアキラはNightの代わりに奇襲役を任された。
【甲蟲】で武装した腕に加えて、爪まで硬く伸ばす。【灰爪】を武器にして見えない敵に飛びかかるものの、やはり見えないのが仇となり簡単に避けられてしまった。
その隙を突いて黒いパンサーらしき敵はアキラに襲い掛かる。
空気を切って殺気が伝わった。背後にまで死が近づく。
「はぁっ!」
アキラの反応はとんでもなく早かった。微妙なタイムラグも発生せず、コンマ0難病の世界の動きで何とかかわすと、Nightの剣が叩きつけられた。
HPバーが少しだけ減ったのだが、やはり敵の姿は見えない。
そこで名前だけでもと思い、アキラは勝手にだけど頭の中でブラックパンサーと呼ぶことにした。正直敵の方が圧倒的に有利で、地形も時間も2人にはない。あまりに不利なんだ。
けれど決して負けることはないと、2人は誓っていた。
一瞬の出来事だった。あまりの速さに少しでも勘づくのが遅れれば、2人は死んでいた。
それぐらいわかるのは、2人が相当腕が立つからに他ならない。
「あっぶなーい! ぎりぎりだったね」
「そうだな。とはいえ油断はできないぞ。まだ敵が潜んでいる可能性も十分にある」
「私たち、敵の姿見てないもんね」
「そうだな。敵は暗闇の中に溶け込む。十分に注意しろよ」
「Nightもでしょ。『Sneak Combat』とは違うからね」
「誰に言っている。今期は無理だが、3連続1位だぞこっちは」
「うーん、わかんない」
「わからないか。まあいい。とにかくこいつを叩くぞ」
とは言え敵は見えない。夜の闇がどんどん深く濃くなっていて、敵の姿を山に映えた大量の木が覆い隠してしまう。
お前家に向こうの方が目も良く気配も鋭い。
完全にアキラたちは不利に立たされていた。
とは言え、こんなことで負ける2人でもない——
「【ライフ・オブ・メイク】:閃光弾」
「おお、何かそれっぽい」
「目を瞑れ。敵の姿を確認するぞ」
Nightに言われ、アキラは一瞬目を瞑る。
ピンを外す音がした。そのまま思いっきり地面に叩きつける。
すると瞬く間もなく、閃光が暗闇を支配した。
真っ暗闇が突然真っ白になり、瞼の裏まで浸透する。
アキラとNightは視力の概念を一瞬失いかけたが、すぐさま耳を頼りにガサゴソと音を立てるのを聞き逃さない。
「聞こえたな、アキラ」
「もちろん。じゃあNight、いつもの投げちゃって」
「おいおい。人をあてにするな」
とは言いつつも、Nightはベルトに差したホルダーから2本のナイフを指に挟む。
まるで忍者がクナイでも投げるみたいに、的確に音のした方に投げる。
1本は音のしたところに投げ、もう1本は少し離れた位置に投げ飛ばした。敵の位置を予測して、先手を打ったのだが見事に的中したらしい。
グサッ!
柔らかいものに何かが突き刺さった。
閃光が終わってしまい、暗闇が戻ってくるとしばらくしてから目を開ける。
音のした方に視線を向けたが、その瞬間もの凄い速さでアキラの顔を抉ろうとしていた。
「【キメラハント】:【半液状化】!」
スライムから奪った能力で、体をスライム形状にした。
顔が抉られるような恐怖心が募る。確かに爪の先っちょがアキラの顔を捉えていたが、間一髪のところでスライムになることで攻撃から身を守った。
安堵しようとしたアキラだが、その余裕もないので今度はスライム状態を解除して元の姿に戻る。いつもの戦闘形態【キメラハント】:【甲蟲】+【月跳】の構えだ。
「な、ななな何が起こったの? 今、死んだと思ったよ!」
「いいや、お前が防御系スキルを持っていなければ間違いなく死んでいた。よく見てみろ、敵のお出ましだ」
「お出ましだってそんな悠長な……あれ?」
「猫だな。しかもパンサーか」
目の前には何かいた。黄色い目が浮かんでいるが、輪郭が捉えられない。
ただNightには見えているらしい。よく見れば目が赤くなっている。
オッドアイのはずなのに、片目だけ真っ赤だ。
もしかすると何かのスキルだろうかと、アキラは首を捻った。
「Night、その目はどうしたの?」
「何でもない。気にするな」
「もしかして病気かな? この世界にもあるんだよね。私たちもうつるのかな?」
「だから気にするな。後で説明してやる。とにかくコイツを仕留めるぞ」
「うーん、見えないけど頑張るよ」
アキラは気配だけを頼りに頑張ることにした。
その隣では十字架状の剣を握りしめるNightは勇ましく立ち向かう。
「やっぱり長いねその剣」
「その分重いが私にはこれがあっている」
どんな理屈だ、それ。アキラは口を歪めてしまい、やせ我慢だと思った。
いつもとは違う雰囲気だけど、ナイフだけじゃどうにもならないことになる。
少しでも相性のいい武器はないのか尋ねようとしたが、残念なことにNightは集中していた。
Nightの耳には届くことなく、アキラの援護を待たずに見えない敵に突撃した。
「行くぞ、アキラ!」
「行くって、もうわかんないよ!」
【月跳】を使って高く飛びかかるアキラはNightの代わりに奇襲役を任された。
【甲蟲】で武装した腕に加えて、爪まで硬く伸ばす。【灰爪】を武器にして見えない敵に飛びかかるものの、やはり見えないのが仇となり簡単に避けられてしまった。
その隙を突いて黒いパンサーらしき敵はアキラに襲い掛かる。
空気を切って殺気が伝わった。背後にまで死が近づく。
「はぁっ!」
アキラの反応はとんでもなく早かった。微妙なタイムラグも発生せず、コンマ0難病の世界の動きで何とかかわすと、Nightの剣が叩きつけられた。
HPバーが少しだけ減ったのだが、やはり敵の姿は見えない。
そこで名前だけでもと思い、アキラは勝手にだけど頭の中でブラックパンサーと呼ぶことにした。正直敵の方が圧倒的に有利で、地形も時間も2人にはない。あまりに不利なんだ。
けれど決して負けることはないと、2人は誓っていた。
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