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◇168 ナマズに腕はないのに…
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毒ナマズこと、ポイズンシリュールが近づいて来ていた。
流石にマズいと思ったので、アキラたちは逃げることを優先する。
とは言え所かしこから、毒水混じりのヘドロが大量に噴き出していて、なかなか逃げられそうにない。
「どうしよう、さっきまで笑ってたけど急に笑えない状況になってきたよ!」
「それもそうだ。相手は怪獣だぞ」
「怪獣って、Nightってフェルノと似たニオイの子?」
「どういう意味だ。私はロボットアニメや特撮は好きだぞ」
「……意外ね」
「黙れ、人の趣味を笑うな。眉根を寄せるな」
走りながらくだらない話をしていた。
それだけまだ余裕があるということだが、後ろから追って来る毒ナマズは大量のヘドロを纏って木々を覆いつくしていた。
水源となっている中央の沼からは抜け出せないはずだが、徐々に木々が浸水していて動ける範囲を広げているようだ。
「このままじゃ私たちも逃げきれないよ!」
「向こうの方が大きさも桁違いだ。すぐに追いつかれるだろうな」
「でもどうやって攻撃してくるのかしらね」
「それはわからないけど……とにかくナマズだったら歩けないよね!」
「ヒレと尾を使って体を持ち上げているんだろうな。となると、いくら木々を浸水させても動ける範囲に限りはあるはずだ。とにかく逃げることは早々に諦めるしかないな」
「やっぱり戦うんだね。でもその方が私たちっぽいよね」
なんだかんだ言って、今まで相当なレベル差がない限りは逃げたことがない。
特に依頼を受けている場合は使命感なども働いて逃げる選択肢を自分たちで塗りつぶしてきた。
その経験が良いことかはまだわからない。
だがどんな逆境に立たされても、決して諦めようとしない姿勢は、まさしく主人公パーティーのそれだった。
「じゃあ開幕は私がするわね……行けっ」
ベルは一瞬だけ立ち止まり弓を構えた。
いつの間に携えたのか、弓を構えて矢を放つと綺麗な弧を描いて毒ナマズに直撃した。
しかしダメージはないのか、ヘドロの中に吸い込まれてしまった。
ギョロッとした目が蠢き、唇が口角を上げる。
「き、気持ち悪い……」
「キモいな。しかも強い」
「どうしよう。今度は私が行こっか?」
「お前に遠距離はないだろ。私とベルが繋ぐから、お前は少し待て」
頼もしいことを言ってくれたので、アキラは踏みとどまる。
Nightは十字架状の剣を引っ張り出したが、その瞬間足下から毒水が噴き出た。
アキラは瞬時に把握すると、スキルを使ってNightを助け出す。
「危ない、Night!」
「うがぁっ!」
毒水がまるで腕のように伸びてきた。
アキラはNightをギリギリのところで助け出す。
高いジャンプ力を誇る【月跳】でアキラとNightの体ごと吹き飛ばしていた。
「大丈夫、Night?」
「何とかな。しかしこれは何なんだ」
Nightも困惑していた。
断層の中から急に飛び出してきたのは、泥でできた腕だった。
ナマズに腕なんてないはずなのに、アキラ達を舐めている証拠だ。
しかしこれが敵の狙いでもある。アキラたちを掴まえようとしていた。
「向こうは体自体に腕がないからな。能力を使って腕を構築している。さしずめ、【泥腕】と言ったとことだろう」
「【泥腕】……その能力が奪えたら」
「馬鹿か。深追いはするな。今回の目的は頭頂部のドクハナだけだ。いいな」
Nightの圧に完全に押されてしまったアキラは押し黙ることにした。
すると今度は別の断層から腕が現れ、ベルに襲い掛かる。
完全に視野の有利は向こうに分がある。
Nightは苦虫を噛む思いで奥歯を噛み締め、脳をフル回転させた。
「さて、どうやって仕留めるか」
「作戦思いついたの?」
「もう少し待て、だが方法はあるぞ。【泥腕】を逆に利用するんだ」
「そんな真似できるの! だって相手はモンスターだよ!」
アキラは驚きの余りド直球で打たれる球を投げた。
すると狙ったところに飛んできた球を軽々と打った。
「もちろんだ。この【泥腕】と言うスキルは泥を固め出現させるものだ。とは言え、弱点が
ないわけではない。この能力を活かすには、泥がなければいけない。しかも形状の変化はで
きないらしいな」
「どういうこと?」
アキラは首を傾げる。Nightの理解力の追い付くため、必死に意識を拡張させた。
すると……何も出てこなかった。意図を汲み取ってやれなかった。
「いいか、私の合図でとにかく飛べ。高くだ、そして叩いて来い。倒す必要はない。敵のド
クハナだけ持って帰ってこい」
「そんな急な要望無理だよ」
「お前が無理何て言って、できなかった試しあるのか?」
「な、ないかな?」
「じゃあできるだろ。お前は継ぎ接ぎの中でほぼ唯一の“動けるオールラウンダー”なんだからならな」
何か褒められている気がしたアキラ。一瞬表情が硬くなったが、すぐに緩んで笑みを浮かべる。
やる気が出てきた証拠だと思い、意識をより一層引き立てる。
戦闘意欲を底上げし、全身の筋肉に脳が命令するよりも早くリンクさせる。
今のアキラは“対人戦で絶対負けない”になっていた。とは言え相手はモンスターだが——
流石にマズいと思ったので、アキラたちは逃げることを優先する。
とは言え所かしこから、毒水混じりのヘドロが大量に噴き出していて、なかなか逃げられそうにない。
「どうしよう、さっきまで笑ってたけど急に笑えない状況になってきたよ!」
「それもそうだ。相手は怪獣だぞ」
「怪獣って、Nightってフェルノと似たニオイの子?」
「どういう意味だ。私はロボットアニメや特撮は好きだぞ」
「……意外ね」
「黙れ、人の趣味を笑うな。眉根を寄せるな」
走りながらくだらない話をしていた。
それだけまだ余裕があるということだが、後ろから追って来る毒ナマズは大量のヘドロを纏って木々を覆いつくしていた。
水源となっている中央の沼からは抜け出せないはずだが、徐々に木々が浸水していて動ける範囲を広げているようだ。
「このままじゃ私たちも逃げきれないよ!」
「向こうの方が大きさも桁違いだ。すぐに追いつかれるだろうな」
「でもどうやって攻撃してくるのかしらね」
「それはわからないけど……とにかくナマズだったら歩けないよね!」
「ヒレと尾を使って体を持ち上げているんだろうな。となると、いくら木々を浸水させても動ける範囲に限りはあるはずだ。とにかく逃げることは早々に諦めるしかないな」
「やっぱり戦うんだね。でもその方が私たちっぽいよね」
なんだかんだ言って、今まで相当なレベル差がない限りは逃げたことがない。
特に依頼を受けている場合は使命感なども働いて逃げる選択肢を自分たちで塗りつぶしてきた。
その経験が良いことかはまだわからない。
だがどんな逆境に立たされても、決して諦めようとしない姿勢は、まさしく主人公パーティーのそれだった。
「じゃあ開幕は私がするわね……行けっ」
ベルは一瞬だけ立ち止まり弓を構えた。
いつの間に携えたのか、弓を構えて矢を放つと綺麗な弧を描いて毒ナマズに直撃した。
しかしダメージはないのか、ヘドロの中に吸い込まれてしまった。
ギョロッとした目が蠢き、唇が口角を上げる。
「き、気持ち悪い……」
「キモいな。しかも強い」
「どうしよう。今度は私が行こっか?」
「お前に遠距離はないだろ。私とベルが繋ぐから、お前は少し待て」
頼もしいことを言ってくれたので、アキラは踏みとどまる。
Nightは十字架状の剣を引っ張り出したが、その瞬間足下から毒水が噴き出た。
アキラは瞬時に把握すると、スキルを使ってNightを助け出す。
「危ない、Night!」
「うがぁっ!」
毒水がまるで腕のように伸びてきた。
アキラはNightをギリギリのところで助け出す。
高いジャンプ力を誇る【月跳】でアキラとNightの体ごと吹き飛ばしていた。
「大丈夫、Night?」
「何とかな。しかしこれは何なんだ」
Nightも困惑していた。
断層の中から急に飛び出してきたのは、泥でできた腕だった。
ナマズに腕なんてないはずなのに、アキラ達を舐めている証拠だ。
しかしこれが敵の狙いでもある。アキラたちを掴まえようとしていた。
「向こうは体自体に腕がないからな。能力を使って腕を構築している。さしずめ、【泥腕】と言ったとことだろう」
「【泥腕】……その能力が奪えたら」
「馬鹿か。深追いはするな。今回の目的は頭頂部のドクハナだけだ。いいな」
Nightの圧に完全に押されてしまったアキラは押し黙ることにした。
すると今度は別の断層から腕が現れ、ベルに襲い掛かる。
完全に視野の有利は向こうに分がある。
Nightは苦虫を噛む思いで奥歯を噛み締め、脳をフル回転させた。
「さて、どうやって仕留めるか」
「作戦思いついたの?」
「もう少し待て、だが方法はあるぞ。【泥腕】を逆に利用するんだ」
「そんな真似できるの! だって相手はモンスターだよ!」
アキラは驚きの余りド直球で打たれる球を投げた。
すると狙ったところに飛んできた球を軽々と打った。
「もちろんだ。この【泥腕】と言うスキルは泥を固め出現させるものだ。とは言え、弱点が
ないわけではない。この能力を活かすには、泥がなければいけない。しかも形状の変化はで
きないらしいな」
「どういうこと?」
アキラは首を傾げる。Nightの理解力の追い付くため、必死に意識を拡張させた。
すると……何も出てこなかった。意図を汲み取ってやれなかった。
「いいか、私の合図でとにかく飛べ。高くだ、そして叩いて来い。倒す必要はない。敵のド
クハナだけ持って帰ってこい」
「そんな急な要望無理だよ」
「お前が無理何て言って、できなかった試しあるのか?」
「な、ないかな?」
「じゃあできるだろ。お前は継ぎ接ぎの中でほぼ唯一の“動けるオールラウンダー”なんだからならな」
何か褒められている気がしたアキラ。一瞬表情が硬くなったが、すぐに緩んで笑みを浮かべる。
やる気が出てきた証拠だと思い、意識をより一層引き立てる。
戦闘意欲を底上げし、全身の筋肉に脳が命令するよりも早くリンクさせる。
今のアキラは“対人戦で絶対負けない”になっていた。とは言え相手はモンスターだが——
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