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◇213 ペアズ・ペア

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 アキラたちはギルドホームに集まった。
 今日公開された新イベントの概要の確認だった。

「それでは、Nightさんは参加されないのですか?」
「ああ。悪いが、今回は私はパスだ」

 雷斬は寂しそうだった。1人だけ除け者は精神的に来るらしい。
 けれどNightはまるで傷ついていない。

「まあいいんじゃない? 今回のイベントは面白そう」

 一方のベルはノリノリだった。
 完全に素に戻っていて、弓術フォームの冷静さはどこにもない。
 けれどこっちの方が取っつきやすいと、アキラはホッと胸を撫で下ろす。

「ベルも素に戻れていますね」
「うっ。仕方ないでしょ。慣れてきたんだから」
「ベルはもともと孤立気味でしたからね。良い傾向だと思いますよ」
「うっ。雷斬は私のお母さんなの?」
「いいえ、親友です。そしてお馴染みです。それからご近所です」

 凄い友情ワードが淡々と繰り出された。
 目が痛いのでNightはパタンと本を閉じて、話しを無理やり戻させる。

「おい、今回のイベントについて対策するんじゃないのか?」
「そうだったそうだった。えーっと、今回のこのペアズ・ペアってイベント何だけど、みんなはどう思う?」
「どう思うも何も変わっているわね」
「はい。趣向を凝らしたというよりも、難しいと思います」

 雷斬とベルの意見も同感だった。
 今回のイベント、ペアズ・ペアはその名の通り2人一組のイベントだ。
 簡単に言えば最初から2人いなければ参加できない仕様らしい。

「ソロプレイヤーからのバッシングは最初から織り込み済みということだろうな。とは言え、イベントの内容。これは凄まじいな」

 Nightはアキラたちにもわかるように軽くメモしておいた。
 そこにはルールと勝利条件がわかりやすく書き留められていた。

『ペアズ・ペア ルール説明』
1.2人一組のペアを作りイベントに参加。
2.特定のエリア内でモンスターを討伐。またはアイテムを入手する。
3.討伐、採取した功績によってポイントGET。上位を目指して頑張ろう

 とのことだった。
 あくまでも簡単に噛み砕いたものだが、イラストも描いてあって可愛らしい。

「要は2人組でモンスターを倒したりアイテムを入手することで、ポイントを集めて上位を目指す。よくあるランキング形式のものだが、ログイン時間も最大8時間。その間に数の暴力も使えないことで、どれだけ効率化もしくは強敵を相手にするかで上位と下位が湧けられそうだな」
「そうだよね。でも、難しいよ。だって……」

 流石のアキラも苦笑いを浮かべる。
 今回のイベントのキーワードは2人だ。
 1人ではなく2人なので、時間の都合もある上に片方が頑張ってもダメ。
 同時に敵を倒さなければ、ポイントは獲得できない。そういう仕様になっている模様。

「難しいよね? 2人で同時に倒すなんて」
「そもそもアイテムはどうするのかしらね。1つしか入手できないような物なら……ねえ?」
「多分判定にすら入らないだろうな」

 かなり難易度が高い。難しいの段階よりも、息の合った連携が取れないとダメだ。
 果たしてどれだけの参加者がいるのか。
 久しぶりのイベントとは言え、参加するハードルはかなり高そうだ。

「でもさ、これで上手く行ったら何でもできそうだよね!」
「確かにー。誰かに合わせるんじゃなくてさー、意識せずに動き合わせれたら反応が早くなりそうだよねー」

 アキラとフェルノは気にしていなかった。
 むしろ難しさを逆手にとってポジティブに考えるようにしていた。

「相変わらずの切り替えの早さだな、お前は」
「それが私の良いところでしょ!」
「まあな。お前はそうでなくちゃいけない」

 Nightも笑みを零した。
 意外な反応にアキラは瞬きをしてしまった。
 恥ずかしそうにNightは顔を背けた。

「でもね、私はみんなと普通に遊びたいな」
「それが良いでしょうね。狙ってイベントに参加するよりも、普段通り連携をした方がいいと思ます」

 となれば誰とペアを組むかだ。
 正直誰でもいいなと思いつつも、フェルノが拳を突き出した。

「それじゃあ誰と組むかグーパーで決めようよ」
「いいわね、それ。せーのっ、グーパー!」

 アキラとフェルノがグーを出した。
 雷斬とベルはパーを出した。
 結局いつも通りのペアができたので、早速イベントに参加することにした。

「ちなみに今回のイベントの開催期間って……」
「11月26日から12月3日だ。開催期間はそこまで長くはないが、あくまでも本格的にではなく、実験的なイベント何だろうな」

 Nightはいつの間にかコーヒーを淹れていて、スプーンでかき混ぜていた。
 砂糖も入れずにググっと飲むと、Nightは何か思い出した。

「そう言えば、お前たちは何処でポイントを稼ぐつもりなんだ」
「何処でって……スタットの方で稼いでもいいけど」
「せっかくならモミジヤで稼ぎたいよねー」

 フェルノは頭の上で腕を組んだ。
 Nightはアキラたちの要望を聞いてか、少しに気になるダンジョンを教えた。

「それなら好都合だ。アキラ、お前は空が飛びたくないか?」
「えっ?」

 突拍子もない話で頭を悩ませた。
 するとNightは一枚の紙切れを取り出し、机の上に置いた。

「何このモンスター?」

 その紙にはモンスターの絵が描いてある。
 墨絵のようだが、真っ赤に燃え盛る炎の鳥でカッコよかった。
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