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◇321 隕石に手を合わせて
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「おい、明輝!」
「明輝―。いい加減戻って来てよぉー!」
隕石を前にして明輝は固まっていた。
完全に意識が飛んでいてフリーズしていた。
そんな明輝を心配して蒼伊と烈火がずっと声を掛けていた。
肩を揺すったりしながら呼びかけ続けると、次第に明輝の声が戻る。
「あ、あれ?」
明輝は小さな声を上げる。瞬きをしてから視線の端っこで辺りを見回す。
蒼伊と烈火がとても心配している表情が飛び込んでくるのと同時に、頭がもの凄く居た。揺すられ過ぎて脳がグワングワンした。
「大丈夫だよ二人とも。もう戻って来たから!」
明輝は二人に声を掛ける。いつもの明輝が戻ってきたことに安堵して、声を掛けたり肩を揺するのを止める。
逆に明輝は頭を抑えながら「ううっ」と気持ち悪そうにする。
流石に明輝でも意識を切り替えきれないでいた。
「明輝大丈夫?」
「う、うん。意識はしっかりしてるよ。だけど気持ち悪くて」
明輝が四つん這いになっていた。
自然と隕石から指が離れるとその様子を見ていた降美槍が「やっぱりですか」と呟く。
「何がやっぱり何ですか、降美槍姉さん?」
「いえ、明輝さんも同じなんですよ。この隕石の力を引き出してしまう」
「引き出す? 如何言うことだ?」
「難しいですよね。説明が……よく覚えていないというか、何と言うのか、とにかく不思議な体験をしてしまったんですよね」
「は、はい……えっと、うっ頭が……う、宇宙に居たのかな?」
何故かそれ以上思い出せなかった。
すると降美槍は「宇宙……そうですか。私とは違いますね」と口走る。
「降美槍さんは違ったんですか?」
「はい。私が居たのは槍が幾本も突き刺さった樹海でしたよ」
人によって如何して違うのか。それに何で覚えていなくて、思い出そうとすると頭が痛くなるのか。
明輝はさっぱりで首を捻ってしまう。もちろん烈火や蒼伊たちはより一層頭を悩ます。
「私たちには分からないが、この隕石には未知の力が詰まっているんだな」
「そういう事だね。でも共感できないよー」
「それがこの隕石の力ってことじゃないの? でも神聖なパワーはありそうよね」
「面白いですが、友人をこんな目に遭わせるのは……」
斬禍は明輝のことを心配してくれている。
背中を擦ったり、肩を貸したりしてくれた。
こんなものに触れなければ良かったと、心底後悔している。とっても優しくて友達想いの武士だった。
「だけど悪い気はしなかったよ」
「そうなんですか?」
「うん。とっても心地良かった……気がするんだ」
明輝も覚えていないけど、心が軽くなった気がする。
だからこの隕石には感謝したい。
「そうだ。一応を手を合わせておこ」
「それもそうね。せっかくここまで来たのに、ご神体に手を合わせないのは悪いわよね」
鈴来も乗ってくれた。それを受けてか全員手を合わせる。
不思議な体験をさせてくれた隕石に感謝を伝え、明輝たちは本殿を後にする。
その瞬間、背中に強烈なエネルギーを感じた気がした。思い込みかもしれないけれど、明輝たちは一旦ピタリと止まり、振り向くことはなく本殿の外に出るのだった。
「ふはぁー、外の風気持ちいいねー!」
「寒いわよ。ううっ、コートコート」
鈴来は脱いでいたコートを回収した。
外は寒空が広がっているが妙に晴天で、厚着にしないと体に堪える。
「皆さんお疲れ様でした」
「降美槍さんもありがとうございました。隕石を見せて貰えてとってもいい経験になりました」
「それもそうだな。とは言え、私たちには不思議も半分だったが……」
「明輝、今度は気を付けてね」
「気を付けるが分からないんだけど」
何を気を付けるべきかは分からない。だけどあの隕石には普通では考えられないスピリチュアル的な作用が施されている。それだけは明輝が一番肌を通じて分かった。
とは言え目的は果たせた。これから如何しようかと思い斬禍たちに尋ねる。
「すみません。実は家の都合で今から家に戻って剣技を見せなくてはいけないんです」
「私も流鏑馬があって、残念だけど無理なのよね」
二人は忙しいみたいで、これからすぐに戻らないといけない。
ちょっと残念に思いつつも事情があるのは仕方なかった。
「それじゃあ駅まで行こっか」
「そうね。でもまた会えるわよ」
「そうですよ。今度は私たちの町にも遊びに来てください。名所は幾つかあるんですよ」
「ほんと! それじゃあ斬禍のリアル剣技も見られるってこと?」
「……分かりました。修練を積んでおきますね」
斬禍は一瞬目を見開くも、すぐさまいつもの表情に戻る。
その姿に降美槍は「頑張っちゃうのね」と口走りつつ、明輝たちを見送る。
「それじゃあ気を付けてね。本年も良いお年を」
「降美槍さんも良い年にしましょうね! また参拝しますから」
「ありがとうございます。ですがそう遠くないうちに会える気がしますよ」
「そうだといいですね。それじゃあさようなら!」
明輝たちは龍星神社を後にする。
トコトコと駅を目指して神社の境内を過ぎ、階段を下りて行く。
その後ろ姿を降美槍は丁寧に見送ると、手を振って「また会いましょうね」と口を動かしていた。
「明輝―。いい加減戻って来てよぉー!」
隕石を前にして明輝は固まっていた。
完全に意識が飛んでいてフリーズしていた。
そんな明輝を心配して蒼伊と烈火がずっと声を掛けていた。
肩を揺すったりしながら呼びかけ続けると、次第に明輝の声が戻る。
「あ、あれ?」
明輝は小さな声を上げる。瞬きをしてから視線の端っこで辺りを見回す。
蒼伊と烈火がとても心配している表情が飛び込んでくるのと同時に、頭がもの凄く居た。揺すられ過ぎて脳がグワングワンした。
「大丈夫だよ二人とも。もう戻って来たから!」
明輝は二人に声を掛ける。いつもの明輝が戻ってきたことに安堵して、声を掛けたり肩を揺するのを止める。
逆に明輝は頭を抑えながら「ううっ」と気持ち悪そうにする。
流石に明輝でも意識を切り替えきれないでいた。
「明輝大丈夫?」
「う、うん。意識はしっかりしてるよ。だけど気持ち悪くて」
明輝が四つん這いになっていた。
自然と隕石から指が離れるとその様子を見ていた降美槍が「やっぱりですか」と呟く。
「何がやっぱり何ですか、降美槍姉さん?」
「いえ、明輝さんも同じなんですよ。この隕石の力を引き出してしまう」
「引き出す? 如何言うことだ?」
「難しいですよね。説明が……よく覚えていないというか、何と言うのか、とにかく不思議な体験をしてしまったんですよね」
「は、はい……えっと、うっ頭が……う、宇宙に居たのかな?」
何故かそれ以上思い出せなかった。
すると降美槍は「宇宙……そうですか。私とは違いますね」と口走る。
「降美槍さんは違ったんですか?」
「はい。私が居たのは槍が幾本も突き刺さった樹海でしたよ」
人によって如何して違うのか。それに何で覚えていなくて、思い出そうとすると頭が痛くなるのか。
明輝はさっぱりで首を捻ってしまう。もちろん烈火や蒼伊たちはより一層頭を悩ます。
「私たちには分からないが、この隕石には未知の力が詰まっているんだな」
「そういう事だね。でも共感できないよー」
「それがこの隕石の力ってことじゃないの? でも神聖なパワーはありそうよね」
「面白いですが、友人をこんな目に遭わせるのは……」
斬禍は明輝のことを心配してくれている。
背中を擦ったり、肩を貸したりしてくれた。
こんなものに触れなければ良かったと、心底後悔している。とっても優しくて友達想いの武士だった。
「だけど悪い気はしなかったよ」
「そうなんですか?」
「うん。とっても心地良かった……気がするんだ」
明輝も覚えていないけど、心が軽くなった気がする。
だからこの隕石には感謝したい。
「そうだ。一応を手を合わせておこ」
「それもそうね。せっかくここまで来たのに、ご神体に手を合わせないのは悪いわよね」
鈴来も乗ってくれた。それを受けてか全員手を合わせる。
不思議な体験をさせてくれた隕石に感謝を伝え、明輝たちは本殿を後にする。
その瞬間、背中に強烈なエネルギーを感じた気がした。思い込みかもしれないけれど、明輝たちは一旦ピタリと止まり、振り向くことはなく本殿の外に出るのだった。
「ふはぁー、外の風気持ちいいねー!」
「寒いわよ。ううっ、コートコート」
鈴来は脱いでいたコートを回収した。
外は寒空が広がっているが妙に晴天で、厚着にしないと体に堪える。
「皆さんお疲れ様でした」
「降美槍さんもありがとうございました。隕石を見せて貰えてとってもいい経験になりました」
「それもそうだな。とは言え、私たちには不思議も半分だったが……」
「明輝、今度は気を付けてね」
「気を付けるが分からないんだけど」
何を気を付けるべきかは分からない。だけどあの隕石には普通では考えられないスピリチュアル的な作用が施されている。それだけは明輝が一番肌を通じて分かった。
とは言え目的は果たせた。これから如何しようかと思い斬禍たちに尋ねる。
「すみません。実は家の都合で今から家に戻って剣技を見せなくてはいけないんです」
「私も流鏑馬があって、残念だけど無理なのよね」
二人は忙しいみたいで、これからすぐに戻らないといけない。
ちょっと残念に思いつつも事情があるのは仕方なかった。
「それじゃあ駅まで行こっか」
「そうね。でもまた会えるわよ」
「そうですよ。今度は私たちの町にも遊びに来てください。名所は幾つかあるんですよ」
「ほんと! それじゃあ斬禍のリアル剣技も見られるってこと?」
「……分かりました。修練を積んでおきますね」
斬禍は一瞬目を見開くも、すぐさまいつもの表情に戻る。
その姿に降美槍は「頑張っちゃうのね」と口走りつつ、明輝たちを見送る。
「それじゃあ気を付けてね。本年も良いお年を」
「降美槍さんも良い年にしましょうね! また参拝しますから」
「ありがとうございます。ですがそう遠くないうちに会える気がしますよ」
「そうだといいですね。それじゃあさようなら!」
明輝たちは龍星神社を後にする。
トコトコと駅を目指して神社の境内を過ぎ、階段を下りて行く。
その後ろ姿を降美槍は丁寧に見送ると、手を振って「また会いましょうね」と口を動かしていた。
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