352 / 478
◇349 VSアクアドラゴン?
しおりを挟む
アクアドラゴンは怒っていた。
全部アキラが悪い。全部アキラの凡ミスが原因なのだが、それでもこの空気は流石に危ない気がする。
「えっと、アクアドラゴン……さん?」
「……」
「えっと、勘違いだよ? 龍の髭って言うのはあくまでも今回のイベント初のアイテムであって……あの」
「分かりました。そうですか、そうですか……そうですか……分かりました」
「あ、あれ?」
アキラは表情が引き攣った。
全身が固まり始め、これは絶対ヤバいと思った。
しかしながらアキラは全身全霊の便宜を図るものの、アクアドラゴンはそれを聞いてくれる気配すらない。むしろその眼は……
「そうですか、分かりました。それでは……」
「えーっと、アクアドラゴン?」
「全力で取りに来ると良いですよ。無論、返り討ちにして水流の渦で八つ裂きにし、圧死させ、二度と私の前で口答えできないようにしてあげますがね!」
アクアドラゴンの威圧感が更に増す。
流石にアキラも全身が貫かれ、胸が刺された。
けれどここで臆してはダメだ。そう感じた瞬間、視線が前を向き、脳内に声が聞こえる。胸の奥から叫び声が鳴った。
『来ますよ』
「く、来る!」
アクアドラゴンが体をのけ反らせると、口から巨大な水流が吐き出される。
激流になってアキラのことを飲み込もうとするも、その瞬間アキラも全身運動を使った。
左右に避けても回避できない。かと言って上下の動きは飛んで火にいる夏の虫。
「だったら!」
アキラは素早くスキル【キメラハント】:【月跳】を発動。
両脚をウサギの脚に変え、一気に空へと跳び上がる。
「初撃を避けますか」
「あ、危なかった……死ぬかと思った」
HPは一切減っていない。
間一髪のところで上に跳んだのが正解だったらしく、見事に激流砲を回避した。
「とは言ってもここからじゃ……」
「逃げ道ないですよ!」
アクアドラゴンは激流砲の二発目をぶっ放す。
流石にこの体勢じゃ絶対に躱せない。
そう思った瞬間、アキラは再び【キメラハント】:【幽体化】を使い、緊急回避をする。
(次は如何したら……ここで躱せても、三発目が来たら……)
【キメラハント】:【幽体化】は再発動までにインターバルを要求する。
それもそうだ。肉体が一瞬完全にないものになるから再度は使えない。
しかも体が一瞬形成されるから硬直してしまい、まともに動けない。
アクアドラゴンがその隙を見逃すとは、アキラには思えなかった。
「激流が空を切った……でも!」
「来るっ!」
激流砲三発目は瞬く間だった。
アキラは片手を付いて地面に着地していた反動もあり、まともに動けなくなってしまった。
「ど、如何しよう……考えろ、考えろ!」
アキラは全力で考えた。
ここから打てる手は何か無いのかと、脳に伝達させる。
しかし【キメラハント】じゃ足りない。アクアドラゴンの攻撃は今までのどんなモンスターよりも苛烈で、計算されていて、まるで人間のようだった。
積んでいるCPUが違うとかNightなら言いそうだとアキラが思う程に圧倒的で、これ以上の逃げの一手は通用しそうにない。
「如何したら……如何したら」
激流砲は目の前まで来ていた。
流石に避けられる未来も、打てる手も出し尽くしていた。
体の硬直が収まる頃にはきっと私は……アキラが下を向いたその瞬間、脳内に声が響く。
『まだ手は残っていますよ』
その声を聴いた瞬間、全身が震えた。
胸の衝動が沸き上がり、『ここで終わるな』と熱く語り掛ける。
所詮はモンスター相手。そうじゃない何かが突き動かし、アキラは気が付いた。
「そうだ!」
激流砲がアキラの体を飲み込む。
体が包み込まれ、蒼の衝動に覆いつくされる。
もう手立てもない。周囲の草木は一瞬にして吹きすさび、茶色の地面を生み出す。
水の浸食作用を極限まで高めた一撃は、目の前の世界を染め上げた。
「消えましたか……」
アクアドラゴンは水蒸気の世界を見つめた。
全体が白く覆われている。
アクアドラゴンの浄化の水流を浴び、一度は削られ侵食された地面も元通りになっていた。
しかしその先に人影はない。
アクアドラゴンは警戒を解く。
「所詮はただの人間。身の程を知りなさい」
アクアドラゴンは池の中に戻ろうとする。
しかし眷属であるはずの鯉が水面を跳ねた。
「如何しましたか?」
何かを伝えようとしている。
しかしアクアドラゴンは眷属と言葉を交わす前に気が付いた。
何か感じる。この気配はさっきまでとは一線を画す。
「何者です!」
いいえ、アクアドラゴンは分かっていた。
この気配、根本的にはさっきと同じ。まるで変っていない一筋の線。
水蒸気に隠されて見えないけれど、そこには確かにアキラが居た。
しかしこれは一体何なのか。
アクアドラゴンは直感的に感じていた。
アキラ一人ではない。別の何か。もう一筋、新しい線が絡みついて補強している。
おまけにこの線はより強固に補強するだけではない。お互いに共振して纏わり付き進化させる。
「貴女は一体……何者ですか」
水蒸気が晴れていく。
天に昇って人影の存在を露わにすると、そこに居たのは案の定アキラ。
しかしながら何か違う。全身を真白な靄が包み込んでいた。
全部アキラが悪い。全部アキラの凡ミスが原因なのだが、それでもこの空気は流石に危ない気がする。
「えっと、アクアドラゴン……さん?」
「……」
「えっと、勘違いだよ? 龍の髭って言うのはあくまでも今回のイベント初のアイテムであって……あの」
「分かりました。そうですか、そうですか……そうですか……分かりました」
「あ、あれ?」
アキラは表情が引き攣った。
全身が固まり始め、これは絶対ヤバいと思った。
しかしながらアキラは全身全霊の便宜を図るものの、アクアドラゴンはそれを聞いてくれる気配すらない。むしろその眼は……
「そうですか、分かりました。それでは……」
「えーっと、アクアドラゴン?」
「全力で取りに来ると良いですよ。無論、返り討ちにして水流の渦で八つ裂きにし、圧死させ、二度と私の前で口答えできないようにしてあげますがね!」
アクアドラゴンの威圧感が更に増す。
流石にアキラも全身が貫かれ、胸が刺された。
けれどここで臆してはダメだ。そう感じた瞬間、視線が前を向き、脳内に声が聞こえる。胸の奥から叫び声が鳴った。
『来ますよ』
「く、来る!」
アクアドラゴンが体をのけ反らせると、口から巨大な水流が吐き出される。
激流になってアキラのことを飲み込もうとするも、その瞬間アキラも全身運動を使った。
左右に避けても回避できない。かと言って上下の動きは飛んで火にいる夏の虫。
「だったら!」
アキラは素早くスキル【キメラハント】:【月跳】を発動。
両脚をウサギの脚に変え、一気に空へと跳び上がる。
「初撃を避けますか」
「あ、危なかった……死ぬかと思った」
HPは一切減っていない。
間一髪のところで上に跳んだのが正解だったらしく、見事に激流砲を回避した。
「とは言ってもここからじゃ……」
「逃げ道ないですよ!」
アクアドラゴンは激流砲の二発目をぶっ放す。
流石にこの体勢じゃ絶対に躱せない。
そう思った瞬間、アキラは再び【キメラハント】:【幽体化】を使い、緊急回避をする。
(次は如何したら……ここで躱せても、三発目が来たら……)
【キメラハント】:【幽体化】は再発動までにインターバルを要求する。
それもそうだ。肉体が一瞬完全にないものになるから再度は使えない。
しかも体が一瞬形成されるから硬直してしまい、まともに動けない。
アクアドラゴンがその隙を見逃すとは、アキラには思えなかった。
「激流が空を切った……でも!」
「来るっ!」
激流砲三発目は瞬く間だった。
アキラは片手を付いて地面に着地していた反動もあり、まともに動けなくなってしまった。
「ど、如何しよう……考えろ、考えろ!」
アキラは全力で考えた。
ここから打てる手は何か無いのかと、脳に伝達させる。
しかし【キメラハント】じゃ足りない。アクアドラゴンの攻撃は今までのどんなモンスターよりも苛烈で、計算されていて、まるで人間のようだった。
積んでいるCPUが違うとかNightなら言いそうだとアキラが思う程に圧倒的で、これ以上の逃げの一手は通用しそうにない。
「如何したら……如何したら」
激流砲は目の前まで来ていた。
流石に避けられる未来も、打てる手も出し尽くしていた。
体の硬直が収まる頃にはきっと私は……アキラが下を向いたその瞬間、脳内に声が響く。
『まだ手は残っていますよ』
その声を聴いた瞬間、全身が震えた。
胸の衝動が沸き上がり、『ここで終わるな』と熱く語り掛ける。
所詮はモンスター相手。そうじゃない何かが突き動かし、アキラは気が付いた。
「そうだ!」
激流砲がアキラの体を飲み込む。
体が包み込まれ、蒼の衝動に覆いつくされる。
もう手立てもない。周囲の草木は一瞬にして吹きすさび、茶色の地面を生み出す。
水の浸食作用を極限まで高めた一撃は、目の前の世界を染め上げた。
「消えましたか……」
アクアドラゴンは水蒸気の世界を見つめた。
全体が白く覆われている。
アクアドラゴンの浄化の水流を浴び、一度は削られ侵食された地面も元通りになっていた。
しかしその先に人影はない。
アクアドラゴンは警戒を解く。
「所詮はただの人間。身の程を知りなさい」
アクアドラゴンは池の中に戻ろうとする。
しかし眷属であるはずの鯉が水面を跳ねた。
「如何しましたか?」
何かを伝えようとしている。
しかしアクアドラゴンは眷属と言葉を交わす前に気が付いた。
何か感じる。この気配はさっきまでとは一線を画す。
「何者です!」
いいえ、アクアドラゴンは分かっていた。
この気配、根本的にはさっきと同じ。まるで変っていない一筋の線。
水蒸気に隠されて見えないけれど、そこには確かにアキラが居た。
しかしこれは一体何なのか。
アクアドラゴンは直感的に感じていた。
アキラ一人ではない。別の何か。もう一筋、新しい線が絡みついて補強している。
おまけにこの線はより強固に補強するだけではない。お互いに共振して纏わり付き進化させる。
「貴女は一体……何者ですか」
水蒸気が晴れていく。
天に昇って人影の存在を露わにすると、そこに居たのは案の定アキラ。
しかしながら何か違う。全身を真白な靄が包み込んでいた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
174
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる