362 / 478
◇359 クロユリさん、教えてください!
しおりを挟む
「クロユリさん!」
「はい、何ですか?」
アキラたちは妖帖の雅が経営するギルドホーム兼温泉宿にやって来た。
今日も今日とてクロユリの姿しかなく、静かな時間を過ごす。
「如何したんです? 継ぎ接ぎの皆さんが全員一堂に会して」
「クロユリさん。私たちも手に入れましたよ」
「手に入れた? おめでとうございます。ギリギリでしたが、良かったですね」
クロユリは全てを察してくれた。
しかしながらまだ「良かったですね」と賛辞を送られるわけにはいかない。
正直な話、未だに真偽が怪しいからだ。なのでクロユリに尋ねる。
「クロユリさん、助けてください!」
「急に如何したんですか!? えっ、はいっ?」
唐突過ぎてクロユリは困惑した。
一体何に困っているのか、助けを求められているのか、まるで見当も付かない。
それもそのはず、一方的にクロユリが言葉なく理解してくれたからだ。
「クロユリ。会話を進めるぞ。会話がなければ話にならない」
「そうですよね。良かったです、まともに会話が進みそうですね」
クロユリは安堵していた。
しかしアキラたちは少し傷付く。
これだとまるでパッションで会話をする人たちみたいな構図になってしまって、邪険に扱われてしまいそうだからだ。
「まずは事の発端を聞いて欲しい」
「発端ですか? 皆さんで龍の髭を釣りに行ったのでは?」
「それもそうだ。とは言え、龍の髭と言うアイテムが一体何なのか分からないという障壁にぶつかってしまった。そのせいで困っている」
「なるほど。それでしたら簡単ですよ。龍の髭はアイテム名です。入手した段階で名前が表示されますから」
二人の会話は丁寧だった。
必要最低限の要項を適宜に散りばめ、お互い頭が良いので話がスラスラ進んでいく。
アキラたちも話を理解していたものの、ここで困ったことにNightは苦言を呈する。
「それはそうだが、ここで問題なのは、龍の髭と言うアイテムが二つも出てしまった」
「ん? 二つですか。おかしいですね。龍の髭は一つのパーティー、つまりはギルドごとに一つずつしか入手ができないアイテムのはずですよ?」
「私もそう思っているんだが、如何やらコレが同じ名前のアイテムでありながら分類では違うもの扱いになっているらしい」
「如何言うことです? つまりは同じアイテム名ではありますが、ものが全く異なっている。そう言うことでよろしいでしょうか?」
「その通りだ。全く困ってしまった。頭を抱えてしまうのもクロユリなら理解できるだろ」
Nightはクロユリに訴えかけた。
一方のクロユリも少し頭を悩ませてしまう。
言葉の意味を理解はできているものの、そんなことが有り得るのだろうか、自分の中で自問自答していた。
「難しい話ですね。同名のアイテムですか」
「ああ、難しい話だ」
「ちなみに形状に変化はありましたか?」
「多少似て非なる部分もあるが、形状に関しては同じだ」
「同じじゃないよ! 全然違うよ!」
アキラは抗議を入れる。ここで話をスラスラ流してしまったら、一方的に会話が進んでいき、完全に蚊帳の外にされてしまう。
そうなったらアクアドラゴンに悪い。
ナマズと一緒にされては敵わないはずだ。きっと次会った時が悲惨な目になるのは確実だ。
「全然違ったのですか?」
「全然違うよ。確かに形状は似てたけど、触り心地も希少性も全然違うはずだよ!」
「希少性? 龍の髭、どのように入手したのですか? 是非、お聞かせくださりませんか?」
クロユリは興味を抱いてくれた。
ここまでで相当濃厚な話にはなっているが、渋滞しそうになっているので、一つ興味の強い情報をくべる。
アキラも難しいことは言わないようにして、クロユリに突飛な話をしてみた。
「実は、アクアドラゴンに貰って」
「アクアドラゴン? はて、何でしょうか?」
やっぱりな反応だった。
空気が歪になり、不思議ムードが流れる。
「すみませんね、アキラさん。私もアクアドラゴンと言う言葉を耳にした覚えはなく……」
「そ、そうですか。あはは、大丈夫ですよ」
やっぱりクロユリも知らなかった。
アキラは笑いながらクロユリが気を病まないように配慮する。
だとすると、アキラが手に入れた龍の髭は何だったの。実物もあるので夢や幻では何しても、何かだけは気になる。
(アクアドラゴンを嘘にはしたくないし、あそこまで連れて行ってくれた鯉にも悪いもんね。一体如何したら……)
とは言え、これ以上の抵抗手段はなかった。
アキラは困ってしまうが、クロユリの表情は未だに考えたまま。
何か思い当たる節が無いか脳内を駆け回ると、「そう言えば……」含みを持たせた。
「アクアドラゴンではありませんが、龍の噂に関しては多少ですが聞いたことはありますよ」
「「「えっ!?」」」
アキラたちは声を上げて驚く。完全に初耳の情報で、ついつい膝を立ててしまった。
前のめりになるアキラたちにクロユリはさらに呟く。
「有名ではありませんが、Nightさんもご存じではないですか?」
「Night?」
ここに来て話をNightに振った。
目を閉じたNightは「そうだな」と呟くので、アキラたちはフリーズした。
「はい、何ですか?」
アキラたちは妖帖の雅が経営するギルドホーム兼温泉宿にやって来た。
今日も今日とてクロユリの姿しかなく、静かな時間を過ごす。
「如何したんです? 継ぎ接ぎの皆さんが全員一堂に会して」
「クロユリさん。私たちも手に入れましたよ」
「手に入れた? おめでとうございます。ギリギリでしたが、良かったですね」
クロユリは全てを察してくれた。
しかしながらまだ「良かったですね」と賛辞を送られるわけにはいかない。
正直な話、未だに真偽が怪しいからだ。なのでクロユリに尋ねる。
「クロユリさん、助けてください!」
「急に如何したんですか!? えっ、はいっ?」
唐突過ぎてクロユリは困惑した。
一体何に困っているのか、助けを求められているのか、まるで見当も付かない。
それもそのはず、一方的にクロユリが言葉なく理解してくれたからだ。
「クロユリ。会話を進めるぞ。会話がなければ話にならない」
「そうですよね。良かったです、まともに会話が進みそうですね」
クロユリは安堵していた。
しかしアキラたちは少し傷付く。
これだとまるでパッションで会話をする人たちみたいな構図になってしまって、邪険に扱われてしまいそうだからだ。
「まずは事の発端を聞いて欲しい」
「発端ですか? 皆さんで龍の髭を釣りに行ったのでは?」
「それもそうだ。とは言え、龍の髭と言うアイテムが一体何なのか分からないという障壁にぶつかってしまった。そのせいで困っている」
「なるほど。それでしたら簡単ですよ。龍の髭はアイテム名です。入手した段階で名前が表示されますから」
二人の会話は丁寧だった。
必要最低限の要項を適宜に散りばめ、お互い頭が良いので話がスラスラ進んでいく。
アキラたちも話を理解していたものの、ここで困ったことにNightは苦言を呈する。
「それはそうだが、ここで問題なのは、龍の髭と言うアイテムが二つも出てしまった」
「ん? 二つですか。おかしいですね。龍の髭は一つのパーティー、つまりはギルドごとに一つずつしか入手ができないアイテムのはずですよ?」
「私もそう思っているんだが、如何やらコレが同じ名前のアイテムでありながら分類では違うもの扱いになっているらしい」
「如何言うことです? つまりは同じアイテム名ではありますが、ものが全く異なっている。そう言うことでよろしいでしょうか?」
「その通りだ。全く困ってしまった。頭を抱えてしまうのもクロユリなら理解できるだろ」
Nightはクロユリに訴えかけた。
一方のクロユリも少し頭を悩ませてしまう。
言葉の意味を理解はできているものの、そんなことが有り得るのだろうか、自分の中で自問自答していた。
「難しい話ですね。同名のアイテムですか」
「ああ、難しい話だ」
「ちなみに形状に変化はありましたか?」
「多少似て非なる部分もあるが、形状に関しては同じだ」
「同じじゃないよ! 全然違うよ!」
アキラは抗議を入れる。ここで話をスラスラ流してしまったら、一方的に会話が進んでいき、完全に蚊帳の外にされてしまう。
そうなったらアクアドラゴンに悪い。
ナマズと一緒にされては敵わないはずだ。きっと次会った時が悲惨な目になるのは確実だ。
「全然違ったのですか?」
「全然違うよ。確かに形状は似てたけど、触り心地も希少性も全然違うはずだよ!」
「希少性? 龍の髭、どのように入手したのですか? 是非、お聞かせくださりませんか?」
クロユリは興味を抱いてくれた。
ここまでで相当濃厚な話にはなっているが、渋滞しそうになっているので、一つ興味の強い情報をくべる。
アキラも難しいことは言わないようにして、クロユリに突飛な話をしてみた。
「実は、アクアドラゴンに貰って」
「アクアドラゴン? はて、何でしょうか?」
やっぱりな反応だった。
空気が歪になり、不思議ムードが流れる。
「すみませんね、アキラさん。私もアクアドラゴンと言う言葉を耳にした覚えはなく……」
「そ、そうですか。あはは、大丈夫ですよ」
やっぱりクロユリも知らなかった。
アキラは笑いながらクロユリが気を病まないように配慮する。
だとすると、アキラが手に入れた龍の髭は何だったの。実物もあるので夢や幻では何しても、何かだけは気になる。
(アクアドラゴンを嘘にはしたくないし、あそこまで連れて行ってくれた鯉にも悪いもんね。一体如何したら……)
とは言え、これ以上の抵抗手段はなかった。
アキラは困ってしまうが、クロユリの表情は未だに考えたまま。
何か思い当たる節が無いか脳内を駆け回ると、「そう言えば……」含みを持たせた。
「アクアドラゴンではありませんが、龍の噂に関しては多少ですが聞いたことはありますよ」
「「「えっ!?」」」
アキラたちは声を上げて驚く。完全に初耳の情報で、ついつい膝を立ててしまった。
前のめりになるアキラたちにクロユリはさらに呟く。
「有名ではありませんが、Nightさんもご存じではないですか?」
「Night?」
ここに来て話をNightに振った。
目を閉じたNightは「そうだな」と呟くので、アキラたちはフリーズした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
175
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる