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◇410 チョコレートを作ろう
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アキラはNightに呼び出されていた。
ギルドホームにやって来ると、キッチンの方から音がした。
あまり使う機会はないがアキラが顔を覗かせると、そこにはもって珍しい光景が広がっていた。
「えっ!? Nightがエプロンなんてしてるよ!」
「なにがおかしい! それより来たのなら声くらい掛けろ」
Nightは真っ黒なエプロンを身に着けていた。
あまりにも珍しい格好に目を奪われてしまうと、今日呼ばれた目的を尋ねた。
「え、えっと。私を呼んだのって、なんで?」
「単純だ。アキラは料理ができるよな」
「うん。一人暮らしだから、料理くらいはできるけど……もしかしてなにか作るの?」
「そのつもりだ」
アキラはもっと驚いてしまった。
なにかのイベントでもないのに、料理をするNightの姿が見られるとは思わなかった。
つまるところ、アキラが呼ばれたのはあくまでも補助的な役割のはずだ。
一体何を作るのかと一瞬だけ考えるとすぐに浮かんだ。この間のアクア・カカオ豆を使ってチョコレートを作るらしい。
「チョコレートを作るんだ。今更だけど、カカオ豆から作るの?」
「当たり前だ」
「そ、そっか。結構大変だけど思うけど……」
カカオ豆からチョコレートを作ろうなんて思ったことがない。
そんなのできるのはお菓子メーカーくらいのものだと思っていた。
けれどNightは作るに作った調理器具と持ち前の知識をフル動員する。
「ある程度は調べてきている。事前準備も終わっている」
Nightは既にほとんど準備を終えていた。
確かにカカオ豆もキッチンに置いていない。
今から作業を始めるとなると、とんでもない時間になるだろうから、これは長丁場になるとアキラは覚悟した。
「それじゃあまずは……採取だな」
「採取はもう終わっているよ?」
Nightはあくまでもネットから拾って来た作り方を一からやるらしい。
キッチリしている性格がここに来て発揮されるが、採取の項目は飛ばしてもいいのにとアキラは密かに笑いたくなる。
「うわぁ、結構工程多いんだね。でもそれを二人でしかも今から人力でやるのはちょっと大変なんじゃ……」
「そんなことはないぞ」
Nightはそう言うと、キッチンの側に置いてある四角い白い箱に近付いた。
蓋を開けると冷気が漏れ出し、一気にひんやりする。Nightが少し前に【ライフ・オブ・メイク】と鍋を使って生み出した便利アイテムだった。
「冷蔵庫からなにを取り出すの? もしかしてカカオ豆?」
「そうだな。確かにカカオではあるが……」
もはや冷蔵庫があるファンタジーGAMEはファンタジーGAMEではない。
そんな当たり前のことにツッコむ気は一切無く、アキラも冷蔵庫の中からジュースを取り出した。
本当にNightと鍋が合って最高。そう思いつつ瓶の蓋を開けると、金賃の上にスチール製のボウルが置かれた。
「それで選別して、ローストして、分離して、粉砕して、混合して、微細化したものがコレだ」
ドン! と勢いよくキッチンの上の置かれたボウルには、チョコレートの塊が入っていた。
突いてみるがカチカチに固まっていて、指すら入らない。
これは湯煎が大変だ。そう思ったのも最中、それよりも驚きの方が勝った。
「早っ!? えっ、もう終わってたの!」
「当たり前だ。これだけの工程を一日で済ませられるわけがないだろ」
「そ、それはそうだけど……もはやギャグだよ」
「ギャグ? 私はふざけたつもりはないが」
Nightは一切ギャグのつもりが無かった。
大真面目に取り組んでここまで完成させたのだ。
まさかガチのチョコレートを食べたいからと言って、ここまでするとは思えず、アキラは若干引き気味からガチで引き気味になっていた。
「えっと、それじゃ後は……」
「精錬、張温、充填、冷却、型抜だ」
「つまり、湯煎してチョコを溶かして型に納めて冷蔵庫で冷やす。固まったら型から抜けばいいんだよね。あれ、簡単じゃない?」
あまりにも分かり切った工程だった。
これくらいならアキラが呼ばれた意味が分らない。
Nightの腕なら自分一人でできそうなのにと思ったが、鍋にお湯を張りその上にボウルを入れるNightの横顔はとても真剣だった。
「Night、もう少しリラックスしようよ」
「分かっている」
「分かっていないから言ってるんだよ。そんなにムキになったら上手く行かないよ?」
アキラはNightの肩にそっと手を置いた。
すると硬くなったNightの筋肉が伝わり、相当力が入っていた。
これは良くない。そう思ったアキラだったが、湯煎にも一生懸命なNightに一つ尋ねる。
「Night、どうしてそこまで真剣になるの?」
「どうしてだと?」
「そうだよ。自分一人で食べるためだったら、こんなに頑張る必要無いでしょ?」
「……ふん。アキラは湯銭の方を見ておいてくれ。私は型を作ってくる!」
「あっ、Night……怒らせちゃったかな?」
Nightはキッチンを後にした。
どうしてそこまで真剣になるのか。アキラにはあまり分からず、それでも湯煎をしっかりと見ておくことにした。
ギルドホームにやって来ると、キッチンの方から音がした。
あまり使う機会はないがアキラが顔を覗かせると、そこにはもって珍しい光景が広がっていた。
「えっ!? Nightがエプロンなんてしてるよ!」
「なにがおかしい! それより来たのなら声くらい掛けろ」
Nightは真っ黒なエプロンを身に着けていた。
あまりにも珍しい格好に目を奪われてしまうと、今日呼ばれた目的を尋ねた。
「え、えっと。私を呼んだのって、なんで?」
「単純だ。アキラは料理ができるよな」
「うん。一人暮らしだから、料理くらいはできるけど……もしかしてなにか作るの?」
「そのつもりだ」
アキラはもっと驚いてしまった。
なにかのイベントでもないのに、料理をするNightの姿が見られるとは思わなかった。
つまるところ、アキラが呼ばれたのはあくまでも補助的な役割のはずだ。
一体何を作るのかと一瞬だけ考えるとすぐに浮かんだ。この間のアクア・カカオ豆を使ってチョコレートを作るらしい。
「チョコレートを作るんだ。今更だけど、カカオ豆から作るの?」
「当たり前だ」
「そ、そっか。結構大変だけど思うけど……」
カカオ豆からチョコレートを作ろうなんて思ったことがない。
そんなのできるのはお菓子メーカーくらいのものだと思っていた。
けれどNightは作るに作った調理器具と持ち前の知識をフル動員する。
「ある程度は調べてきている。事前準備も終わっている」
Nightは既にほとんど準備を終えていた。
確かにカカオ豆もキッチンに置いていない。
今から作業を始めるとなると、とんでもない時間になるだろうから、これは長丁場になるとアキラは覚悟した。
「それじゃあまずは……採取だな」
「採取はもう終わっているよ?」
Nightはあくまでもネットから拾って来た作り方を一からやるらしい。
キッチリしている性格がここに来て発揮されるが、採取の項目は飛ばしてもいいのにとアキラは密かに笑いたくなる。
「うわぁ、結構工程多いんだね。でもそれを二人でしかも今から人力でやるのはちょっと大変なんじゃ……」
「そんなことはないぞ」
Nightはそう言うと、キッチンの側に置いてある四角い白い箱に近付いた。
蓋を開けると冷気が漏れ出し、一気にひんやりする。Nightが少し前に【ライフ・オブ・メイク】と鍋を使って生み出した便利アイテムだった。
「冷蔵庫からなにを取り出すの? もしかしてカカオ豆?」
「そうだな。確かにカカオではあるが……」
もはや冷蔵庫があるファンタジーGAMEはファンタジーGAMEではない。
そんな当たり前のことにツッコむ気は一切無く、アキラも冷蔵庫の中からジュースを取り出した。
本当にNightと鍋が合って最高。そう思いつつ瓶の蓋を開けると、金賃の上にスチール製のボウルが置かれた。
「それで選別して、ローストして、分離して、粉砕して、混合して、微細化したものがコレだ」
ドン! と勢いよくキッチンの上の置かれたボウルには、チョコレートの塊が入っていた。
突いてみるがカチカチに固まっていて、指すら入らない。
これは湯煎が大変だ。そう思ったのも最中、それよりも驚きの方が勝った。
「早っ!? えっ、もう終わってたの!」
「当たり前だ。これだけの工程を一日で済ませられるわけがないだろ」
「そ、それはそうだけど……もはやギャグだよ」
「ギャグ? 私はふざけたつもりはないが」
Nightは一切ギャグのつもりが無かった。
大真面目に取り組んでここまで完成させたのだ。
まさかガチのチョコレートを食べたいからと言って、ここまでするとは思えず、アキラは若干引き気味からガチで引き気味になっていた。
「えっと、それじゃ後は……」
「精錬、張温、充填、冷却、型抜だ」
「つまり、湯煎してチョコを溶かして型に納めて冷蔵庫で冷やす。固まったら型から抜けばいいんだよね。あれ、簡単じゃない?」
あまりにも分かり切った工程だった。
これくらいならアキラが呼ばれた意味が分らない。
Nightの腕なら自分一人でできそうなのにと思ったが、鍋にお湯を張りその上にボウルを入れるNightの横顔はとても真剣だった。
「Night、もう少しリラックスしようよ」
「分かっている」
「分かっていないから言ってるんだよ。そんなにムキになったら上手く行かないよ?」
アキラはNightの肩にそっと手を置いた。
すると硬くなったNightの筋肉が伝わり、相当力が入っていた。
これは良くない。そう思ったアキラだったが、湯煎にも一生懸命なNightに一つ尋ねる。
「Night、どうしてそこまで真剣になるの?」
「どうしてだと?」
「そうだよ。自分一人で食べるためだったら、こんなに頑張る必要無いでしょ?」
「……ふん。アキラは湯銭の方を見ておいてくれ。私は型を作ってくる!」
「あっ、Night……怒らせちゃったかな?」
Nightはキッチンを後にした。
どうしてそこまで真剣になるのか。アキラにはあまり分からず、それでも湯煎をしっかりと見ておくことにした。
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