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◇424 吹雪の中の行進
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アキラたちはモミジヤに来ていた。
酷い吹雪で、夜空は雲に覆われていて肌が凍てつく。
冷たい。今にも凍えて死にそうだ。
「ううっ、寒いね」
「そんなこと分かっている。とにかく行くぞ」
Nightがむしゃくしゃしていた。
癇癪を起してでも体を温めないといけない。
それほどまでに寒く、下手をしなくても自殺行為だった。
「なんかさー、こんなに吹雪くものなのー?」
「場合にはよるな。だがこの吹雪で歩くのは本来危険だ」
モミジヤの街並みは一切無い。おまけに景色を見ている余裕は無い。
全身で雪を被りながら、後頭部がチクチクしていたい。
一応コートを着込んではいるが、それすら貫通して来る。
「すみません、私たちが遅れてしまって」
「でも仕方ないわよね。あんな時間だったんだもの」
「そうだよ。仕方ないよ。だから気にしないでね」
アキラは自分たちのログインが遅れたせいだと悩む雷斬とベルを宥めた。
けれど気温を見ていた時よりも非常に厳しい。
こんな中で果たして武家屋敷に辿り着けるのか。今から不安で仕方ない。
「ねえNight、この道を行けばいいの?」
「まずは道なりだ。その先は地図を見ながら行く」
今はまだモミジヤの中だ。目指す武家屋敷は一度モミジヤを出る必要がある。
柔らかい雪が降り積もって道は見えないが、なんとか土手の縁だけが残っているのでそれを頼りに歩く。
顔を吹雪から守るように視界を狭めて進んでいくと、モミジヤの門が見えた。手を付きながら外に出ると、マズい世界が広がっていた。
「「「うわぁ」」」
アキラたちは声も出ずに吐露した。
真っ白な白亜の世界が広がり、先には一寸の光りもない闇。
全身を雪に被されてしまい気持ちが沈んでいく。
完全に放心状態になってしまうが、アキラは意識を切り替えてフェルノに頼んだ。
「フェルノ、熱!」
「あっ、【吸炎竜化】!」
フェルノは両腕両脚を龍の鱗で武装する。
真っ赤な竜の姿をその身に体現すると、全身から炎を放った。
体中から漏れ出した炎が被さった雪を無理やり解かすと、顔色まで真っ赤になり息を荒げる。
「はぁはぁ……なるほどね、私をストーブに使うんだー」
「ごめんね。でもフェルノしかいないから」
「いいよいいよ。だけど流石に寒くて……ううっ、肌がモロに出るぅ」
フェルノは温かいと冷たいの狭間に居た。
それでもアキラたちは仄かに温かい。
フェルノのファイアドレイクとしての性質が出ていて、アキラたちは大いに助かった。
おまけに足元の雪が徐々に解け始め、水に変わっていく。
「ううっ、気持ち悪い」
「だがこれはいいぞ。フェルノ、お前が先頭を歩け」
「私が先頭? うーん、いいけど?」
Nightはフェルノを先頭に回した。
そのすぐ後ろをNightが続き、地図を見ながら武家屋敷の方向を指示する。
「フェルノ、ここからモミジヤの周囲をぐるりと回りながら北だ。この先に竹林がある」
「はいはいー。こっちだねー」
Nightはフェルノをラジコンのように操作して、先頭を歩かせ続ける。
すると後ろの雪がフェルノが歩くと解け出して、とっても歩きやすくなる。
まさにフェルノの後ろに道ができていた。
「それにしても変な街だよね、モミジヤって」
「そうかなー?」
「そうだよ。だって街の周りにも街があるんでしょ? 昔の名残みたいだけど、モミジヤ自体が相当古いよね」
「確かにそうだな」
モミジヤは古都をモチーフにしている。
だからだろうか。歴史が重厚で、設定も豊富。
変な街造りも歴史の一旦として含まれていて、考えれば考えるほど複雑化されていた。
「とは言え、運営がそんな設定で固定している可能性もある」
「うーん。可能性はあるけど、運営がそんな酷いことをするかな?」
「GAMEはあくまでもGAME。世界観を崩さず、ユーザーが面白いと思えば売れる」
「うーん、この世界のNPCはちゃんと生きたAIなのに……」
アキラが不思議に思ったことをNightは設定と言う言葉で一蹴した。
けれどまだまだ謎は残る。
それだとこの世界で生きる人達にとっては邪魔でしかない。なによりも危険で遠ざけたいと思うはずだ。
「歴史を重んじる街は分かるけど、わざわざモンスターが出るような場所、NPCたちも放っておいていいのかな?」
「それは知らない。だが、安全ではないだろうな」
「だよね。しかも竹林って、街の中にもあったよね?」
「あったな。途中で塀が邪魔をして行けなくなっていたが……もしかするとそういうことかもな」
「そういうことって?」
Nightは意味深なことを呟いた。
竹林の位置や丁度挟み込むような塀の関係。
全てを照らし合わせ、一つの答えを導き出す。
「簡単な話だ。雪将軍、それがこの世界に暮らすNPCたちにとって、単純にモンスターと言う扱いだけでなければ。と言うことだな」
もう一度言おう。あまりに意味深で怖かった。
だけどそれだけ練り込まれた設定だとすれば余計に面白くなりそうだ。
酷い吹雪で、夜空は雲に覆われていて肌が凍てつく。
冷たい。今にも凍えて死にそうだ。
「ううっ、寒いね」
「そんなこと分かっている。とにかく行くぞ」
Nightがむしゃくしゃしていた。
癇癪を起してでも体を温めないといけない。
それほどまでに寒く、下手をしなくても自殺行為だった。
「なんかさー、こんなに吹雪くものなのー?」
「場合にはよるな。だがこの吹雪で歩くのは本来危険だ」
モミジヤの街並みは一切無い。おまけに景色を見ている余裕は無い。
全身で雪を被りながら、後頭部がチクチクしていたい。
一応コートを着込んではいるが、それすら貫通して来る。
「すみません、私たちが遅れてしまって」
「でも仕方ないわよね。あんな時間だったんだもの」
「そうだよ。仕方ないよ。だから気にしないでね」
アキラは自分たちのログインが遅れたせいだと悩む雷斬とベルを宥めた。
けれど気温を見ていた時よりも非常に厳しい。
こんな中で果たして武家屋敷に辿り着けるのか。今から不安で仕方ない。
「ねえNight、この道を行けばいいの?」
「まずは道なりだ。その先は地図を見ながら行く」
今はまだモミジヤの中だ。目指す武家屋敷は一度モミジヤを出る必要がある。
柔らかい雪が降り積もって道は見えないが、なんとか土手の縁だけが残っているのでそれを頼りに歩く。
顔を吹雪から守るように視界を狭めて進んでいくと、モミジヤの門が見えた。手を付きながら外に出ると、マズい世界が広がっていた。
「「「うわぁ」」」
アキラたちは声も出ずに吐露した。
真っ白な白亜の世界が広がり、先には一寸の光りもない闇。
全身を雪に被されてしまい気持ちが沈んでいく。
完全に放心状態になってしまうが、アキラは意識を切り替えてフェルノに頼んだ。
「フェルノ、熱!」
「あっ、【吸炎竜化】!」
フェルノは両腕両脚を龍の鱗で武装する。
真っ赤な竜の姿をその身に体現すると、全身から炎を放った。
体中から漏れ出した炎が被さった雪を無理やり解かすと、顔色まで真っ赤になり息を荒げる。
「はぁはぁ……なるほどね、私をストーブに使うんだー」
「ごめんね。でもフェルノしかいないから」
「いいよいいよ。だけど流石に寒くて……ううっ、肌がモロに出るぅ」
フェルノは温かいと冷たいの狭間に居た。
それでもアキラたちは仄かに温かい。
フェルノのファイアドレイクとしての性質が出ていて、アキラたちは大いに助かった。
おまけに足元の雪が徐々に解け始め、水に変わっていく。
「ううっ、気持ち悪い」
「だがこれはいいぞ。フェルノ、お前が先頭を歩け」
「私が先頭? うーん、いいけど?」
Nightはフェルノを先頭に回した。
そのすぐ後ろをNightが続き、地図を見ながら武家屋敷の方向を指示する。
「フェルノ、ここからモミジヤの周囲をぐるりと回りながら北だ。この先に竹林がある」
「はいはいー。こっちだねー」
Nightはフェルノをラジコンのように操作して、先頭を歩かせ続ける。
すると後ろの雪がフェルノが歩くと解け出して、とっても歩きやすくなる。
まさにフェルノの後ろに道ができていた。
「それにしても変な街だよね、モミジヤって」
「そうかなー?」
「そうだよ。だって街の周りにも街があるんでしょ? 昔の名残みたいだけど、モミジヤ自体が相当古いよね」
「確かにそうだな」
モミジヤは古都をモチーフにしている。
だからだろうか。歴史が重厚で、設定も豊富。
変な街造りも歴史の一旦として含まれていて、考えれば考えるほど複雑化されていた。
「とは言え、運営がそんな設定で固定している可能性もある」
「うーん。可能性はあるけど、運営がそんな酷いことをするかな?」
「GAMEはあくまでもGAME。世界観を崩さず、ユーザーが面白いと思えば売れる」
「うーん、この世界のNPCはちゃんと生きたAIなのに……」
アキラが不思議に思ったことをNightは設定と言う言葉で一蹴した。
けれどまだまだ謎は残る。
それだとこの世界で生きる人達にとっては邪魔でしかない。なによりも危険で遠ざけたいと思うはずだ。
「歴史を重んじる街は分かるけど、わざわざモンスターが出るような場所、NPCたちも放っておいていいのかな?」
「それは知らない。だが、安全ではないだろうな」
「だよね。しかも竹林って、街の中にもあったよね?」
「あったな。途中で塀が邪魔をして行けなくなっていたが……もしかするとそういうことかもな」
「そういうことって?」
Nightは意味深なことを呟いた。
竹林の位置や丁度挟み込むような塀の関係。
全てを照らし合わせ、一つの答えを導き出す。
「簡単な話だ。雪将軍、それがこの世界に暮らすNPCたちにとって、単純にモンスターと言う扱いだけでなければ。と言うことだな」
もう一度言おう。あまりに意味深で怖かった。
だけどそれだけ練り込まれた設定だとすれば余計に面白くなりそうだ。
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