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◇450 継ぎ接ぎ・妖帖VSツユヨミ4
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「ううっ、ここは?」
アキラたちは黒いドームの中に覆われていた。
中腰の姿勢になりながら、全員固まっている。
「私が作ったドームの中だ。そう長くは保たないが、一時的な凌ぎには十分の筈だ」
Nightは答えた。確かにNightのHPバーが灰色に減っている。
新しくアプデが入っており、【ライフ・オブ・メイク】で消費したHPを可視化できるようになっていた。誰得なのだろうと思われるが、Nightにとっては分かりやすくて良かった。
とは言えHPの消費が大きい。
これ以上【ライフ・オブ・メイク】を使うことはできない。
「Night、ありがとう」
「感謝される筋合いはない。それに私はこれ以上なにもできない。くっ、定期的なアプデさえなければ……」
「仕方ないですよ。それにしてもNightさんのスキルは凄いですね。こんなこの世界にそぐわない物まで作ってしまうんですね」
Nightは眉根を寄せ、表情を訝しめる。
端を発したい状況で、Nightは拳をギュッと握る。
けれど椿姫はそんなNightの固有スキルが凄いと褒める。
だけどNightにはあまり通じないどころか、喜べない様子で渋い顔をする。
「褒められてるのかは分からないが、これはあくまでも一時的なものだ。直に壊れる」
Nightは褒められていることに疑問を抱く。
けれどその後に続けるよう、否定的な言葉を吐く。
「Night、素直に喜んだ方が良いよ」
「そうも言っていられない。本当にこのドームは直に壊れる。耳を澄ましてみろ」
アキラはNight自身に褒められたことを喜べと促した。だけどNightには通じない。
それどころか、耳を澄ましてみろと、外部に促し掛ける。
目を閉じ、耳にだけ集中すると、外からカーンカーンと金属を叩き付ける別の金属音が聞こえた。無数に反響して、ドームの中まで通じると、自然と頭の中でイメージができ、耳がキンキン言っていた。
「カーンカーンって言ってる。もしかしてツユヨミが攻撃を?」
「そう言うことだ。このドームは急いで作ったもののせいもあり、まだ定着が終わっていない。完全ではないということは脆い分も多い。そこを叩かれ続ければ、簡単に破壊されるぞ」
ツユヨミが分身を使ってドームを外から叩き続けている。
その事実に加え、Night自身も急ごしらえで作ったと言うこのドームは脆い面が多い。
つまりいつもの盾や壁に加え、形状も相まってか壊れるのも直。そう長くはこの状況を維持できないと、自然と情報を直結させていた。
「つまり時間が無いということですね。それでは今のうちに考えましょうか」
「考えるって如何するのー?」
クロユリの提案は正しかった。けれど考えるとは言っても、何も思いつかない。
その事実を間髪入れずにフェルノが呼吸をするみたいに代弁する。
「ちょっとフェルノ。如何するのーの前に自分でも考えなさいよ。いや、考えろよ!」
「おっ、薙刀モードだ! うーん、考えるって言っても、攻撃が効かないんじゃ、いくら殴っても変わらないよねー?」
「それはそうだ……とは言いたくないわね」
ベルは久々に薙刀モードに感情を切り替えた。
流石に何も思いつかないのは考えていることを放棄していると同義だった。
けれどフェルノは事実を突き付けた。ツユヨミは体を露にして攻撃を無効化できる。
おまけに分身されれば攻撃は通っても、すぐに復活して襲い掛かる。
こんなことを何度もやっていたら体が持たない。目の前の課題を一連の言葉で突き付けた。
とは言えそのことについては、ベル自身も分かってはいた。
だから反論もできず、委縮してしまう。
「Nightは思いついてるの?」
「私か? 私の仮説的にはな」
「仮説がもう立っているんですね。どんなものですか?」
アキラは考えてみたが、あまり良いアイデアが思いつかない。
そこで意識を早々に切り替え、Nightに声を掛ける。何か思いついていると思ったのだ。
すると案の定、仮設の段階は立っていた。
流石はNightだと持ち上げようとするが、正直Nightにも自信が無かった。
「あくまでも仮説だ。信憑性は皆無。ほとんどは私の願望に近い」
「それでもいいよ。とにかく話して!」
時間が余りにも短すぎて、頭の中で整理が追い付いていない。
そのせいで口調にも自信の無さが表れる。
だけどアキラはそんなNightの仮説をいつも信じている。
選んだ答えが気になって、ついつい急かすように背中を押した。
「仕方ないか……」
Nightは期待を一身に背負い、熱い視線を送られ続けると、やがて折れてしまった。
けれど自信のほどはないに等しい。
あくまでも仮説の話だと、根拠もない空想劇を披露した。
「という具合だ。あまり確証は得られない、所詮は絵空事……ん?」
Nightは話を終えると、自分の口で話を否定した。
こうすることで、興味を削ごうとしたのだ。
けれどNightの思惑とは裏腹に、何故かアキラたちは興味を抱いていた。
「へぇー。確かにツユヨミの言葉を借りたら、そのパターンもあるよね。凄いよNight、良く思い付いたね!」
「いや、思いつくだろ」
「まあそうよね。でも、それをやってみようとは思わないけど」
「だから私はやるなんて一言も言っていないだろ。勝手に拡大解釈をするな!」
Nightは怒りだした。
アキラたちが勝手に話を広げ、勝ってに話を盛ろうとしていたからだ。
けれど怒っていても仕方はない。むしろ問題なのは、この仮説を信じ切っている所だった。
「でもさー、やってみる価値はあるよね」
「うん。Night、それ試してみようよ」
「はっ?」
本気で仮説を信じ込んでいる。
しかもこの状況でそれを試してみようとしていた。
あまりの賭けにNightはポカンとする。首まで捻り、正気の沙汰とは思えなかった。
「正気か」
「正気だよ」
「あくまでも仮説だぞ。馬鹿げた話の域を出ないぞ」
「それでもこのままドームの中に隠れてても、そのうちやられちゃうでしょ? それなら試してみようよ! ねっ、みんな」
アキラは号令を掛けた。
すると士気が一気に上がり、中腰姿勢のまま拳を上げる。
Nightはこの敷かれた情景に呆れてものも言えない。だけど自分の仮説にここまで乗っかってくれる面々を見ていると、次第に信じるしかなくなる。
「はぁ。止めても訊きそうにないな」
「もちろん。だって選択肢が無いもん」
「それは確かだな。分かった。それならドームが砕けた瞬間だ。そこを勝機とするぞ」
「分かった。それじゃあみんな行くよ!」
「「「おー!」」」
Nightは完全に諦め、自分の方から骨を折った。
もうブレーキはない。残されたアクセルを全力で踏み込む姿勢だ。
「本当に元気がいいですね。統率力が取れています」
「自由人なだけだ」
「それがまた良いんですよ」
クロユリはそんな継ぎ接ぎの絆を見ていると、入念に分析をしてみせる。
統率力が取れている。確かに傍から見ればそうとも言える。
けれどNightはそれを否定した。
ただの自由人。その場の空気を受け入れ、自分たちなりの選択肢を確立している程度。
そんな風に称するのだが、何処ともなく愉快だった。
アキラたちは黒いドームの中に覆われていた。
中腰の姿勢になりながら、全員固まっている。
「私が作ったドームの中だ。そう長くは保たないが、一時的な凌ぎには十分の筈だ」
Nightは答えた。確かにNightのHPバーが灰色に減っている。
新しくアプデが入っており、【ライフ・オブ・メイク】で消費したHPを可視化できるようになっていた。誰得なのだろうと思われるが、Nightにとっては分かりやすくて良かった。
とは言えHPの消費が大きい。
これ以上【ライフ・オブ・メイク】を使うことはできない。
「Night、ありがとう」
「感謝される筋合いはない。それに私はこれ以上なにもできない。くっ、定期的なアプデさえなければ……」
「仕方ないですよ。それにしてもNightさんのスキルは凄いですね。こんなこの世界にそぐわない物まで作ってしまうんですね」
Nightは眉根を寄せ、表情を訝しめる。
端を発したい状況で、Nightは拳をギュッと握る。
けれど椿姫はそんなNightの固有スキルが凄いと褒める。
だけどNightにはあまり通じないどころか、喜べない様子で渋い顔をする。
「褒められてるのかは分からないが、これはあくまでも一時的なものだ。直に壊れる」
Nightは褒められていることに疑問を抱く。
けれどその後に続けるよう、否定的な言葉を吐く。
「Night、素直に喜んだ方が良いよ」
「そうも言っていられない。本当にこのドームは直に壊れる。耳を澄ましてみろ」
アキラはNight自身に褒められたことを喜べと促した。だけどNightには通じない。
それどころか、耳を澄ましてみろと、外部に促し掛ける。
目を閉じ、耳にだけ集中すると、外からカーンカーンと金属を叩き付ける別の金属音が聞こえた。無数に反響して、ドームの中まで通じると、自然と頭の中でイメージができ、耳がキンキン言っていた。
「カーンカーンって言ってる。もしかしてツユヨミが攻撃を?」
「そう言うことだ。このドームは急いで作ったもののせいもあり、まだ定着が終わっていない。完全ではないということは脆い分も多い。そこを叩かれ続ければ、簡単に破壊されるぞ」
ツユヨミが分身を使ってドームを外から叩き続けている。
その事実に加え、Night自身も急ごしらえで作ったと言うこのドームは脆い面が多い。
つまりいつもの盾や壁に加え、形状も相まってか壊れるのも直。そう長くはこの状況を維持できないと、自然と情報を直結させていた。
「つまり時間が無いということですね。それでは今のうちに考えましょうか」
「考えるって如何するのー?」
クロユリの提案は正しかった。けれど考えるとは言っても、何も思いつかない。
その事実を間髪入れずにフェルノが呼吸をするみたいに代弁する。
「ちょっとフェルノ。如何するのーの前に自分でも考えなさいよ。いや、考えろよ!」
「おっ、薙刀モードだ! うーん、考えるって言っても、攻撃が効かないんじゃ、いくら殴っても変わらないよねー?」
「それはそうだ……とは言いたくないわね」
ベルは久々に薙刀モードに感情を切り替えた。
流石に何も思いつかないのは考えていることを放棄していると同義だった。
けれどフェルノは事実を突き付けた。ツユヨミは体を露にして攻撃を無効化できる。
おまけに分身されれば攻撃は通っても、すぐに復活して襲い掛かる。
こんなことを何度もやっていたら体が持たない。目の前の課題を一連の言葉で突き付けた。
とは言えそのことについては、ベル自身も分かってはいた。
だから反論もできず、委縮してしまう。
「Nightは思いついてるの?」
「私か? 私の仮説的にはな」
「仮説がもう立っているんですね。どんなものですか?」
アキラは考えてみたが、あまり良いアイデアが思いつかない。
そこで意識を早々に切り替え、Nightに声を掛ける。何か思いついていると思ったのだ。
すると案の定、仮設の段階は立っていた。
流石はNightだと持ち上げようとするが、正直Nightにも自信が無かった。
「あくまでも仮説だ。信憑性は皆無。ほとんどは私の願望に近い」
「それでもいいよ。とにかく話して!」
時間が余りにも短すぎて、頭の中で整理が追い付いていない。
そのせいで口調にも自信の無さが表れる。
だけどアキラはそんなNightの仮説をいつも信じている。
選んだ答えが気になって、ついつい急かすように背中を押した。
「仕方ないか……」
Nightは期待を一身に背負い、熱い視線を送られ続けると、やがて折れてしまった。
けれど自信のほどはないに等しい。
あくまでも仮説の話だと、根拠もない空想劇を披露した。
「という具合だ。あまり確証は得られない、所詮は絵空事……ん?」
Nightは話を終えると、自分の口で話を否定した。
こうすることで、興味を削ごうとしたのだ。
けれどNightの思惑とは裏腹に、何故かアキラたちは興味を抱いていた。
「へぇー。確かにツユヨミの言葉を借りたら、そのパターンもあるよね。凄いよNight、良く思い付いたね!」
「いや、思いつくだろ」
「まあそうよね。でも、それをやってみようとは思わないけど」
「だから私はやるなんて一言も言っていないだろ。勝手に拡大解釈をするな!」
Nightは怒りだした。
アキラたちが勝手に話を広げ、勝ってに話を盛ろうとしていたからだ。
けれど怒っていても仕方はない。むしろ問題なのは、この仮説を信じ切っている所だった。
「でもさー、やってみる価値はあるよね」
「うん。Night、それ試してみようよ」
「はっ?」
本気で仮説を信じ込んでいる。
しかもこの状況でそれを試してみようとしていた。
あまりの賭けにNightはポカンとする。首まで捻り、正気の沙汰とは思えなかった。
「正気か」
「正気だよ」
「あくまでも仮説だぞ。馬鹿げた話の域を出ないぞ」
「それでもこのままドームの中に隠れてても、そのうちやられちゃうでしょ? それなら試してみようよ! ねっ、みんな」
アキラは号令を掛けた。
すると士気が一気に上がり、中腰姿勢のまま拳を上げる。
Nightはこの敷かれた情景に呆れてものも言えない。だけど自分の仮説にここまで乗っかってくれる面々を見ていると、次第に信じるしかなくなる。
「はぁ。止めても訊きそうにないな」
「もちろん。だって選択肢が無いもん」
「それは確かだな。分かった。それならドームが砕けた瞬間だ。そこを勝機とするぞ」
「分かった。それじゃあみんな行くよ!」
「「「おー!」」」
Nightは完全に諦め、自分の方から骨を折った。
もうブレーキはない。残されたアクセルを全力で踏み込む姿勢だ。
「本当に元気がいいですね。統率力が取れています」
「自由人なだけだ」
「それがまた良いんですよ」
クロユリはそんな継ぎ接ぎの絆を見ていると、入念に分析をしてみせる。
統率力が取れている。確かに傍から見ればそうとも言える。
けれどNightはそれを否定した。
ただの自由人。その場の空気を受け入れ、自分たちなりの選択肢を確立している程度。
そんな風に称するのだが、何処ともなく愉快だった。
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