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◇464 風邪、引いたんだって
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あれから二日。
アキラたちはCUにログインし、ギルドホームに集まっていた。
「なんだろ、たった二日しか経ってないのに、久々な気分」
「そうだねー。うぅーん、体が鈍っちゃってるよー」
アキラとフェスタは不思議な気分だった。
それもそのはず、実に二日ぶりのログイン。
ここのところ毎日ログインしていたせいか、一日ならまだしも、二日となると久々に感じる。
特にこの平穏がいつものことながらアキラたちはしみじみと感じた。
それもそのはず、雪将軍とツユヨミ。二人の強敵と戦った後なので、無性にゾワゾワしてしまう。この平穏が日常の筈が、ピリピリとした殺伐が上から塗り潰そうとしていた。
そんな非日常をフェルノは感傷に浸っていた。
頭の上で腕を組むと、鼻歌混じりに歌いだす。
「にしても熱かったね。雪将軍とツユヨミとの戦い、私はほとんどストーブだったけどさー」
「そうだね。でもあんなの」
「むぅ、ストーブの所にツッコみくれないのー?」
「ツッコみ待ちをしている時点でスルーだろ。それにアレは適材適所だ」
「それは分かってるけどさー。もっと活躍したかったなー」
「「いや、十分だと思うよ(が)?」」
フェルノは少し不満そうだった。それも一重に寒い中、ストーブとして活躍し続けたせいだろう。
本当ならもっと白熱した戦闘を繰り広げたかったはず。
けれど役割的にそれができなかったので、落ち込んでしまう。
だが適材適所だとNightは説明する。
そう考えればフェルノは自分の役割を全うしきっていて、十分な活躍だった。
そのことにフェルノ自身も気が付いてはいるのだが、やはりまだ暴れ足りなかった。
そんないつもの会話。いつもの日常。この平穏をありがたく噛み締める。
あんな殺伐とした戦闘は少し遠慮したい。
アキラはそう思いつつ、澄んだ瞳で周囲を見回す。
気が付いてはいたが、やはり気になってしまうことがあった。
「そう言えば二人は今日はログインできるのかな?」
「メッセージではログインできるそうだが、どうだろうな」
ギルドホームには三人しか集まっていない。
本当は今日、五人全員集合の予定だった。
けれど雷斬とベルの姿は今だない。
いつも通り少し遅れてログインするのかと思えば、如何にもそうとは限らなかった。
「そう言えば二人と風邪引いてるんだっけ?」
「うん。雪将軍と戦った後から急にね。タイミング的に不案だよね」
雷斬とベルは風邪を引いてしまったらしい。
雪将軍との戦い終わった後、低体温症で体が冷え切ってしまった。
急いでログアウトしたのだが、その日から急激な体調不良に見舞われてしまったらしい。
もしかするとGAMEの影響が出たのかもしれない。
CUは多少なりとも脳への影響があり、そこから通じて体へ影響が出ることもある。
しかしそれを認可されているには基本的に良い報告に働くからで、実際風邪程度なら許容できた。
けれどそれが自分の身の回り、それこそ友達に振り掛かるとまた変わる。
風邪も酷くなれば大きな病気にも繋がってしまう。
二人のことだから無事だとは思いつつも、アキラは心配だった。
「二人共大丈夫かな?」
「問題無いだろ。それにそろそろ回復してログインする筈だ」
確かにあれから二日経っている。
風邪も早くて一日、遅くても二日から三日もあれば回復するはずだ。
とは言えGAMEで貰った疲労が何処まで響いているだろうか?
アキラはNightに訊ねるも、読書に耽ってしまっていた。
「でもそうだよね。きっと大丈夫だよね、うん」
「そうそうー。もしかしたら死んでるかも? 的なこと言ったら、きっとベル辺りが……」
フェルノが冗談半分でそう答えた。
すると廊下の向こうから音がする。隣の部屋のようで、換気のため開けっ放しにしている扉に視線を吸われる。
軽やかな足音が聞こえた。もちろん現れたのは雷斬とベルだ。
「すみません、皆さん。遅れてしまいました」
「全く、勝手に殺さないで欲しいわね」
予想通りの合いの手が入った。
如何やら二人共調子が良さそうで、もう風邪の影響は無いらしい。
「二人共遅れてなんかないよ。それより風邪の方はもういいの?」
「はい、もう治りました。体調管理は十分できていますよ」
「そうね。うーん、久々のログイン、なんか良い感じじゃない?」
雷斬もベルも完全回復済み。おまけにいつも以上に調子の良いログインができたようで、軽く体を伸ばしてみると、非常にアバターの反応速度と感応性が極まっていた。
二人の調子が良さそうで何よりとアキラは安堵する中、フェルノは不思議がって首を捻る。
「そうなのー? 私は変な感じだったけどなー」
「なんでかしらね? 私にも分からないわ。そういう気分かもしれないわよ」
「気分の問題かー。そっかー、それっていいね。楽しくなりそうだよー」
フェルノは楽しそうに笑っていた。
実際友達の調子がいつもよりも良いのに越したことはない。
けれど何より嬉しいのは、こうして何事もなく全員集まれたことだった。
「さてと、全員集まったな」
そんな中、Nightは徐に読書を止める。
インベントリの中に読み耽っていた文庫本を放り込むと、スッと立ち上がる。
何かする気だろうか? 事情を知らない雷斬とベルは首を捻る。
「Nightさんどうしたんですか?」
「急に立ち上がってなによ。まさか今からモンスターを狩りに行くの?」
「違う」
「違うんだ。じゃあなにをするの?」
アキラとフェルノは知っているので何事もなく準備を進める。
けれど雷斬とベルは知らないので少し怖がった。
だけど安心して欲しい。アキラとフェルノはそれぞれ雷斬とベルの肩に手を当てる。
「「さっ、行こう。妖帖の雅の所に」」
「「妖帖の? えっ……」」
雷斬とベルは首を捻るを通り越し、声だけで反応する。
ログインして早々モミジヤに向かうこととなり、何が待っているのか気になった。
アキラたちはCUにログインし、ギルドホームに集まっていた。
「なんだろ、たった二日しか経ってないのに、久々な気分」
「そうだねー。うぅーん、体が鈍っちゃってるよー」
アキラとフェスタは不思議な気分だった。
それもそのはず、実に二日ぶりのログイン。
ここのところ毎日ログインしていたせいか、一日ならまだしも、二日となると久々に感じる。
特にこの平穏がいつものことながらアキラたちはしみじみと感じた。
それもそのはず、雪将軍とツユヨミ。二人の強敵と戦った後なので、無性にゾワゾワしてしまう。この平穏が日常の筈が、ピリピリとした殺伐が上から塗り潰そうとしていた。
そんな非日常をフェルノは感傷に浸っていた。
頭の上で腕を組むと、鼻歌混じりに歌いだす。
「にしても熱かったね。雪将軍とツユヨミとの戦い、私はほとんどストーブだったけどさー」
「そうだね。でもあんなの」
「むぅ、ストーブの所にツッコみくれないのー?」
「ツッコみ待ちをしている時点でスルーだろ。それにアレは適材適所だ」
「それは分かってるけどさー。もっと活躍したかったなー」
「「いや、十分だと思うよ(が)?」」
フェルノは少し不満そうだった。それも一重に寒い中、ストーブとして活躍し続けたせいだろう。
本当ならもっと白熱した戦闘を繰り広げたかったはず。
けれど役割的にそれができなかったので、落ち込んでしまう。
だが適材適所だとNightは説明する。
そう考えればフェルノは自分の役割を全うしきっていて、十分な活躍だった。
そのことにフェルノ自身も気が付いてはいるのだが、やはりまだ暴れ足りなかった。
そんないつもの会話。いつもの日常。この平穏をありがたく噛み締める。
あんな殺伐とした戦闘は少し遠慮したい。
アキラはそう思いつつ、澄んだ瞳で周囲を見回す。
気が付いてはいたが、やはり気になってしまうことがあった。
「そう言えば二人は今日はログインできるのかな?」
「メッセージではログインできるそうだが、どうだろうな」
ギルドホームには三人しか集まっていない。
本当は今日、五人全員集合の予定だった。
けれど雷斬とベルの姿は今だない。
いつも通り少し遅れてログインするのかと思えば、如何にもそうとは限らなかった。
「そう言えば二人と風邪引いてるんだっけ?」
「うん。雪将軍と戦った後から急にね。タイミング的に不案だよね」
雷斬とベルは風邪を引いてしまったらしい。
雪将軍との戦い終わった後、低体温症で体が冷え切ってしまった。
急いでログアウトしたのだが、その日から急激な体調不良に見舞われてしまったらしい。
もしかするとGAMEの影響が出たのかもしれない。
CUは多少なりとも脳への影響があり、そこから通じて体へ影響が出ることもある。
しかしそれを認可されているには基本的に良い報告に働くからで、実際風邪程度なら許容できた。
けれどそれが自分の身の回り、それこそ友達に振り掛かるとまた変わる。
風邪も酷くなれば大きな病気にも繋がってしまう。
二人のことだから無事だとは思いつつも、アキラは心配だった。
「二人共大丈夫かな?」
「問題無いだろ。それにそろそろ回復してログインする筈だ」
確かにあれから二日経っている。
風邪も早くて一日、遅くても二日から三日もあれば回復するはずだ。
とは言えGAMEで貰った疲労が何処まで響いているだろうか?
アキラはNightに訊ねるも、読書に耽ってしまっていた。
「でもそうだよね。きっと大丈夫だよね、うん」
「そうそうー。もしかしたら死んでるかも? 的なこと言ったら、きっとベル辺りが……」
フェルノが冗談半分でそう答えた。
すると廊下の向こうから音がする。隣の部屋のようで、換気のため開けっ放しにしている扉に視線を吸われる。
軽やかな足音が聞こえた。もちろん現れたのは雷斬とベルだ。
「すみません、皆さん。遅れてしまいました」
「全く、勝手に殺さないで欲しいわね」
予想通りの合いの手が入った。
如何やら二人共調子が良さそうで、もう風邪の影響は無いらしい。
「二人共遅れてなんかないよ。それより風邪の方はもういいの?」
「はい、もう治りました。体調管理は十分できていますよ」
「そうね。うーん、久々のログイン、なんか良い感じじゃない?」
雷斬もベルも完全回復済み。おまけにいつも以上に調子の良いログインができたようで、軽く体を伸ばしてみると、非常にアバターの反応速度と感応性が極まっていた。
二人の調子が良さそうで何よりとアキラは安堵する中、フェルノは不思議がって首を捻る。
「そうなのー? 私は変な感じだったけどなー」
「なんでかしらね? 私にも分からないわ。そういう気分かもしれないわよ」
「気分の問題かー。そっかー、それっていいね。楽しくなりそうだよー」
フェルノは楽しそうに笑っていた。
実際友達の調子がいつもよりも良いのに越したことはない。
けれど何より嬉しいのは、こうして何事もなく全員集まれたことだった。
「さてと、全員集まったな」
そんな中、Nightは徐に読書を止める。
インベントリの中に読み耽っていた文庫本を放り込むと、スッと立ち上がる。
何かする気だろうか? 事情を知らない雷斬とベルは首を捻る。
「Nightさんどうしたんですか?」
「急に立ち上がってなによ。まさか今からモンスターを狩りに行くの?」
「違う」
「違うんだ。じゃあなにをするの?」
アキラとフェルノは知っているので何事もなく準備を進める。
けれど雷斬とベルは知らないので少し怖がった。
だけど安心して欲しい。アキラとフェルノはそれぞれ雷斬とベルの肩に手を当てる。
「「さっ、行こう。妖帖の雅の所に」」
「「妖帖の? えっ……」」
雷斬とベルは首を捻るを通り越し、声だけで反応する。
ログインして早々モミジヤに向かうこととなり、何が待っているのか気になった。
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