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23.放り出すわけには

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「僕から聞きたいことはこれぐらいだし、お昼ごはんも食べ終わったことだからチョウちゃんに仕事が残っていないのならチョウちゃんの家に行かない?多分、母さんが送っていくれている引っ越しの荷物も届いてることだろうし」

 本来なら県を越えての配送なので、朝向こうを出た荷物がもう届いている、なんてことは普通はないのだけど、あいにくと普通じゃない神頼みなんかを経験したのでもう届いていると確信出来ていた。

「あれ?制服のサイズ合わせとかは聞かなくていいの?」

 チョウちゃんからそういうことを聞いてくる時は、大体やるべきことは終わっているので、僕が聞き返したら嬉しそうに「ホントは出来てまーす」とか言ってくるのだ。

 なので、僕の予想を先に言ってあげる。

「聞かなくても、どうせ母さんから僕のサイズ聞いてもう作ってあるんでしょ?」

 こういう時の母さんは抜かりないので、制服が出来ていないとは思えない。それに、母さんなら僕のサイズを知る機会なんていくらでもあるので、それをチョウちゃんに伝えれば僕のサイズを今測らなくても制服は出来るだろう。

 そして、その予想は正しかったのだろう。言い当てられたチョウちゃんはふくれっ面をしていた。

「そんなことだと思ったよ」

 僕がそう言うと、チョウちゃんは面白くなさそうにさらに頬を膨らませた。

 チョウちゃんが面白そうにしているということは、僕にとっては面倒事に巻き込まれているということなのでこれでいいと思う。

 思うんだけど、このままではいつまで経ってもチョウちゃんの家に行けないということなので、どうにかしてチョウちゃんに機嫌をなおしてもらわないといけないのでやっぱり面倒事ではあった。

「チョウちゃん」

 僕はチョウちゃんのふくれっ面の頬を押し込んで空気を吐き出させる。

「本当ならチョウちゃんのほうから説明しないといけないことなんだからね」
「そうなんだけどさ~。少しくらいノッてくれてもよくない?」

 時間があったらノッてもいいかなとか考えるけど、あいにくと時間に余裕があるわけでもないので今回はノらない。

「よくないよ。届いた荷物の片付けを終えたら色んな人にまたこっちで暮らすっていう挨拶をしないといけないんだら」
「まぁ、それもそうか。あとは、その時のみんなの驚いた反応で楽しむとしよう」

 その言葉を聞いて、ようやくなんで小説町の最寄り駅ではなく新幹線の駅までヒサコさんに迎えにこさせたのか、その理由がようやくわかった。

 チョウちゃんは僕がこっちに戻ってくることを誰にも話しておらず、僕が戻ってきたということをネタに僕の知り合い達にサプライズドッキリを仕掛けようとしているのだ。

 しかし、このサプライズドッキリを失敗させることは簡単だ。

 今、僕がこっち戻ってきたことをラァインでみんなに知らせたらそれだけでこのサプライズドッキリは失敗する。

 だけど、このサプライズドッキリによる被害は僕にはないし、みんなの驚く顔を見てみたいとは思うので、このサプライズドッキリにはノろう。

「僕が戻ってくることをみんなに教えてなかったんだね」
「驚かせたくてね~」

 といいつつも、悪い笑顔をしているチョウちゃん。

 今回はそれにノるので何も言う気はない。

「そうそう。最後に1ついい忘れてたけど」
「まだなにかあるの?」
「この高校に女子が入学してきたのってコウくんが初めてじゃないからね」
「えっ?」

 まさかの言葉に驚いた僕はすぐにヒサコさんを見た。

「えぇ。過去に何人もの女子生徒が入学きてきていて卒業しているという記録がありますね」
「………」

 あまりにも衝撃的な事実に何も言えなくなって驚いていると、チョウちゃんがそんな僕を指さして笑っていた。

「それって学校的にはいいの?問題になるんじゃないの?」

 普通、男子校に女子が通うなんてことはありえないことなのに、それが何度も行われてきたなんて、よく問題にならなかったね、と言いたくなるね。

「元々、この学校の始まりが女子が通える男子校を作る、という計画で作られた男子校だからね。問題になることなんてないんだよ」

 そう言われてから考えてみると、選択式の授業に泊まり行事の部屋割、健康診断の手伝い、透けない制服、全て洋式トイレの個室で自動音姫と、女子が入学してきていいようにするための対策としか思えないモノばかりだった。

「それと、今まで入学してきた女子生徒の中で卒業までに女子だとバレた生徒は1人もいないので、全く問題になっていない。ということもあって、今でもこうして女子を受け入れているのです」
「問題になっていないから受け入れるって、その考えがダメな気がするけど………」

 僕の指摘に気にした様子もなく笑うチョウちゃんと、同じようなことを思っているからこそ苦笑するヒサコさん。

「まぁ、ここに来る女子って大体訳があって来てる子達ばかりだったでしょうから、流石に放り出すわけにはいかなかったんでしょ」

 僕はともかく、この学校に入学してきた他の少女達にはただならぬ理由があって、どうしてもこの学校に入学するしかない、なんて少女達もいたかもしれない。だから、僕が理不尽に入学させられたからといってこの学校のやり方を否定するのは間違っているのだろうね。

「それもそうかもしれないね」

 僕が理解を示すと、チョウちゃんはうんうんと頷いた。

「それじゃあコウくんも納得したようだし、凱旋といこうか!」

 なんて言いながらチョウちゃんはカッコつけて立ち上がった。
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