「その結婚ちょっと待つのじゃー!」ってワシは何を言っているのだろうか?

だらけたい

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4.窓の隙間

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(リム目線)

 ウチはマスターである夕夜様に造られたスライム型アンドロイドのリムっす。

 スライムなのでどんな場所にでも侵入出来て、どんな形にも変化出来るっすから、四季達のような人型やタマやポチのような動物型のアンドロイドでは入れないような場所にでも侵入出来ることが他のアンドロイドにはないウチの特徴であり強みなんすけど、あいにくとその特徴を生かすような場面が造られてこのかた1度もそういった機会がなかったので困ってるんす!

「ウチの強みが!アイデンティティがピンチっす!」

 と嘆いたっすけど、マスターからの指示がない限りは勝手には動けないっすからね。

 なので普段は他のアンドロイド達と同じように人型や動物型になって街中をうろついたりして情報収集をしているっすね。

 そんなある日、ウチは1週間に1度はマスターに会うというアンドロイド達の間にある約束のためマスターに会いに来たっす。

 これは四季からアンドロイド達に提案されたことで、

「よっぽどの緊急事態や用事がある時以外は1週間に1度はマスターに顔を見せるようにしましょう。これは、みんなでマスターの様子を見ることで些細な違和感や調子が悪くないかを確認して情報を共有していくための行為であると同時に、私達がちゃんと動いているということをマスターに報告するための行動でもあるので、くれぐれも忘れずに行ってください」

 という意味がある行動っす。

 この提案にはアンドロイド達全員が賛同してるっすから、基本マスターの元には常に誰かしらが顔見せをしているっすね。

 もちろん仕事中やプライベートで遊んでいる最中とかはちゃんとわきまえて会いに行くことはないっすよ。

 そういうことで会いに来たんすけど、マスターが何か隠し事をしてるっすね。

 会って一目見ただけでわかったっす。

 マスターは仕事中の隠し事は表情に出ないんすけど、なぜかプライベートのことに関しての隠し事はわかりやすいくらいに表情に出るんすよね。

 まぁ、そこがマスターのカワイイところっすけど。

 とはいえ、あの表情は悪いことや後ろめたいことをしている時の表情じゃないっすし、アンドロイド達が持つ情報交換機能のチャットチャンネルに何も情報が上がっていないということは、隠し事についてマスターに聞くことはせずに見守ろうということっすから、ウチも聞かないで見守るだけにするっす。

 というわけで、マスターへの顔見せを終えたウチは四季の元にやってきたっす。

「あら、リム。どうかしましたか?」
「マスターのことは見守ることにしてるみたいっすけど、情報ぐらいは集めているんすよね?」
「えぇ。もちろんです」

 そう言って四季は1枚の紙を見せてきたっす。

「ふむっす」

 四季から渡された紙には、マスターが何かを思いついて計画し始めたのが3日前で、その翌日にはスーラリアン領で店舗として使えるタイプの建物を購入して、それから毎日スーラリアン領に行っていた、ということが書いてあったっす。

「なるほどっす。つまり、マスターは何らかのお店を始めようとしている、ということっすか?」
「それはまだわからないわ」
「どうしてっすか?」
「店舗に使えるとはいってもかなり狭い店舗だから、物を置いて販売とかはしにくいのですよ」
「じゃあ2階があるっすから、その場で注文を受けて2階で作って売るって感じなんすかね?」
「そういう売り方をするのでしたら、もう少し大きな平屋の店舗を買って、奥で作業したほうが楽ではないですか?」
「それもそうっすね」

 それなら、マスターは一体この建物で何をしようとしてるんすかね。

 そんな考えをめぐさせていると、扉がノックされたっす。

「はい」
「シナリです」
「どうぞ」
「失礼します」

 入ってきたシナリはすぐにウチにも気づいたっす。

 シナリとはまだ商会が行商だった時にマスターが助けた子供の1人で、ウチともその頃からの付き合いなので、スライム姿のウチが居ても驚くことはないっすね。

「リムさんもいらしていたのですね」
「今日はマスターに顔見せしに来てたっすからね」
「そうなんですね」

 軽く言葉を交わしたシナリは、四季の元へ行くと紙を1枚渡したっす。

「今日の売り上げの集計表です」
「ありがとう、シナリ」

 そういえば、助けた子供達の多くが商会の手伝いをしてくれているっすが、その中でもシナリの飲み込みは早くて今では商会の会計も手伝ってもらってるって夏が言ってたっすね。

「それともう1つ報告なんですが」
「なに?」
「四季さん達ならすでに気づいていると思いますけど、夕夜が何かしようとしているのは放置していていいのですか?」
「ふふ」
「ぷははははっ!」
「えっ?えっ?」

 シナリは驚きと戸惑いが交じるような表情でウチと四季を交互に見てるっす。

 まぁ、いきなりウチらが笑えばそういう反応になっても仕方ないっすね。

「ごめんっす。いや、ウチがマスターに会うついでにここに来たのもシナリが気になったことと同じことを四季に聞きに来ようと思ったからだったっすからね」
「その直後にシナリが聞きに来たからつい笑ってしまったわ」
「そうだったのですね」

 ウチらの説明に納得したシナリがホッとしているっす。

「それで、放置でいいのですか?」
「えぇ、特に問題はないし、放置でいいわよ」

 四季から貰った情報を見る限りでは、ウチも放置でいいと思ったっすから頷いたっす。

「わかりました。他の気づいている人達にもそう伝えておきます」
「やっぱりシナリ以外にも気づいてるのね」
「はい。夕夜とよく会う人達はみんな気づいてますね」

 やっぱりプライベートの時のマスターの隠し事はわかりやすいっすよね。

 1週間ぶりにあったウチでもわかるんすから、普段商会でよく会う人達がわからないはずがないっすよね。

「でも、仕事での隠し事はウチらでもわからないくらい見事に隠し通すのに、プライベートになるとシナリ達にすらわかられるくらい隠し事が下手なのはどうなんすかね」
「それもそうね」
「そうですよね」

 顔を見合わせるとウチらは笑いあったっす。

 そんな会話があったのが一昨日のことっす。

 そして今日っす。

 マスターがいつも以上にウキウキしながらスーラリアン領に向かったっすから、お店の方に進展があったようっすね。

 シナリには放置するとは言ったんすが、何も確認もせずに放置というわけにはいかないっすね。

 もしも何も確認してなかってマスターがトラブルに巻き込まれた時に、ウチらが対応出来なければマズいっすからね。

 そういうわけで、アンドロイド達を代表して四季と春とウチがどんなお店なのか確認しに行くことになってお店に行ったんすけど、まさかよろず屋というなんでも屋だったとは意外だったっすね。

 しかも、四季と春が入った時に、

「のんびり出来ると思ったのに」

 と言っていたっすから、お金欲しさにお店をやり始めたわけではなく、1人でのんびり出来る時間が欲しくてやり始めたお店みたいっすね。

 さっきも言ったっすけど、ウチらのうちの誰かが必ずマスターのところに顔見せしに来るっすし、そうじゃなくても休日のマスターのところには誰かしらの来訪者がやって来るっすから、のんびり出来る時間がないというのも理解出来るっす。

 その結果がお店を作るということは理解出来ないっすけど。

 しかし、そんなお店に早速お客が入ってきた時のマスターの驚きようはなかなかのものだったすね。

 その後、そのお客のシバルがこのお店に入ってきた理由が四季と春が悪目立ちしたせいだったと聞いた時には、表情には出さなかったんすけど、四季と春は内心かなり焦ってたっすね。

 そうしてシバルの依頼を聞いていくうちに、ウチは「もしかして!」と期待に胸を高鳴らせ、そしてシバルが帰った後にマスターに名前を呼ばれた時はもうウッキウキで出ていき、イビラチャの屋敷の調査を頼まれた時は内心ガッツポーズをしたっすね!

 だってようやくきたウチの特徴を活かせる仕事っすからね。

 しかし、喜んでいるところをマスターに見せるわけにもいかないっすから、今は嬉しい気持ちを抑えて2階に上がり、そこでようやくガッツポーズをしたっすね!

 さて、喜ぶのもそこそこにして、ようやくきたウチの特徴を活かせる仕事も失敗しては意味がないっすから、ここからは気合いを入れて行くっすよ!

 まずはイビラチャの屋敷に潜入しないといけないっすから、2階の窓の隙間から外に出て屋根に登るっす。

 そして鳥に擬態するっす。

 猫や犬に擬態して地上から行ってもいいんすけど、イビラチャの屋敷ということは領主の屋敷ということっすから塀から屋敷までそれなりに距離があるっすし、マスターはシャルフィムは2階に居る確率が高いと言ってたっすし、鳥に擬態して屋敷の屋根に降り立った方が移動も早いし侵入もしやすくて楽なんすよね。

 というわけで鳥の姿で飛び立ち、イビラチャの屋敷へ向かったっす。
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