「その結婚ちょっと待つのじゃー!」ってワシは何を言っているのだろうか?

だらけたい

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20.秋の音頭

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「どういうことじゃ?」

 宴会の準備がされている様子を見ながらワシはリムに問いかけたのじゃよ。

「見ての通り宴会の準備をしてるっすね」
「それは見ればわかるのじゃが、なぜ宴会なのにステージが組まれている上に『よろず屋初仕事おめでとう!』なんて幕があるのかを聞きたいのじゃよ」
「なんでって………」

 黙り込んだリムは静かにワシの肩から降りるとポヨンポヨンと跳ねてどっかに行ってしまったのじゃよ。

「リムよ!なぜ逃げるのじゃ!?理由を知っておるなら戻ってきて説明せい!」
「あ、夕夜さんおかえりなさい」
「ババラザナ、ただいまなのじゃが、この宴会はどういうことじゃ?」

 宴会について聞いた瞬間にババラザナはそそくさと離れていった。

「もうちょっとで段取り出来るからちょっと待っててね、夕夜」
「待つもなにもこの宴会はなんなのじゃ?シラル」

 しかし、シラルは答えることなくやっぱりそそくさと立ち去っていくだけじゃった。

「誰かなにか答えてくれぬか!」

 しかし、なぜかみんなはワシの近くから離れていくだけで何も答えてはくれなかった。

「四季!四季はどこじゃ!」

 これだけ大規模な宴会となれば確実に指揮を取っているのは四季じゃろう。

 ダジャレ?なんて言われた気がするが、あいにくとそんなつもりも、言う余裕もどこにもないのじゃよ!

「四季!」

 しかし、いくら呼んでも四季は来ないのじゃよ。

 普段なら呼べばすぐ来るし、呼ばなくても勝手にやって来るくせにこういう時だけはなぜ来ないのじゃ!

「まぁまぁ。落ち着けって夕夜」
「そうそう。叫んだって何も解決しないだろ」

 そう言いながら肩を組んできた男2人はソゾシイとトラブーカーじゃった。

 また何も知らなそうなうるさい2人がやってきたの。

 さて、この2人の名前じゃが、違和感というか、何か他の言葉に近いと思った者はおるかの?

 ワシは2人の名前を聞いた瞬間にソゾシイはソとゾのあとにウを入れると騒々しいになり、トラブーカーはブの後にルメを入れるとトラブルメーカーになると思ったの。

 そして、2人はその変化した言葉通りの騒々しさとトラブルメーカーだったりするのじゃよ。

 まぁ、根はいい奴らなのじゃがの。

「そうじゃの。何も知らぬお主らに向かって叫んでも何も分からんじゃろうな」
「そうそう。俺達に向かって叫んでも何も分からないぞ」
「なんたって俺達も準備が始まった時点で、邪魔だからどっかいけ、って言われて追っ払われたからな」

 そう言われるのも仕方ないじゃろうな。

 ワシが準備する側じゃったらこの2人には「どっかいっておるのじゃ」と言ったじゃろうからの。

 それだけこの2人は邪魔にしかならんのじゃよ。

「というわけで、準備が終わるまで俺達と話でもしようぜ」
「そうそう。最近はこうしてゆっくり話す機会もなかったんだしさ」
「それもそうじゃの」

 確かにここ最近はこの2人とは会っていなかったので、こうしてゆっくり話す機会なんてなかったのじゃよ。

 それなら、

「ゆっくりと話をするかの」
「って!なんでそう言いながら拳をポキポキ鳴らしているんだよ!」
「それが話をしようとする人間の行動か!?」
「大丈夫じゃよ。しっかりと肉体言語ことば殴りはなし合うのじゃよ」
「絶対言葉と意味が違うよな!」
「絶対話し合うつもりないだろ!」
「グダグダうるさいの」

 ワシはソゾシイの腹には蹴りを、トラブーカーの顔には拳を打ち込んだのじゃが、2人共しっかりと反応して受け止めたのじゃよ。

「ふむ。よい反応じゃの」
「やっぱり話し合いじゃねーじゃん!」
「なんで唐突に殴られないといけないんだよ!」
「狩人ならばこれぐらいは余裕じゃろうに」

 2人は普段から森に入って獲物を狩る狩人であり、スキルも戦闘系なので、ワシより戦闘経験は豊富なのじゃよ。

「余裕だからやっていい、とは違うだろ!」
「もっと普通に話そうぜ!」
「普通に、の」

 ワシはトラブーカーがガードした腕を掴んで持ち上げようとしたのじゃが、トラブーカーはそうはさせまいと力を入れて腕を下げようとしたのでその力を使ってワシはあっさりとトラブーカーをソゾシイの方へ投げ飛ばしたのじゃよ。

「おわっ!」
「くっ!」

 ソゾシイは咄嗟に右に移動することでトラブーカーを避けたが、避けた方向からワシの足払いが待ち構えておったので、ソゾシイは足を払われてあっさりとコケて尻もちをついたのじゃよ。

「ワシにこうも簡単にいいようにされるとは、まだまだじゃの」

 生産系のスキルしか持たないワシにこうもいいようにされるとは、情けなくも思えてくるの。

「いや!夕夜に勝てる人間がこの島に何人いると思っている!」
「両手あれば足りるくらいしかいないんだからな!」
「もちろんその中に俺達は入ってないし!」
「いいようにされるのは当たり前だろ!」
「そんなに少ないわけがなかろう」

 さっきも言ったがワシは生産系のスキルしか持っておらん。

 ゆえに普通に戦えば戦闘系のスキルを持つ人間に勝てるなんてことは万が一にもないのじゃ。

 じゃからこそ、ワシに勝てる人間が両手で足りるはずがないのじゃよ。

「いやいやいや!」
「今の夕夜はおもいっきり魔道具装備しまわってるじゃねーか!」
「そのフル装備状態の夕夜に勝てる人間なんてホントに両手いかないだろ!」

 確かにワシの服や靴や装飾品は全て魔道具じゃ。

 それはもちろん護身のためじゃ。

 しかしじゃ。

「確かにフル装備ではあるが、魔道具だって常に使用しておるわけではないのじゃよ。そして、今は1つも使用しておらんからお主らでも勝とうと思えば勝てるはずじゃぞ」

 魔道具を使用するには事前に魔力をチャージしておくか、使用するたびに自分で魔力を込める必要があるのじゃが、チャージしておける魔力も自分の魔力にも限界というものがあるので、ずっと使用し続けるということは出来ないのじゃよ。

「なら!」
「やってやるよ!」

 というわけで、かかってくる2人をあしらいながら準備が出来るのを待っておったので、ストレス発散になってイライラも収まったのじゃよ。

 多分、それを見越して四季あたりが2人をワシのところに寄越したのじゃろうな。

 そうして何度も転がされているうちに2人が屍のように起き上がれなくなった頃に、

「マスター。準備が出来ましたので舞台へどうぞ」

 四季がやって来たのじゃよ。

 なるほどの。

 うるさい2人を疲弊させることも計画のうちということかの。

「まずは、この状況を説明せい」
「簡潔に言えば、マスターのせいで披露宴がなくなったため、そこで出すはずだった食材を無駄にしないための宴会ですね」

 披露宴が無くなったのはワシのせいではなくて依頼してきたシバルのせいじゃろ。

「それにしては、料理の量が凄くないかの?」

 150人前ではない量の料理が所せましと並べられておる。

「それは全員参加の宴会ですから」
「確かにの。それは納得したのじゃが、あの幕はなんじゃ?」
「そのままの意味ですが?」
「別に祝うほどのものじゃないじゃろうが」

 そもそも依頼すら受けるつもりもなかったはずなのじゃがの。

 本当にどうしてこうなってしまったのじゃろうな。

「初仕事の成功なんですし、祝うだけのことですよ」
「ただ宴会する理由にしたいだけじゃろ?」

 これも前に、かなり前に言ったじゃろうが、騒ぐことが好きな人が多いからなにかにつけて宴会をしたりするのじゃよ。

 じゃから、今回もそういうことじゃろう。

「もう。マスターがグダグダ言っていっこうに舞台に上がろうとしないので」

 ワシが悪い風に言われるのは釈然とせんが、四季の言葉を待っていたであろう秋が舞台へと上がっていったのじゃよ。

「では、マスターの代わりに私が。
 よろず屋の初仕事の成功とシーズン商会の難しい依頼の達成と、シバルとシャルフィムの新しい門出に、乾杯!」
『乾杯!!!』

 秋の音頭で始まった宴会なのじゃが、乾杯の音頭については言いたいことがあるの。

 よろず屋の初仕事もシーズン商会の難しい依頼についてもその通りじゃからよい。

 シバルもシャルフィムも確かに新しい門出ではあるのじゃよ。

 シバルにとっては難しい門出ではあるじゃろうが、新たな村での生活が始まったということでは新たな門出というのは間違ってはおらぬ。

 おらぬのじゃが、

「シバルとシャルフィムのおらぬところで2人の門出を祝うのはおかしいじゃろうが!」

 そう叫ぶも、ワシの叫びなど宴会の騒ぎ声にかき消されて消えていったのじゃった。
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