聖女代行役

画鋲

文字の大きさ
4 / 5

4.

しおりを挟む
聖女代行役、それは人間としての尊厳を全て失い、聖女のために聖女の身代わりとして働く人間のことを指す。

聖女代行役に課される使命はたったひとつ


『すべては聖女様のために』のみである。


この言葉は、聖女代行役を縛る強力な鎖である。


この世界の守り神セレミアムが自分の身代わりとして生み落とす時、ただ一つ聖女は必ずし幸せでなければならないという使命を聖女に課した。


だが、セレニアムによって生み落とされる聖女はもとは別の世界の人間。そして、その世界と分離されてこの世界に召喚される。

別の世界のと別れをできるわけでもなく、突如この世界へと召喚されてしまう聖女の気持ちは容易に察することができるだろう。

初代聖女はその悲しみに耐えれなかった。それで、世界が乱れた。聖女の力の効力が切れてしまったからだ。世界の平穏は乱され、絶望が訪れた。


そこで、この世界の王は自分の息子に聖女の寂しさを無くすために人事を尽くせと命令を出した。

当時の王の息子すなわち王子には相思相愛の婚約者がいた。だが、王子がそれまで婚約者にかけていた時間をすべて聖女にかけたために婚約者に不徳を疑われ破局。

その甲斐があってかは分からないけど、聖女は着実に元気になっていき笑顔になっていった。

聖女は自分が一番心が悲しみに沈んでいた時に優しくしてくれた王子に惚れて、王は聖女の気持ちを叶えるべく王子と聖女が婚約し、王妃となった聖女と王となった王子が作り上げる世界はずっと幸せで豊かな世界になった。。


そして、二代目聖女が召喚されたときその聖女は悲しみに暮れることはなくそれどころか歓喜の表情さへしていた。

だが、彼女は聖女としての公務に耐えれずずっと聖女の部屋として王宮に用意された一室に立てこもってしまった。聖女は今では幸せであるだけで世界を安定させられると思われているが、本来は違い、聖女にも公務があった。


聖女は人々に癒しを与える存在であり、戦場や孤児院、被災地などに訪れて癒しをあたえる公務がある。

それがないと、けがをした騎士たちは助からず戦力は減ってしまい敗戦が増え、孤児院では感染病の子供が出ると医者に診てもらうお金がないためその孤児院にいる子供たちが全員感染病にかかりそこの孤児院はつぶれ、被災地は復興のめどが立たなくなる。


だから、王は神殿に新たな少女を召喚させた。聖女と同じ異世界人の少女には王の見立て通り同じような魔力が宿っており、その少女を聖女の身代わりとして使おうとした。

だが、その少女も聖女と同じくまったく知らない世界に急に連れてこられ、いいように利用されることに反発した。
だから、王と神殿の人間はその少女にこの世界で禁忌とされている人の神経に作用する魔術を行使して聖女代わりにすべてを行う聖女代行役をつくった。

そして、二代目の聖女も聖女代行役のおかげで幸せに暮らし、その後も聖女代行役を毎回作ることで世界の安定を目指した。

その後、聖女代行役にかける魔術を何度も改良し最終的に、

『すべては聖女様のために』を使命とした、完全な聖女代行役が完成した。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

社畜聖女

碧井 汐桜香
ファンタジー
この国の聖女ルリーは、元孤児だ。 そんなルリーに他の聖女たちが仕事を押し付けている、という噂が流れて。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

処理中です...