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◇第2章◇優しくて泣き虫なひと
17 夕陽と横顔
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律が連れてきたのは海だった。
電車を降りてから海水浴場への道のりは少し遠く、照りつける陽射しに辟易しながら2人で歩いた。
律が海の家でビーチサンダルを買ってくれたのでそれに履き替え、スニーカーを持ちながら海へ近付いていく。
夏休みだから、結構な賑わいだ。
家族連れや恋人同士、グループで来ている人もたくさんいたけど、男2人だけで来ている人はなかなかいない。
いたとしても、ナンパが目的の派手な2人組で、僕らみたいに地味めな男2人はいなかった。
僕は重たいリュックを脱ぎ捨てて、波打ち際に足を入れて遠くを見た。
目が痛くなるほど鮮やかな青。
海原はゆったりと盛り上がっていき、白波がざぶんと砕けて、炭酸水がパチパチと弾けるような音がする。
肌に触れた塩水は気持ちよくて、思わず唸ってしまった。
「冷たくて気持ちいいー」
律も同じように、サンダルのまま足を入れた。
次の波もまた、同じように耐えきれなくなってざぶんと崩れ、僕らのほうへやってくる。波は何度でもやってくるけど、ひとつとして同じ形の波はない。
「日焼け止め塗っておけば良かったな」
「今から塗ればいいじゃん。売店に置いてない?」
「もう今更だから、この際焼くことにします」
律は困ったように笑って言うので、僕も釣られて笑ってしまった。
プールに一緒に行ってた時、律は日焼け止めをちゃんと塗っていたのかな。
そんな素振り見たことなかったけど、いつも口酸っぱく「チーの肌は赤くなりやすいんだからちゃんと塗っときなさい」と言われていた。
言われても塗らなかったけどね、律に叱られるのが楽しかったから。
波で遊ぶのに飽きたら、木陰でひたすら海を眺めた。
律がかき氷を買ってきてくれたのでありがたく頂く。
僕は昔からずっといちご味。律はメロン味。
赤く色付いた舌を律に見せて笑わせて、また何も言わずに水平線を眺めた。きらきらと水面が反射していた。
日が沈むにつれて、徐々に人の姿が減っていき、とうとう僕と律の2人だけになった。
あんなに太陽が眩しくて暑かったのに、少し肌寒く感じた。
帰らなくちゃいけない。
そう思うと、やはり足がビスで固定されたみたいにうまく動かない。
けれど甘えていたらダメだ。
律はせっかく、僕をここまで連れてきてくれたんだから。
無理やり笑顔を作ったその時、隣からシャッター音がした。
どうやら律が、スマホで僕のことを撮ったらしい。
「何勝手に撮ってんの」
「なんだか、その顔を記録に残しておかないと後悔しそうだと思って」
「はぁー? 何それ」
「最近写真撮るのが好きで、一眼レフ買いたくて貯金してるんです」
「へぇーそうなんだ……って、だからって僕の変な横顔撮らないでよ」
きっと疲れ果てて泣きそうな顔をした情けない男が写っている気がする。
どうにか消去してほしいのに、律は全くスマホをこちらに寄越さないからもう諦めた。
くすくすと不敵に笑う律。
まぁでも、このやり取りで気持ちの整理がつけられた気がする。
「帰ろっか」
勢いを付けて、ぴょんと飛び跳ねて立ってみた。
あ、意外と大丈夫じゃん、僕。
だが重たいリュックを背負おうとしたら、律にそれを奪われた。
「まだいいでしょう」
なぜかふふんと悪戯っぽく笑ったあと、律はいつの間にか履き替えていたスニーカーで駅の方へ歩き出してしまった。
僕はポカンとしながらも、とりあえずビーチサンダルを脱いで後を追う。
駅の反対口にやってくると、そこには民宿が何軒かあった。
結構年季の入った看板の明かりで煌々としている。
旅館と言うより普通の一軒家のようなそこに、律は迷うことなく入っていった。
電車を降りてから海水浴場への道のりは少し遠く、照りつける陽射しに辟易しながら2人で歩いた。
律が海の家でビーチサンダルを買ってくれたのでそれに履き替え、スニーカーを持ちながら海へ近付いていく。
夏休みだから、結構な賑わいだ。
家族連れや恋人同士、グループで来ている人もたくさんいたけど、男2人だけで来ている人はなかなかいない。
いたとしても、ナンパが目的の派手な2人組で、僕らみたいに地味めな男2人はいなかった。
僕は重たいリュックを脱ぎ捨てて、波打ち際に足を入れて遠くを見た。
目が痛くなるほど鮮やかな青。
海原はゆったりと盛り上がっていき、白波がざぶんと砕けて、炭酸水がパチパチと弾けるような音がする。
肌に触れた塩水は気持ちよくて、思わず唸ってしまった。
「冷たくて気持ちいいー」
律も同じように、サンダルのまま足を入れた。
次の波もまた、同じように耐えきれなくなってざぶんと崩れ、僕らのほうへやってくる。波は何度でもやってくるけど、ひとつとして同じ形の波はない。
「日焼け止め塗っておけば良かったな」
「今から塗ればいいじゃん。売店に置いてない?」
「もう今更だから、この際焼くことにします」
律は困ったように笑って言うので、僕も釣られて笑ってしまった。
プールに一緒に行ってた時、律は日焼け止めをちゃんと塗っていたのかな。
そんな素振り見たことなかったけど、いつも口酸っぱく「チーの肌は赤くなりやすいんだからちゃんと塗っときなさい」と言われていた。
言われても塗らなかったけどね、律に叱られるのが楽しかったから。
波で遊ぶのに飽きたら、木陰でひたすら海を眺めた。
律がかき氷を買ってきてくれたのでありがたく頂く。
僕は昔からずっといちご味。律はメロン味。
赤く色付いた舌を律に見せて笑わせて、また何も言わずに水平線を眺めた。きらきらと水面が反射していた。
日が沈むにつれて、徐々に人の姿が減っていき、とうとう僕と律の2人だけになった。
あんなに太陽が眩しくて暑かったのに、少し肌寒く感じた。
帰らなくちゃいけない。
そう思うと、やはり足がビスで固定されたみたいにうまく動かない。
けれど甘えていたらダメだ。
律はせっかく、僕をここまで連れてきてくれたんだから。
無理やり笑顔を作ったその時、隣からシャッター音がした。
どうやら律が、スマホで僕のことを撮ったらしい。
「何勝手に撮ってんの」
「なんだか、その顔を記録に残しておかないと後悔しそうだと思って」
「はぁー? 何それ」
「最近写真撮るのが好きで、一眼レフ買いたくて貯金してるんです」
「へぇーそうなんだ……って、だからって僕の変な横顔撮らないでよ」
きっと疲れ果てて泣きそうな顔をした情けない男が写っている気がする。
どうにか消去してほしいのに、律は全くスマホをこちらに寄越さないからもう諦めた。
くすくすと不敵に笑う律。
まぁでも、このやり取りで気持ちの整理がつけられた気がする。
「帰ろっか」
勢いを付けて、ぴょんと飛び跳ねて立ってみた。
あ、意外と大丈夫じゃん、僕。
だが重たいリュックを背負おうとしたら、律にそれを奪われた。
「まだいいでしょう」
なぜかふふんと悪戯っぽく笑ったあと、律はいつの間にか履き替えていたスニーカーで駅の方へ歩き出してしまった。
僕はポカンとしながらも、とりあえずビーチサンダルを脱いで後を追う。
駅の反対口にやってくると、そこには民宿が何軒かあった。
結構年季の入った看板の明かりで煌々としている。
旅館と言うより普通の一軒家のようなそこに、律は迷うことなく入っていった。
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