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◇第3章◇優しくて明るいひと
34 素晴
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会って謝る。
そんなの怖くて出来るわけない。
「無理だよ、相手がいま何処で何してるのかも知らないし」
「けれど名前くらいは覚えているでしょう。検索をかければすぐに特定できるかもしれませんよ」
「も、もしそれで見つかって、いきなり謝っても相手は困惑すると思うんだけど」
「けれど君は未だにそのことに捕らわれているんでしょう? 現に、こうして具合が悪くなってる」
「う……でも、謝るだなんて自己満じゃん……」
「自己満でも、相手を困らせても、会うことで少しでも未来が変わるならそれでいいじゃないですか。大事なのは今、何をするかですよ」
「……」
どうにか逃げ道を探すが、律の真っ直ぐな視線から逃れることができない。
腹をくくった僕は上半身をゆっくりと起こした。
貧血症状は話している間にほとんど消えていた。
「じゃあ、検索かけてみる」
どうかヒットしないでくれ、と少し思いながら相手のフルネームをスマホで打ち込むと、1番上にSNSのページが出てきた。
プロフィール欄には出身地と出身校が書かれていて、それは僕の記憶通りだった。
もっと辿っていくと、本人が映っている写真が出てきた。
それが決定打になり、ものの数分で特定できてしまった。
「……この人」
呆気に取られながら律にページを見せると、うん、と満足気に頷かれた。
「連絡してみましょう」
勢いというのは恐ろしい。
数日後、僕はその彼と待ち合わせすることになった。
あれから律に促されるままにメールを送るとすぐに返信があり、互いの近況報告をした後で「良ければ今度会おうよ」と誘ってくれたので、勢いのまま約束をした。
特別仲良くしていたわけでもなかった自分と会おうとしてくれているのにもビックリだが、今現在、僕の最寄り駅から電車で10分以内で着く距離に住んでいることにも驚いた。
早めにカフェに到着していた僕はすでに冷めきったコーヒーを少しずつ飲んでいた。
本当に謝れるだろうか。
あともう少しで彼が来る……。
顔を強ばらせながら無意識にテーブルをおしぼりで拭いていると、向かいの席に男の人が腰を下ろした。
「千紘くんだよね! 久しぶりー」
「あ……」
「ごめんね、待った? 早めに来たつもりだったんだけど」
「う、ううん、僕が早く着き過ぎたから、のんびり待ってたんだ」
「そっかー、なら良かった」
にこーっと人懐こい笑みを浮かべるのは、素晴くん。高1の秋まで同じ塾に通っていた仲だ。
髪は蜂蜜みたいに明るい茶髪で、くっきりとした二重でおおきな瞳が特徴的な彼は、単純に同級生に会えたことを喜んでいるみたいだ。
緊張で戸惑う僕とは対照的に、素晴くんは鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気で飲み物を頼んだ。
そういえばこんな感じだった。
誰にでも分け隔てなく平等に接するし、いつも笑顔を絶やさない。
僕から話しかけたことはほとんど無かったのに、何度か話しかけられたことがあった。
あの日も、そうだった。
そんなの怖くて出来るわけない。
「無理だよ、相手がいま何処で何してるのかも知らないし」
「けれど名前くらいは覚えているでしょう。検索をかければすぐに特定できるかもしれませんよ」
「も、もしそれで見つかって、いきなり謝っても相手は困惑すると思うんだけど」
「けれど君は未だにそのことに捕らわれているんでしょう? 現に、こうして具合が悪くなってる」
「う……でも、謝るだなんて自己満じゃん……」
「自己満でも、相手を困らせても、会うことで少しでも未来が変わるならそれでいいじゃないですか。大事なのは今、何をするかですよ」
「……」
どうにか逃げ道を探すが、律の真っ直ぐな視線から逃れることができない。
腹をくくった僕は上半身をゆっくりと起こした。
貧血症状は話している間にほとんど消えていた。
「じゃあ、検索かけてみる」
どうかヒットしないでくれ、と少し思いながら相手のフルネームをスマホで打ち込むと、1番上にSNSのページが出てきた。
プロフィール欄には出身地と出身校が書かれていて、それは僕の記憶通りだった。
もっと辿っていくと、本人が映っている写真が出てきた。
それが決定打になり、ものの数分で特定できてしまった。
「……この人」
呆気に取られながら律にページを見せると、うん、と満足気に頷かれた。
「連絡してみましょう」
勢いというのは恐ろしい。
数日後、僕はその彼と待ち合わせすることになった。
あれから律に促されるままにメールを送るとすぐに返信があり、互いの近況報告をした後で「良ければ今度会おうよ」と誘ってくれたので、勢いのまま約束をした。
特別仲良くしていたわけでもなかった自分と会おうとしてくれているのにもビックリだが、今現在、僕の最寄り駅から電車で10分以内で着く距離に住んでいることにも驚いた。
早めにカフェに到着していた僕はすでに冷めきったコーヒーを少しずつ飲んでいた。
本当に謝れるだろうか。
あともう少しで彼が来る……。
顔を強ばらせながら無意識にテーブルをおしぼりで拭いていると、向かいの席に男の人が腰を下ろした。
「千紘くんだよね! 久しぶりー」
「あ……」
「ごめんね、待った? 早めに来たつもりだったんだけど」
「う、ううん、僕が早く着き過ぎたから、のんびり待ってたんだ」
「そっかー、なら良かった」
にこーっと人懐こい笑みを浮かべるのは、素晴くん。高1の秋まで同じ塾に通っていた仲だ。
髪は蜂蜜みたいに明るい茶髪で、くっきりとした二重でおおきな瞳が特徴的な彼は、単純に同級生に会えたことを喜んでいるみたいだ。
緊張で戸惑う僕とは対照的に、素晴くんは鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気で飲み物を頼んだ。
そういえばこんな感じだった。
誰にでも分け隔てなく平等に接するし、いつも笑顔を絶やさない。
僕から話しかけたことはほとんど無かったのに、何度か話しかけられたことがあった。
あの日も、そうだった。
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