42 / 90
◇第4章◇優しくて意地悪なひと
42 いじめたくなる
しおりを挟む
「あ、すみません。嫌でしたよね」
律は察したように手を離した。
僕の手を掴んだのは無意識だったのだろうか。
チーは別の方を見ている。
ううん、と僕はポットを置いて、何でもないように振る舞った。
「嫌じゃないよ。最近、除菌する回数も減ってきたんだ。今日家に上がる時だってジェルを使わなかったでしょ?」
「確かに、テーブルを拭く回数も減ってきましたね」
「だから大丈夫なんだよ。律に、触られても」
すごーく意味深に言ったつもりだけど、「そうですか」と笑顔でかわされてしまった。
キッチンから出ていった律の背中に視線を送る。
律は僕を喜ばせるのが本当に上手だ。
今日はなるべく手を除菌しないでおこう。
触れられた手の甲を片手で摩ってから、カップにコーヒーを注いで律に出した。
ひと手間かけたハンドドリップはとっても美味しい。
何より、律が満足そうな顔をしているのが嬉しい。
僕はどうでもいいから、律に喜んでもらいたいという気持ちが強い。
2人で並んでテレビを観ていたら、オススメの人気デートスポットの特集が流れてきた。
ここからさほど遠くない場所に新しくプラネタリウムがオープンしたらしい。
ソファーに寝転がって見る無数の星々はきっと綺麗だろう。暗いから、こっそりキスなんかも出来る。
もう師走だ。
街は目に痛いくらいのイルミネーションが施され、大通りは幸せそうな人たちで溢れている。
僕もできれば仲間入りしたい。
なんとなくテレビを見続けていると、プラネタリウムを見たカップルのインタビュー映像が流れた。
めちゃくちゃ綺麗でしたよー、と照れくさそうに答える彼女を暖かく見守っている隣の彼氏を見て、純粋に羨ましいなと思った。
僕はチラッと律を横目で見る。
テレビをただ見つめながらコーヒーを時折口にする律は何を考えているのか分からない。
好きな人を誘ってみようかな、とか思ってるんだろうか。
「律、好きな人とは順調?」
律は、けほ、と小さく咳払いする。
「聞いてどうするんですか」
「だって、こういう所に行きたいなって、今思ってたんでしょ?」
「……さぁ」
涼し気な顔で返されてイラッとくる。図星か。
あーあ、とつまらない気持ちになって、そして嫉妬心からいじめてやりたくなる僕は狭量なひとなのかな。
「誘わないの? 最近僕と会ってることが多いけど、その人とはご飯とか行ってないんじゃない?」
「千紘には関係のないことでしょう」
「ないけどさぁー、ちゃんとアピールしとかないと誰かに取られちゃうんじゃない? 大丈夫?」
「そうですね、はいご馳走様」
立ち上がって向こうに行った律に向かって、内心あかんべーをする。
都合悪い話になるとすぐに逃げるんだから。
いつか絶対に本音を聞き出してやる。
そんな時に、家のインターホンが鳴った。
律がモニターを確認する。
誰が写っているかはここからじゃ見えないが、律が嫌そうに、うわ、と小さく漏らした声は聞き取れた。
宅配業者から荷物がたくさん運ばれてきたのかな、と思案しているうちに律が通話ボタンを押す。
すると随分と陽気な男の声が、小さなモニターを通じて僕の耳まで届いた。
『やっほぉぉ律ー! 来ちゃったー!』
律は察したように手を離した。
僕の手を掴んだのは無意識だったのだろうか。
チーは別の方を見ている。
ううん、と僕はポットを置いて、何でもないように振る舞った。
「嫌じゃないよ。最近、除菌する回数も減ってきたんだ。今日家に上がる時だってジェルを使わなかったでしょ?」
「確かに、テーブルを拭く回数も減ってきましたね」
「だから大丈夫なんだよ。律に、触られても」
すごーく意味深に言ったつもりだけど、「そうですか」と笑顔でかわされてしまった。
キッチンから出ていった律の背中に視線を送る。
律は僕を喜ばせるのが本当に上手だ。
今日はなるべく手を除菌しないでおこう。
触れられた手の甲を片手で摩ってから、カップにコーヒーを注いで律に出した。
ひと手間かけたハンドドリップはとっても美味しい。
何より、律が満足そうな顔をしているのが嬉しい。
僕はどうでもいいから、律に喜んでもらいたいという気持ちが強い。
2人で並んでテレビを観ていたら、オススメの人気デートスポットの特集が流れてきた。
ここからさほど遠くない場所に新しくプラネタリウムがオープンしたらしい。
ソファーに寝転がって見る無数の星々はきっと綺麗だろう。暗いから、こっそりキスなんかも出来る。
もう師走だ。
街は目に痛いくらいのイルミネーションが施され、大通りは幸せそうな人たちで溢れている。
僕もできれば仲間入りしたい。
なんとなくテレビを見続けていると、プラネタリウムを見たカップルのインタビュー映像が流れた。
めちゃくちゃ綺麗でしたよー、と照れくさそうに答える彼女を暖かく見守っている隣の彼氏を見て、純粋に羨ましいなと思った。
僕はチラッと律を横目で見る。
テレビをただ見つめながらコーヒーを時折口にする律は何を考えているのか分からない。
好きな人を誘ってみようかな、とか思ってるんだろうか。
「律、好きな人とは順調?」
律は、けほ、と小さく咳払いする。
「聞いてどうするんですか」
「だって、こういう所に行きたいなって、今思ってたんでしょ?」
「……さぁ」
涼し気な顔で返されてイラッとくる。図星か。
あーあ、とつまらない気持ちになって、そして嫉妬心からいじめてやりたくなる僕は狭量なひとなのかな。
「誘わないの? 最近僕と会ってることが多いけど、その人とはご飯とか行ってないんじゃない?」
「千紘には関係のないことでしょう」
「ないけどさぁー、ちゃんとアピールしとかないと誰かに取られちゃうんじゃない? 大丈夫?」
「そうですね、はいご馳走様」
立ち上がって向こうに行った律に向かって、内心あかんべーをする。
都合悪い話になるとすぐに逃げるんだから。
いつか絶対に本音を聞き出してやる。
そんな時に、家のインターホンが鳴った。
律がモニターを確認する。
誰が写っているかはここからじゃ見えないが、律が嫌そうに、うわ、と小さく漏らした声は聞き取れた。
宅配業者から荷物がたくさん運ばれてきたのかな、と思案しているうちに律が通話ボタンを押す。
すると随分と陽気な男の声が、小さなモニターを通じて僕の耳まで届いた。
『やっほぉぉ律ー! 来ちゃったー!』
0
あなたにおすすめの小説
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
透けるほどうすい/溶けるほどあつい
鴻上縞
BL
日々何をするでもなく適当に生きていた真柴久志が知人の紹介で入った会社で真柴の教育係になった堂前哲は、仕事は出来るが口調は荒く乱暴で無愛想な取っ付きづらい男だった。しかし歓迎会の席で明かされた哲の驚くべき過去は、真柴の若い好奇心を掻き立てた。
歓迎会の後、真柴は好奇心を抑えきれず、酔に任せて哲に手を出してしまう。
一夜明けて酔いが覚め、気まずさを抱え一応謝罪をしたものの、哲の態度が負けず嫌いな真柴に火を付けて────。
足場鳶職人達の、身体から始まる軽薄で微かに純情な恋物語。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる