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◇第4章◇優しくて意地悪なひと
41 不意な体温
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週末とその次の週末、律の家に行った。
律は僕の為に料理を振舞ってくれた。
僕が作ると交渉したのに聞き入れてもらえず、律の作る美味しい料理を大人しく堪能したのだった。
「ここ最近、頻繁に来ていますね」
マンションに通うようになってひと月も経てば、『今日は何時頃に来るんですか』と連絡が入るようになった。
ルーティンになりつつある逢瀬。
ふふ、と僕はいやらしい笑みをしつつ、しかし調子に乗ってるなと怒られそうだからおごそかな態度を心がけている。
「だって律がいつ来る? って聞くから」
「連絡無しに来られても困るからです」
「僕が来ないと寂しいくせに……って嘘だよ、ごめんごめん」
眉根を寄せて目を細められたので早めに謝って、ブリの照り焼きを口にした。
特売だったからという理由で魚を買ってきたらしいが、他にもほうれん草の胡麻和えとアサリのお味噌汁、エビとアボカドのサラダとジャーマンポテトという盛りだくさんの夕ご飯を律は1人で作ってくれた。
ハンバーグのようなオムライスを作って以来、僕は夕飯を作らせて貰えない。しかし律の手料理がピカイチなので、それで良かったと思う。
それにしても律は天の邪鬼だ。
本当は嬉しいのに嬉しくないっていう振りをして、一生懸命に僕を迷惑がっている顔を作る。
本当に面倒だったら適当に理由をつけて会うのを断わるはずだということを、僕は素晴くんの時に学んだ。
昔に、律が僕に会いたくないと言った理由は未だに分からない。
また訊いたところで応えてくれなさそうなので、あれからあえて訊いていない。
「ご馳走様。律、コーヒー飲む?」
「はい。お願いできますか」
「おっけー」
料理を作らない分、僕には別の仕事を任せられることになった。
食後のコーヒーを丁寧に淹れることだ。
コーヒーミルで豆を挽き、ドリッパーにコーヒーの粉をセットして極細の注ぎ口になっているポットでお湯を注ぐ。
これらの道具も全て律が買い揃えてくれたものだ。
「どうせなら美味しいコーヒーが飲みたかったからです」が律の言い分だけど、明らかに僕のため。
「こんな感じかなー」
粉の中央から『の』の字を描くように螺旋状に湯を注いでいく。
僕は繊細な作業が苦手なので、なかなか上達しない。
本当はできるだけ細くゆっくりと注いでいった方がいいらしいのに、僕がやるとドバッと湯が入ってしまう。
「ポットを傾けすぎなんだと思いますよ。手首を少しこうした方が」
見かねた律が、ポットを掴んだままの僕の手に、手を重ねた。
背後に立った律は体を屈めて、僕の顔のすぐ横で話し始める。
「こんな感じで、フィルターにも少し近づけた方が……」
耳朶に響く低音と、吐息と、体温も。
突然与えられた熱に動揺して、ポットを離してしまいそうになる。
アドバイスなんて全く聞こえていなかった。
唇を噛んで至福とも悶絶とも言える時間に耐えていると、机の上にチーがトタッと乗って、僕らをじっと見始めた。何をしてるニャーと言われてる気分だ。
律は僕の為に料理を振舞ってくれた。
僕が作ると交渉したのに聞き入れてもらえず、律の作る美味しい料理を大人しく堪能したのだった。
「ここ最近、頻繁に来ていますね」
マンションに通うようになってひと月も経てば、『今日は何時頃に来るんですか』と連絡が入るようになった。
ルーティンになりつつある逢瀬。
ふふ、と僕はいやらしい笑みをしつつ、しかし調子に乗ってるなと怒られそうだからおごそかな態度を心がけている。
「だって律がいつ来る? って聞くから」
「連絡無しに来られても困るからです」
「僕が来ないと寂しいくせに……って嘘だよ、ごめんごめん」
眉根を寄せて目を細められたので早めに謝って、ブリの照り焼きを口にした。
特売だったからという理由で魚を買ってきたらしいが、他にもほうれん草の胡麻和えとアサリのお味噌汁、エビとアボカドのサラダとジャーマンポテトという盛りだくさんの夕ご飯を律は1人で作ってくれた。
ハンバーグのようなオムライスを作って以来、僕は夕飯を作らせて貰えない。しかし律の手料理がピカイチなので、それで良かったと思う。
それにしても律は天の邪鬼だ。
本当は嬉しいのに嬉しくないっていう振りをして、一生懸命に僕を迷惑がっている顔を作る。
本当に面倒だったら適当に理由をつけて会うのを断わるはずだということを、僕は素晴くんの時に学んだ。
昔に、律が僕に会いたくないと言った理由は未だに分からない。
また訊いたところで応えてくれなさそうなので、あれからあえて訊いていない。
「ご馳走様。律、コーヒー飲む?」
「はい。お願いできますか」
「おっけー」
料理を作らない分、僕には別の仕事を任せられることになった。
食後のコーヒーを丁寧に淹れることだ。
コーヒーミルで豆を挽き、ドリッパーにコーヒーの粉をセットして極細の注ぎ口になっているポットでお湯を注ぐ。
これらの道具も全て律が買い揃えてくれたものだ。
「どうせなら美味しいコーヒーが飲みたかったからです」が律の言い分だけど、明らかに僕のため。
「こんな感じかなー」
粉の中央から『の』の字を描くように螺旋状に湯を注いでいく。
僕は繊細な作業が苦手なので、なかなか上達しない。
本当はできるだけ細くゆっくりと注いでいった方がいいらしいのに、僕がやるとドバッと湯が入ってしまう。
「ポットを傾けすぎなんだと思いますよ。手首を少しこうした方が」
見かねた律が、ポットを掴んだままの僕の手に、手を重ねた。
背後に立った律は体を屈めて、僕の顔のすぐ横で話し始める。
「こんな感じで、フィルターにも少し近づけた方が……」
耳朶に響く低音と、吐息と、体温も。
突然与えられた熱に動揺して、ポットを離してしまいそうになる。
アドバイスなんて全く聞こえていなかった。
唇を噛んで至福とも悶絶とも言える時間に耐えていると、机の上にチーがトタッと乗って、僕らをじっと見始めた。何をしてるニャーと言われてる気分だ。
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