52 / 90
◇第5章◇優しくて切ないひと
52 嫉妬作戦
しおりを挟む
「あっれー? 千紘くんじゃない?! 久しぶりだねぇー!」
白々しく、遠くから僕らの姿を見つけた素晴くんは満面の笑みでこちらに駆け寄ってくる。
えぇ、そんな感じで来るのか、と内心戸惑いつつも「えっ、ま、まさか素晴くん? 偶然だね、久しぶりー!」と僕もド素人な演技をかました。
プラネタリウムの前売り券を手にした彼は、僕の隣にいる律に、ぺこりと頭を下げる。
「あ、初めまして! 俺、千紘くんの友達の素晴って言います! 千紘くんとは高校生の時に学習塾が一緒で……」
「あぁはい。知っていますよ。きみたちが話し合っていたカフェに一緒にいましたから」
素晴くんには、あの日に律がこっそり見守っていてくれたということを話してある。
「えぇー、そうなんですかぁ? もしかして千紘くんが心配で付いてってあげたとか? 優しいですね~。千紘くん、良かったねぇこんなに優しいお兄さんみたいな人と友達でー!」
素晴くんはなぜか、律の腕をギュッと掴んで僕に見せつけてきた。
距離感バグってない?
そしてなんだか素晴くんのテンションがおかしいし不自然だ。
これじゃあ事前に連絡をして計画を練っていたことがバレてしまうではないか。
「千紘に明るくて元気ないいお友達ができて安心しました」
律はどう感じているのか知らないが、グイグイ来る素晴くんに腕を組まれても狼狽えずに穏やかな笑みを崩さない。
「あ、素晴くんに紹介するね。そちら、幡野 律さん。写真家さんなんだ」
「へぇー律さんって言うんですね! 千紘くんとはどういったご関係で?!」
素晴くんは律の服を引っ張って上目遣いで訊ねた。
だからさっきから、親しみと馴れ馴れしさの境界線もバグってるって。
突っ込みたくても何もできずに僕は黙ってやり取りを見守る。
「千紘は幼馴染みで、実家が隣同士なんです」
「へぇー、じゃあ昔から仲がいいんですねー、一緒にプラネタリウム来ちゃうくらいだし」
「あのー、素晴くん」
ゲホンとわざとらしく咳をして、目配せする。
こちらの意図が伝わっただろうか、素晴くんは律から体を離して、今度は僕の腕に巻きついてきた。
「もしかしてこれから見る予定なんですか? 俺もチケット持ってるんで、良かったら一緒に入りません?」
律は僕と素晴くんを見比べながら瞬きを数回した後で頷いた。
「いいですよ。せっかくですからご一緒に」
「やった! じゃあ行こう、千紘くん!」
素晴くんは僕の腕を引いて、建物の中に意気揚々と入っていく。
背後を付いてくる律に怪しまれぬように、僕はヒソヒソ声で素晴くんに訊ねた。
「大丈夫かな? こんなので上手くいくかな?」
「大丈夫、俺に全部任せて。律さんに嫉妬させるために、今日は俺、張り切っちゃうから」
雷さんが律の家に泊まりにきたのを見て、僕はこれ以上ない嫉妬心が生まれた。だから逆のことを今度は律さんにしてみようと、素晴くんはアイデアを出したのだ。
それで律が嫉妬してくれたら嬉しいけど、果たして上手くいくだろうか。
嫉妬のしの字も出ずに、孫を見つめるおじいちゃんのような暖かい視線を向けてくる律の絵が浮かぶのだけど。
現に今だって、素晴くんにくっつかれながら振り返っても、ニコニコとほほ笑みを絶やさない律と目が合うし。
白々しく、遠くから僕らの姿を見つけた素晴くんは満面の笑みでこちらに駆け寄ってくる。
えぇ、そんな感じで来るのか、と内心戸惑いつつも「えっ、ま、まさか素晴くん? 偶然だね、久しぶりー!」と僕もド素人な演技をかました。
プラネタリウムの前売り券を手にした彼は、僕の隣にいる律に、ぺこりと頭を下げる。
「あ、初めまして! 俺、千紘くんの友達の素晴って言います! 千紘くんとは高校生の時に学習塾が一緒で……」
「あぁはい。知っていますよ。きみたちが話し合っていたカフェに一緒にいましたから」
素晴くんには、あの日に律がこっそり見守っていてくれたということを話してある。
「えぇー、そうなんですかぁ? もしかして千紘くんが心配で付いてってあげたとか? 優しいですね~。千紘くん、良かったねぇこんなに優しいお兄さんみたいな人と友達でー!」
素晴くんはなぜか、律の腕をギュッと掴んで僕に見せつけてきた。
距離感バグってない?
そしてなんだか素晴くんのテンションがおかしいし不自然だ。
これじゃあ事前に連絡をして計画を練っていたことがバレてしまうではないか。
「千紘に明るくて元気ないいお友達ができて安心しました」
律はどう感じているのか知らないが、グイグイ来る素晴くんに腕を組まれても狼狽えずに穏やかな笑みを崩さない。
「あ、素晴くんに紹介するね。そちら、幡野 律さん。写真家さんなんだ」
「へぇー律さんって言うんですね! 千紘くんとはどういったご関係で?!」
素晴くんは律の服を引っ張って上目遣いで訊ねた。
だからさっきから、親しみと馴れ馴れしさの境界線もバグってるって。
突っ込みたくても何もできずに僕は黙ってやり取りを見守る。
「千紘は幼馴染みで、実家が隣同士なんです」
「へぇー、じゃあ昔から仲がいいんですねー、一緒にプラネタリウム来ちゃうくらいだし」
「あのー、素晴くん」
ゲホンとわざとらしく咳をして、目配せする。
こちらの意図が伝わっただろうか、素晴くんは律から体を離して、今度は僕の腕に巻きついてきた。
「もしかしてこれから見る予定なんですか? 俺もチケット持ってるんで、良かったら一緒に入りません?」
律は僕と素晴くんを見比べながら瞬きを数回した後で頷いた。
「いいですよ。せっかくですからご一緒に」
「やった! じゃあ行こう、千紘くん!」
素晴くんは僕の腕を引いて、建物の中に意気揚々と入っていく。
背後を付いてくる律に怪しまれぬように、僕はヒソヒソ声で素晴くんに訊ねた。
「大丈夫かな? こんなので上手くいくかな?」
「大丈夫、俺に全部任せて。律さんに嫉妬させるために、今日は俺、張り切っちゃうから」
雷さんが律の家に泊まりにきたのを見て、僕はこれ以上ない嫉妬心が生まれた。だから逆のことを今度は律さんにしてみようと、素晴くんはアイデアを出したのだ。
それで律が嫉妬してくれたら嬉しいけど、果たして上手くいくだろうか。
嫉妬のしの字も出ずに、孫を見つめるおじいちゃんのような暖かい視線を向けてくる律の絵が浮かぶのだけど。
現に今だって、素晴くんにくっつかれながら振り返っても、ニコニコとほほ笑みを絶やさない律と目が合うし。
0
あなたにおすすめの小説
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
透けるほどうすい/溶けるほどあつい
鴻上縞
BL
日々何をするでもなく適当に生きていた真柴久志が知人の紹介で入った会社で真柴の教育係になった堂前哲は、仕事は出来るが口調は荒く乱暴で無愛想な取っ付きづらい男だった。しかし歓迎会の席で明かされた哲の驚くべき過去は、真柴の若い好奇心を掻き立てた。
歓迎会の後、真柴は好奇心を抑えきれず、酔に任せて哲に手を出してしまう。
一夜明けて酔いが覚め、気まずさを抱え一応謝罪をしたものの、哲の態度が負けず嫌いな真柴に火を付けて────。
足場鳶職人達の、身体から始まる軽薄で微かに純情な恋物語。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる