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◇第5章◇優しくて切ないひと
53 うるさい男
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週末の夜ということだけあって、場内はカップルでいっぱいだった。
席は自由なので、空いている席を探す。
どこからでもよく見えるだろうが、なんとなく真ん中らへんのソファーを目掛けて進んでいくと。
「千紘くんは俺の隣ね!」
「え?」
ぐいっと引っ張られた僕は、素晴くんと同じ2人席に座らされてしまう。
律は何か言いたげに僕たちを見たけど、ふっと笑ってから少し離れた場所に1人で座った。
椅子の影に隠れて、身を乗り出さないと律が見えない。
律と隣同士で寄り添って座る気満々だったのに。
内心ううぅと泣くけれど、仕方ない。嫉妬してもらうための試練だ。
それにしてもここは、テレビで見ていた通り、座ってしまえば周りの視線が遮断されてほとんど気にならない。
隣の人とイチャイチャし放題だ。
「ところで千紘くん。律さんとはあれから体の関係は先に進んだ?」
「へっ?! 素晴くん、こんなところで……ダメだった。この前、一緒にしようって誘ったんだけど……」
「けど?」
「……僕がイクのを我慢できたら考えてもいいって言われたんだけど、我慢できなくて」
素晴くんは「ぶふっ」と吹き出して、興奮したように僕の腕をバシバシ叩いた。
「な、何だよそのSM羞恥プレイ! 律さんて結構、征服欲が強いのかもね? バックから攻めるのとか好きそう」
「えっ」
「そのうち拘束プレイとか始まっちゃうかもねー」
確かに、律は何度か僕を後ろから攻めている。
あれは律に取って好きなスタイルなのかも。
僕を征服したい、のか?
手錠で拘束され、身動きが取れない僕の体を艶めかしく触れる律の手を想像してしまい、かあっと勝手に頬が熱くなる。
他人の意地悪は嫌だけど、律の意地悪は特別だ。むしろ沢山して欲しい。
律の姿を見ようと身を乗り出すと、律とばっちりと目が合ってしまった。
僕は慌てて視線を逸らして椅子の影に隠れた。
「律と目が合っちゃった……」
「ほら、涼しい顔してるけど、実際は俺らのことが気になって仕方ないんだよ。千紘くん、今のうちに耐性付けとこうか」
「耐性って?」
「例えばこんな」
急に何かと思えば、素晴くんは僕の手に指を入れて恋人繋ぎをしてきた。
その体温と感触にゾワッとする。
「な、何してるの?」
「終わってここから出る時、繋いで見せつけてあげようよ。律さん、きっと動揺すると思うよ?」
「それはそうだと思うけど……」
律が好きだと言っておきながら素晴くんと手を繋いでいるところを律に見せるのは申し訳ない気がするし、僕が遊び人みたく思われないだろうか。
心配する僕をよそに素晴くんは鼻歌でも歌い出しそうに上機嫌だ。
そうこうしているうちに、上映開始を知らせるアナウンスが流れ、照明が落とされていく。
頭上に広がったのは、無数の星々だ。
都会の空はこんなに綺麗に見えない。ここまで沢山の星を実際に見たのはいつだったか。
右から左へ彗星が流れていく。
まるで本物の夜空みたいだ。
僕は星を初めて見る子供みたいな無垢な声を上げた。
「すごい、綺麗だなぁ……」
「星って、残りの寿命が短いほど明るく輝くらしいよね。寿命が短い星は青くて、長い星は赤いらしいけど、赤い星といえばオリオン座のペテルギウスとか蠍座のアンタレスだよね。赤い星の温度はだいたい2000~3300度くらいだけど、俺としては白っぽい星の方が好きかなー? あぁ、白い星で代表的なこと座のベガといえば七夕のおりひめ星として有名だけどー」
せっかく浸っていたのに、ナレーションによる解説がいらないくらいに隣の男は熱弁し始めた。
悪いがちょっと鬱陶しい。
そういえば素晴くんは、こんな感じだけど物知りで頭は良いのだった。
中学受験もクリアして、大学もそれなりに偏差値の高いところへ通っている。
席は自由なので、空いている席を探す。
どこからでもよく見えるだろうが、なんとなく真ん中らへんのソファーを目掛けて進んでいくと。
「千紘くんは俺の隣ね!」
「え?」
ぐいっと引っ張られた僕は、素晴くんと同じ2人席に座らされてしまう。
律は何か言いたげに僕たちを見たけど、ふっと笑ってから少し離れた場所に1人で座った。
椅子の影に隠れて、身を乗り出さないと律が見えない。
律と隣同士で寄り添って座る気満々だったのに。
内心ううぅと泣くけれど、仕方ない。嫉妬してもらうための試練だ。
それにしてもここは、テレビで見ていた通り、座ってしまえば周りの視線が遮断されてほとんど気にならない。
隣の人とイチャイチャし放題だ。
「ところで千紘くん。律さんとはあれから体の関係は先に進んだ?」
「へっ?! 素晴くん、こんなところで……ダメだった。この前、一緒にしようって誘ったんだけど……」
「けど?」
「……僕がイクのを我慢できたら考えてもいいって言われたんだけど、我慢できなくて」
素晴くんは「ぶふっ」と吹き出して、興奮したように僕の腕をバシバシ叩いた。
「な、何だよそのSM羞恥プレイ! 律さんて結構、征服欲が強いのかもね? バックから攻めるのとか好きそう」
「えっ」
「そのうち拘束プレイとか始まっちゃうかもねー」
確かに、律は何度か僕を後ろから攻めている。
あれは律に取って好きなスタイルなのかも。
僕を征服したい、のか?
手錠で拘束され、身動きが取れない僕の体を艶めかしく触れる律の手を想像してしまい、かあっと勝手に頬が熱くなる。
他人の意地悪は嫌だけど、律の意地悪は特別だ。むしろ沢山して欲しい。
律の姿を見ようと身を乗り出すと、律とばっちりと目が合ってしまった。
僕は慌てて視線を逸らして椅子の影に隠れた。
「律と目が合っちゃった……」
「ほら、涼しい顔してるけど、実際は俺らのことが気になって仕方ないんだよ。千紘くん、今のうちに耐性付けとこうか」
「耐性って?」
「例えばこんな」
急に何かと思えば、素晴くんは僕の手に指を入れて恋人繋ぎをしてきた。
その体温と感触にゾワッとする。
「な、何してるの?」
「終わってここから出る時、繋いで見せつけてあげようよ。律さん、きっと動揺すると思うよ?」
「それはそうだと思うけど……」
律が好きだと言っておきながら素晴くんと手を繋いでいるところを律に見せるのは申し訳ない気がするし、僕が遊び人みたく思われないだろうか。
心配する僕をよそに素晴くんは鼻歌でも歌い出しそうに上機嫌だ。
そうこうしているうちに、上映開始を知らせるアナウンスが流れ、照明が落とされていく。
頭上に広がったのは、無数の星々だ。
都会の空はこんなに綺麗に見えない。ここまで沢山の星を実際に見たのはいつだったか。
右から左へ彗星が流れていく。
まるで本物の夜空みたいだ。
僕は星を初めて見る子供みたいな無垢な声を上げた。
「すごい、綺麗だなぁ……」
「星って、残りの寿命が短いほど明るく輝くらしいよね。寿命が短い星は青くて、長い星は赤いらしいけど、赤い星といえばオリオン座のペテルギウスとか蠍座のアンタレスだよね。赤い星の温度はだいたい2000~3300度くらいだけど、俺としては白っぽい星の方が好きかなー? あぁ、白い星で代表的なこと座のベガといえば七夕のおりひめ星として有名だけどー」
せっかく浸っていたのに、ナレーションによる解説がいらないくらいに隣の男は熱弁し始めた。
悪いがちょっと鬱陶しい。
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中学受験もクリアして、大学もそれなりに偏差値の高いところへ通っている。
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