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◇第7章◇優しくて大好きなひと
84 甘い一喝
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砂浜をいじっていたら、ふいに僕の体に影が落ちた。
顔を上げると、素晴くんが満面の笑みで僕を見下ろしていた。
「千紘くん、見て! 珍しい貝殻があったよー」
「あ、ホントだね」
ちいさな貝殻を手渡される。
確かにそれは、チョココロネみたいな形をしていて、黒地に三角形型の斑点が散りばめられていた。
どうやったらこんなに綺麗な形と模様になるのか心底不思議がっていると、素晴くんが僕の隣にストンと腰を下ろした。
「良かったね、千紘くん」
なんのことかはすぐに理解できたので、ん、とはにかんだ。
「素晴くんも……ていうか、ホントに僕たちって似てるよね」
聞いたところによると、素晴くんの彼も、律と同じ理由で素晴くんの気持ちに向き合わなかったらしい。
そもそも始まりがいきなり体からだったのが、彼を悩ませていたとのこと。
彼はずっと素晴くんが好きだったけど、きっと素晴くんは遊んでいるだけだと思い込み、なかなか素直に気持ちを明かせなかったみたいだ。
もう会わないと告げた後、やはり名残惜しくなって素晴くんに会いにいったら僕がいて、しかもセックスしただなんて聞かされて……まぁ何はともあれ、終わり良ければ全て良しということだ。
「アイツの悪いところは遠慮ばっかするところだね。好きなら好きってはっきり言えば良かったのに。そしたら俺もすぐに返事したのに、何も言わないんだもん」
「まぁ、口下手なのかもしれないよね」
素晴くんの彼は、僕らの方を遠くから見つめて、こちらに向かってゆっくりと歩いていた。
その表情はやはり感情を持たないロボットのようで、喜怒哀楽の判断が付けにくい。
「確かに昔から冷静で、何があっても動じないところが評価されてたけどさー、たまには感情を分かりやすく出してもらいたいよ」
「でもあの時は凄かったよね、許さんって言って素晴くんに堂々とキスして、引っ張ってって……大丈夫だった? あの後」
「え? ……まぁ、うん。色々と、されたけどね……」
頬をじわっと赤らめて視線を外したのを見て、え、え、と僕もほんのり顔を熱くした。
興味が湧いてしまう。色々と何をされたんだろう。
気になっていると、僕らの前にAIさんが姿を現した。
素晴くんの手を取って引っ張った彼の胸の中に、素晴くんがすっぽりと収まる。
すると、AIさんの目が僕に向いた。
「千紘くん」
「は、はいっ」
初めて名前を呼ばれてドキリとする。
同い年なのに、僕はどうしても敬語が抜けない。
「こいつ、距離感バグってるから、近すぎると思ったら遠慮なく注意していいから」
低い声で彼がそう告げると、がしりと抱きしめられている素晴くんが慌てて抗議した。
「なんだよその言い方っ。ただ並んで話してただけだろー」
「うるさい。お前は俺のだろうが」
「……!」
彼が一喝すると、素晴くんは赤い顔をして口をぱくぱくさせていたが、電池を抜かれたようにたちまち大人しくなった。
「……はい」
唇を尖らせた可愛い恋人を見届けた彼は、よし、と頷いてくるりと踵を返して去っていった。
つまりはあれだ。
距離感を注意してと僕に言ったけど、本音は別のところにあるのだ。
小さな素晴くんがますます縮こまって見える。
2人を見つめていると、海風に乗ってAIさんの低音が聞こえてきた。
「お前今日、帰ったらお仕置きだから」
バッと顔をはね上げた素晴くんは、はぁ?とか、ふざけんな!とか冷たく悪態を吐いているけど、その顔は見事に何かを期待しているように嬉しそうだった。
そういえば素晴くん、彼の前ではたちまち口が悪くなるけど、時に甘ったるい顔にもなる。
ツンデレという言葉が脳裏に浮かんだ。
征服欲が強くて恋人を溺愛しているAIさんは律にそっくりだ……と考えたところで、僕も相当な自惚れやなのだなと笑った。
顔を上げると、素晴くんが満面の笑みで僕を見下ろしていた。
「千紘くん、見て! 珍しい貝殻があったよー」
「あ、ホントだね」
ちいさな貝殻を手渡される。
確かにそれは、チョココロネみたいな形をしていて、黒地に三角形型の斑点が散りばめられていた。
どうやったらこんなに綺麗な形と模様になるのか心底不思議がっていると、素晴くんが僕の隣にストンと腰を下ろした。
「良かったね、千紘くん」
なんのことかはすぐに理解できたので、ん、とはにかんだ。
「素晴くんも……ていうか、ホントに僕たちって似てるよね」
聞いたところによると、素晴くんの彼も、律と同じ理由で素晴くんの気持ちに向き合わなかったらしい。
そもそも始まりがいきなり体からだったのが、彼を悩ませていたとのこと。
彼はずっと素晴くんが好きだったけど、きっと素晴くんは遊んでいるだけだと思い込み、なかなか素直に気持ちを明かせなかったみたいだ。
もう会わないと告げた後、やはり名残惜しくなって素晴くんに会いにいったら僕がいて、しかもセックスしただなんて聞かされて……まぁ何はともあれ、終わり良ければ全て良しということだ。
「アイツの悪いところは遠慮ばっかするところだね。好きなら好きってはっきり言えば良かったのに。そしたら俺もすぐに返事したのに、何も言わないんだもん」
「まぁ、口下手なのかもしれないよね」
素晴くんの彼は、僕らの方を遠くから見つめて、こちらに向かってゆっくりと歩いていた。
その表情はやはり感情を持たないロボットのようで、喜怒哀楽の判断が付けにくい。
「確かに昔から冷静で、何があっても動じないところが評価されてたけどさー、たまには感情を分かりやすく出してもらいたいよ」
「でもあの時は凄かったよね、許さんって言って素晴くんに堂々とキスして、引っ張ってって……大丈夫だった? あの後」
「え? ……まぁ、うん。色々と、されたけどね……」
頬をじわっと赤らめて視線を外したのを見て、え、え、と僕もほんのり顔を熱くした。
興味が湧いてしまう。色々と何をされたんだろう。
気になっていると、僕らの前にAIさんが姿を現した。
素晴くんの手を取って引っ張った彼の胸の中に、素晴くんがすっぽりと収まる。
すると、AIさんの目が僕に向いた。
「千紘くん」
「は、はいっ」
初めて名前を呼ばれてドキリとする。
同い年なのに、僕はどうしても敬語が抜けない。
「こいつ、距離感バグってるから、近すぎると思ったら遠慮なく注意していいから」
低い声で彼がそう告げると、がしりと抱きしめられている素晴くんが慌てて抗議した。
「なんだよその言い方っ。ただ並んで話してただけだろー」
「うるさい。お前は俺のだろうが」
「……!」
彼が一喝すると、素晴くんは赤い顔をして口をぱくぱくさせていたが、電池を抜かれたようにたちまち大人しくなった。
「……はい」
唇を尖らせた可愛い恋人を見届けた彼は、よし、と頷いてくるりと踵を返して去っていった。
つまりはあれだ。
距離感を注意してと僕に言ったけど、本音は別のところにあるのだ。
小さな素晴くんがますます縮こまって見える。
2人を見つめていると、海風に乗ってAIさんの低音が聞こえてきた。
「お前今日、帰ったらお仕置きだから」
バッと顔をはね上げた素晴くんは、はぁ?とか、ふざけんな!とか冷たく悪態を吐いているけど、その顔は見事に何かを期待しているように嬉しそうだった。
そういえば素晴くん、彼の前ではたちまち口が悪くなるけど、時に甘ったるい顔にもなる。
ツンデレという言葉が脳裏に浮かんだ。
征服欲が強くて恋人を溺愛しているAIさんは律にそっくりだ……と考えたところで、僕も相当な自惚れやなのだなと笑った。
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