きみは優しくて嘘つきな、

こすもす

文字の大きさ
83 / 90
◇第7章◇優しくて大好きなひと

83 きっとうまくいく

しおりを挟む
 目が痛くなるほどの鮮やかな青と、水平線。

「律さーん、写真撮ってー」

 海原が青くゆったりと膨らんで波が盛り上がっていき、ざぶんと落ちる。

 きらびやかに躍動する海の音に混じって、素晴くんの弾んだ声が砂浜にいる僕のところまで届く。

 本来なら花見のシーズンだが、恋人同士になった僕たちは約束通りに海にきた。

 素晴くんともう1人───あれから色々とあって、セフレを解消した素晴くんの恋人と、4人で。

 というのも、素晴くんには、僕から海に行こうと誘っていたのをすっかり忘れていたのだった。
 素晴くんが彼と上手くいったと聞かされて、海に行く話は無かったことに……となると思い込んでいたのに、せっかくなら4人で行こうと誘われた。

 律にそのことを伝えると「いいんじゃないですか?」と笑って了承してくれた。
 素晴くんの恋人が一緒ならと、安心したのかもしれない。

 律はプライベート用のカメラを、素晴くんと彼氏に向けている。
 真夏ではないのでさすがに水着は着用していないが、裸足で冷たい海に浸かっている。
 僕は一旦休憩して、3人を遠くから見て笑っていた。


 自分がまた律と、5年前に来た海に来ることになるとは。
 高校生の自分は想像もしていなかった。
 きらきらと反射する水面を見ていたのを確かに覚えている。
 でもあの時とは違う。

 僕はもう、ひとりじゃない。

 海の写真をスマホで撮って、雷さんにメッセ付きで送ると、数秒後に電話が掛かってきた。

『おーう。何? 海なんか行ってんの?』
「はい。律と、友達で」
『はぁ、なんだ、ノロケかよ』

 大袈裟にため息を吐かれて、笑ってしまう。
 律に事情を説明して雷さんの連絡先を教えてもらい、律と両想いになれたことを伝えた。

 お互いのことをまだそんなに知らないくせに、あの時に恋愛事情を赤裸々に語り合ったからか、変に仲間意識が芽生えて、雷さんとはたまに連絡を取り合う仲になっている。

「雷さんも来れば良かったのに」
『馬鹿言え。わざわざ陽のあたる場所に行くかよ。俺は日陰が似合う男なんだよ』

 そうか、この人の職業がモデルだというのをすっかり忘れていた。
 すいませんと謝ると、あ、と雷さんは急に思い出したようにヒソヒソ話を始めた。

『俺さ、前に言っただろ、隣の部屋に住んでる奴が好きだって』
「あぁ、2年くらい片想い中の」
『そいつとさ……今度、デートすることになった』
「えぇー! どうして急に?!」
『それがよ、きっかけが、風でそいつの洗濯物が俺ん家のベランダに飛んで来たんだよ。届けに行ったら、礼がしたいって言うから遠慮なく部屋に上がったらよ、なんだかそいつがソワソワして落ち着きないんだよ。どうした?って聞いたら、見た目怖そうだったけど、喋ってみると全然そんなことないですねってやんわり笑顔を見せられて。もう俺、振られてもなんでもいいぜって腹括って、今度デートしてくれって頼んだら、自分で良ければって言ってくれてさぁ!』

 仕事は休みで暇なのか、僕に興奮気味に話してくる。

 あれは絶対に俺が好きだ、と既に勝利宣言をしている雷さんを少し冷静にさせるべきか、それともそのまま盛り上げるべきか悩んだが。

「はい! 絶対にその人も雷さんのこと好きですよ! だってその気が無かったら適当に理由付けて断るじゃないですか! いけますよ!」

 後者だった。
 それがよほど嬉しかったようで雷さんは『そうか?! だよな、やっぱり!』とさらに自信を付けていた。

 電話を切ったあとでちょっと心配になる。
 根拠は無いくせに無責任なことを言ってしまっただろうか。

 いいや、きっと大丈夫だろう。
 僕はぐっと拳を握って、雷さんの幸せを願った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

透けるほどうすい/溶けるほどあつい

鴻上縞
BL
 日々何をするでもなく適当に生きていた真柴久志が知人の紹介で入った会社で真柴の教育係になった堂前哲は、仕事は出来るが口調は荒く乱暴で無愛想な取っ付きづらい男だった。しかし歓迎会の席で明かされた哲の驚くべき過去は、真柴の若い好奇心を掻き立てた。  歓迎会の後、真柴は好奇心を抑えきれず、酔に任せて哲に手を出してしまう。  一夜明けて酔いが覚め、気まずさを抱え一応謝罪をしたものの、哲の態度が負けず嫌いな真柴に火を付けて────。  足場鳶職人達の、身体から始まる軽薄で微かに純情な恋物語。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

処理中です...