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◇第1章◇優しくて冷たいひと
7 満たされ、後悔
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「いくら借金をしたんです?」
あっという間に焼きうどんを平らげた律は、早くもタブレットで何かを頼んでいる。
「5万円」
「ごま……え? 50万じゃなく、5万?」
「うん」
律は呆気に取られたようにポカンとしている。
僕は涙を袖でゴシゴシと拭いて、一旦箸を置いた。
「しかもそれ、秀雄じいちゃんが大学進学する時にくれた最後のお小遣いだったんだ。困った時に使うんだぞって、お守りみたいなもんだから、ずっと残しておくんだぞって」
「で、困った時がきて、詐欺師にお金を渡したと?」
「詐欺師っていうか……」
好きだった人をそんなふうに言われて戸惑うけど、冷静に考えたらそういう呼び名がピッタリなのだろう。
「たった5万円を取り返すために、体を売ろうとしていたってわけですか」
「売るってわけじゃ……」
「もし今日、5万円を受け取っていたら、天国の秀雄叔父さんはどう思うか一瞬でも考えましたか?」
「う……」
そういえば、とまた冷静になった。
なくなってしまったお金をすぐに取り戻せるのなら、どんな手を使ってもいいと思っていた。
だがもし僕に子供がいたとして、同じような状況になっていたとしたら辛い。
秀雄じいちゃんだってきっとそうだ。
ムサシさんに奉仕して金を受け取るくらいだったら、初めからその金は無かったものと思えと言われるに違いない。
「そういうところは、変わってないですね」
律は少しだけ笑って、グラスの中身を空にした。
「状況判断する余裕がなくなって、やみくもにもがいて溺れる。力を抜いて、落ち着いてじっとしているのが正解なんです。あなたは少し、焦りすぎだ」
律の言う通りだ。
僕は何かの歪みが生じたら、すぐに正さなくてはと焦ってしまい、結果うまくいかなくなる。
苦しみでいっぱいいっぱいになり、周りが見えなくなって、自分でなんとかしようとジタバタするよりも、苦しんでいることを受け入れて誰かに助けを求めるべきだった。
「……律ともっと早くに、会えてれば良かった」
そうしたら僕も、何か他の方法でお金を取り戻しただろうに。
いいやその前に、あの男にお金を渡さなかっただろう。
会えていたらその時点でもう、律に恋していただろうから。
「食べて」
僕は言われるままにうどんを啜った。
僕はこの先ずっと、この醤油とソースの濃い味と香りを忘れることはないだろう。
あっという間に焼きうどんを平らげた律は、早くもタブレットで何かを頼んでいる。
「5万円」
「ごま……え? 50万じゃなく、5万?」
「うん」
律は呆気に取られたようにポカンとしている。
僕は涙を袖でゴシゴシと拭いて、一旦箸を置いた。
「しかもそれ、秀雄じいちゃんが大学進学する時にくれた最後のお小遣いだったんだ。困った時に使うんだぞって、お守りみたいなもんだから、ずっと残しておくんだぞって」
「で、困った時がきて、詐欺師にお金を渡したと?」
「詐欺師っていうか……」
好きだった人をそんなふうに言われて戸惑うけど、冷静に考えたらそういう呼び名がピッタリなのだろう。
「たった5万円を取り返すために、体を売ろうとしていたってわけですか」
「売るってわけじゃ……」
「もし今日、5万円を受け取っていたら、天国の秀雄叔父さんはどう思うか一瞬でも考えましたか?」
「う……」
そういえば、とまた冷静になった。
なくなってしまったお金をすぐに取り戻せるのなら、どんな手を使ってもいいと思っていた。
だがもし僕に子供がいたとして、同じような状況になっていたとしたら辛い。
秀雄じいちゃんだってきっとそうだ。
ムサシさんに奉仕して金を受け取るくらいだったら、初めからその金は無かったものと思えと言われるに違いない。
「そういうところは、変わってないですね」
律は少しだけ笑って、グラスの中身を空にした。
「状況判断する余裕がなくなって、やみくもにもがいて溺れる。力を抜いて、落ち着いてじっとしているのが正解なんです。あなたは少し、焦りすぎだ」
律の言う通りだ。
僕は何かの歪みが生じたら、すぐに正さなくてはと焦ってしまい、結果うまくいかなくなる。
苦しみでいっぱいいっぱいになり、周りが見えなくなって、自分でなんとかしようとジタバタするよりも、苦しんでいることを受け入れて誰かに助けを求めるべきだった。
「……律ともっと早くに、会えてれば良かった」
そうしたら僕も、何か他の方法でお金を取り戻しただろうに。
いいやその前に、あの男にお金を渡さなかっただろう。
会えていたらその時点でもう、律に恋していただろうから。
「食べて」
僕は言われるままにうどんを啜った。
僕はこの先ずっと、この醤油とソースの濃い味と香りを忘れることはないだろう。
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