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◇第1章◇優しくて冷たいひと
6 おじいちゃん
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「悪い奴に騙し取られたんですか?」
「ん、まぁ、そう」
さっきから見事にズバズバと言い当てられ、ぐうの音も出ない。
「だったら突っ走らずに、まず秀雄叔父さんに相談したら良かったでしょう。きっと知恵を貸してくれたのに」
僕が兄や両親のことが苦手なのも知っている律は、あえて僕のじいちゃんの名前を出した。
互いの両親から接近禁止令が出された後、僕たちを気にかけてくれたのは秀雄じいちゃんだった。
律が一人暮らしを始めたことと、律がもう、僕とは会いたくないと言っていたと僕に教えたのはじいちゃんだ。
じいちゃんは、何でも暖かく受け入れてくれたから心の拠り所だった。
相手を絶対に否定せずに気持ちに寄り添ってくれた。
……全てが過去の話になってしまったのが悲しいが。
「じいちゃん亡くなったんだよ。2年前に」
「……そうでしたか。それは大変失礼しました。何も知らなくて……あんなに元気そうだったのに」
律は寂しそうにグラスの氷を見つめた。
落ち込ませてしまって悪いと思い、僕はあえて明るい声を出す。
「でも、88歳だったから長生きした方だよ。大好きなお酒も沢山飲めて、幸せな人生だったんじゃないかな」
「大丈夫だったんですか?」
「何が?」
「ですから、きみは、秀雄叔父さんがいなくなって」
「うん、お別れの時はちょっと泣いちゃったけどねー」
本当はちょっとじゃなくて、大号泣だった。
お通夜やお葬式では、家族や親戚中を見渡しても間違いなく僕が一番目を腫らしていた。
律だって、会う度に笑顔で挨拶をしてくれる秀雄じいちゃんが大好きだっただろう。
目の前の律は、表情は変えぬまま、黙り込んでしまう。
いくら接近禁止令が出されていたり、律が僕に会いたくなかったとしても、訃報は知らせてあげるべきだったかもと後悔した。
テーブルの上にはホッケと軟骨の唐揚げ、ナスときゅうりの1本漬けと、焼きうどん2つが並べられた。
ソースと鰹節の香ばしい香りが鼻腔を刺激すると、お腹の虫がぐぅぅと鳴った。
そういえば僕も、朝から何も口にしていない。
恨めしそうに見ていた焼きうどんの皿のひとつを、僕の前に置かれる。
「え、これ食べてもいいの」
「本当は2つとも俺のでしたが、可哀想なのであげます」
同情や哀れみから食事をご馳走になるなんて。
情けないけど、食欲には勝てない。
律がうどんを啜ったのを確認してから、僕も同じように口にした。
もきゅもきゅと、何度か咀嚼しているうちに涙が溜まってきて、溢れた雫はスーッと頬を伝った。
律はちょっと呆れたようにため息を吐く。
「泣くほど美味しいですか」
「りっちゃ……律、ありがとう助けてくれて」
まだ礼を言っていなかったと思い、今更だけど頭を下げた。
律が無理にでも連れ出してくれなかったら、今ごろ僕はムサシさんにたくさん意地悪をされていただろう。
恐怖心と安心感、それに空っぽのお腹が満たされていく充溢感が綯い交ぜになって、涙がポロポロとこぼれ落ちてゆく。
「ん、まぁ、そう」
さっきから見事にズバズバと言い当てられ、ぐうの音も出ない。
「だったら突っ走らずに、まず秀雄叔父さんに相談したら良かったでしょう。きっと知恵を貸してくれたのに」
僕が兄や両親のことが苦手なのも知っている律は、あえて僕のじいちゃんの名前を出した。
互いの両親から接近禁止令が出された後、僕たちを気にかけてくれたのは秀雄じいちゃんだった。
律が一人暮らしを始めたことと、律がもう、僕とは会いたくないと言っていたと僕に教えたのはじいちゃんだ。
じいちゃんは、何でも暖かく受け入れてくれたから心の拠り所だった。
相手を絶対に否定せずに気持ちに寄り添ってくれた。
……全てが過去の話になってしまったのが悲しいが。
「じいちゃん亡くなったんだよ。2年前に」
「……そうでしたか。それは大変失礼しました。何も知らなくて……あんなに元気そうだったのに」
律は寂しそうにグラスの氷を見つめた。
落ち込ませてしまって悪いと思い、僕はあえて明るい声を出す。
「でも、88歳だったから長生きした方だよ。大好きなお酒も沢山飲めて、幸せな人生だったんじゃないかな」
「大丈夫だったんですか?」
「何が?」
「ですから、きみは、秀雄叔父さんがいなくなって」
「うん、お別れの時はちょっと泣いちゃったけどねー」
本当はちょっとじゃなくて、大号泣だった。
お通夜やお葬式では、家族や親戚中を見渡しても間違いなく僕が一番目を腫らしていた。
律だって、会う度に笑顔で挨拶をしてくれる秀雄じいちゃんが大好きだっただろう。
目の前の律は、表情は変えぬまま、黙り込んでしまう。
いくら接近禁止令が出されていたり、律が僕に会いたくなかったとしても、訃報は知らせてあげるべきだったかもと後悔した。
テーブルの上にはホッケと軟骨の唐揚げ、ナスときゅうりの1本漬けと、焼きうどん2つが並べられた。
ソースと鰹節の香ばしい香りが鼻腔を刺激すると、お腹の虫がぐぅぅと鳴った。
そういえば僕も、朝から何も口にしていない。
恨めしそうに見ていた焼きうどんの皿のひとつを、僕の前に置かれる。
「え、これ食べてもいいの」
「本当は2つとも俺のでしたが、可哀想なのであげます」
同情や哀れみから食事をご馳走になるなんて。
情けないけど、食欲には勝てない。
律がうどんを啜ったのを確認してから、僕も同じように口にした。
もきゅもきゅと、何度か咀嚼しているうちに涙が溜まってきて、溢れた雫はスーッと頬を伝った。
律はちょっと呆れたようにため息を吐く。
「泣くほど美味しいですか」
「りっちゃ……律、ありがとう助けてくれて」
まだ礼を言っていなかったと思い、今更だけど頭を下げた。
律が無理にでも連れ出してくれなかったら、今ごろ僕はムサシさんにたくさん意地悪をされていただろう。
恐怖心と安心感、それに空っぽのお腹が満たされていく充溢感が綯い交ぜになって、涙がポロポロとこぼれ落ちてゆく。
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