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体調も大分良くなって屋敷に帰る前日私はグレース様に呼び出されていた。
部屋にアリスと共に入るとグレース様とヘクターが待っていた。
「もうすっかり顔色も良くなっているわね!安心したわ。」
「貴女のお陰です。グレース様が助けて下さらなければ私は…。本当にありがとうございました。」
私が改めてお礼を言うとグレース様はそれを制した。
グレース様は畏まられるのがあまり好きではないらしい。前に一度『貴族って堅苦しくて好きじゃないのよ!』と溢していた。
貴族の中の貴族が何を…とは言わなかったけれど。
「明日にはマーガレットちゃんと暫く会えないのね…。寂しいわ。」
「私もです。グレース様とのお話はとても楽しいですから。」
「ううっ…。ヘクター貴方も寂しいわよね?」
素直に寂しがっているグレース様の気持ちは嬉しかった。
不意にヘクターにまで話を振られると、そんな事を言われても困るだろうと眉を下げてヘクターを見る。
するとヘクターもまた此方を見ていた。
まあ…ヘクターの素直じゃない性格上
素直になんてーー。
「…そうだな。」
「へっ?」
ヘクターの肯定の返事に、予想外過ぎて思わず変な声が出てしまう。
「寂しくなる。」
そう言って私を見つめるヘクターはジッと此方を見ている。
その視線に耐え切れず目を逸らして突然のデレ展開に熱くなった頬を抑える。
ヘクター!?
貴方そんなキャラじゃなかった筈!?
内心動揺しつつも冷静さを保とうと呼吸を落ち着かせる。
「…はぁ、いっその事ヘクターとマーガレットちゃんが結婚してこの家に入ればいいのだけど…。」
「「 !? 」」
グレース様は自分が何を言ったのか絶対判っていないと思う。
私とヘクターは爆弾発言に驚いて顔を見合わせてしまったけれど、直ぐにお互い顔を逸らす。
チラッとヘクターを覗くとヘクターも赤くなっているのが判った。
「…ん? …そうよ、そうだわ!マーガレットちゃん、ヘクターと婚約するのはどうかしら!」
「グレース様!」
「あ、あの…。」
「マーガレットちゃんはヘクターが相手じゃ嫌かしら…?」
グレース様の突然の申し出に、普段無表情なヘクターが素直に動揺していると、返事に困っている私にグレース様は追い討ちをかける様に問いてきた。
「やっぱり平民は難しいかしらね?それなら私の養子に出来るけれど…。」
その一言でヘクターの顔が強張るのが判った。
「平民とか貴族とか関係ありません。」
「あら!じゃあ…。」
「…すみません。不敬をお許し下さい、グレース様。申し訳ありませんがお断りします。」
はっきり告げた私の真剣な目を見て、グレース様はまさかキッパリ断るとは思わなかったのだろう。
私はそう言った瞬間、強張ったヘクターの表情に気付かなかった。
婚約は確かに今のこの貴族社会では珍しくない。しかもグレース様は公爵家の人間だ。本来なら断る事も不敬だろう。
けれどそう言われた瞬間、頭を過ぎったのはクラウスだった。
どんなにヘクターがいい人だとしても、結ばれない運命だとしても、私は…。
一瞬グレース様はヘクターを見たが私に向き合うとゆっくり頷く。
「理由を聞いてもいいかしら…。これでも、マーガレットちゃんがヘクターを嫌ってない事くらいちゃんと判るのよ?」
「…ずっとお慕いしている人がいるのです。」
「…っ!」
「あら…そう、そうなのね…。」
グレース様に真っ直ぐ見つめられて素直に好きな人が居るのだと伝えると、グレース様は私の手をギュッと包み込んだ。
その時、グレース様に告げる時に手を強く握りしめていたのだと気付いた。
「ごめんなさい。マーガレットちゃん…そんなに想う相手がいるのね。」
無意識に頬を伝っていた涙をグレース様が優しく拭ってくれる。
「いえ…叶わない想いなのです。けれど…まだ他の方を考えられそうにはないのです…。」
「そう…。辛い恋をしているのね。」
グレース様に〝辛い恋〟そう言われて私は首を横に振った。
確かに前世も今も叶わない恋だ。
今の〝彼〟クラウスには運命の相手がいるのだから。
前世の時は画面越しに伝えられない〝好き〟と言う不毛な恋をした。
好きで、好きで仕方なかった。
けれど、辛い想いだけではなかったから。
好きになって幸せな気持ちを与えてくれたのも本当だ。
画面越しに一緒に泣いて、一緒に笑った。
その瞬間は側に居ないけれど間違いなく私は幸せだった。
だから〝辛い恋〟とは呼びたくなかったのだ。
中々止められない涙をグレース様は優しく拭いながら落ち着くのを待ってくれた。
「…すみません。見苦しい所をお見せしてしまって。」
「いいのよ!私こそごめんなさいね、マーガレットちゃんの気持ちを持っと考えてあげられなくて。」
「いえ…。」
落ち着きを取り戻した私にグレース様は優しく微笑んでくれた。
隣にいるヘクターは眉を顰めて複雑そうな顔をしている。
それはそうだろう。
いきなり泣き出されたら困るに決まってる。
申し訳なさと、泣き続けた恥ずかしさで私は小さくなってしまう。
「けれど…残念だわ、マーガレットちゃんの事は諦めなきゃねえ、ヘクター?」
「!」
溜息を吐きながらヘクターを茶化す様に話を振るグレース様に私は目を見開いた。
何を言ってるの?それはグレース様が言い出した事で、ヘクターはそんなんじゃ…。
せっかく仲良くなり始めたヘクターに迷惑をかけると、慌てて私とヘクターはそんな仲ではない。友人だと訂正しようとした。
「…そいつを越えればいいだけだ。」
「!?」
「ふふ、そうよね!そうでなくちゃ!!」
「!!?」
ヘクターがそう言って驚いている私を見ると、グレース様は嬉しそうに目を細めて微笑んでいる。
ヘクターのその瞳は熱を含んでそれを伝える様に私の頬に熱を移した。
「マーガレット、逃げられると思うなよ?」
そう言ってヘクターは不敵な笑みを浮かべた。
初めて見せてくれたヘクターの笑顔に、少年の様な可愛らしさは何処にも無かった。
ーーーーーーーー
次回、〇〇目線になります。
部屋にアリスと共に入るとグレース様とヘクターが待っていた。
「もうすっかり顔色も良くなっているわね!安心したわ。」
「貴女のお陰です。グレース様が助けて下さらなければ私は…。本当にありがとうございました。」
私が改めてお礼を言うとグレース様はそれを制した。
グレース様は畏まられるのがあまり好きではないらしい。前に一度『貴族って堅苦しくて好きじゃないのよ!』と溢していた。
貴族の中の貴族が何を…とは言わなかったけれど。
「明日にはマーガレットちゃんと暫く会えないのね…。寂しいわ。」
「私もです。グレース様とのお話はとても楽しいですから。」
「ううっ…。ヘクター貴方も寂しいわよね?」
素直に寂しがっているグレース様の気持ちは嬉しかった。
不意にヘクターにまで話を振られると、そんな事を言われても困るだろうと眉を下げてヘクターを見る。
するとヘクターもまた此方を見ていた。
まあ…ヘクターの素直じゃない性格上
素直になんてーー。
「…そうだな。」
「へっ?」
ヘクターの肯定の返事に、予想外過ぎて思わず変な声が出てしまう。
「寂しくなる。」
そう言って私を見つめるヘクターはジッと此方を見ている。
その視線に耐え切れず目を逸らして突然のデレ展開に熱くなった頬を抑える。
ヘクター!?
貴方そんなキャラじゃなかった筈!?
内心動揺しつつも冷静さを保とうと呼吸を落ち着かせる。
「…はぁ、いっその事ヘクターとマーガレットちゃんが結婚してこの家に入ればいいのだけど…。」
「「 !? 」」
グレース様は自分が何を言ったのか絶対判っていないと思う。
私とヘクターは爆弾発言に驚いて顔を見合わせてしまったけれど、直ぐにお互い顔を逸らす。
チラッとヘクターを覗くとヘクターも赤くなっているのが判った。
「…ん? …そうよ、そうだわ!マーガレットちゃん、ヘクターと婚約するのはどうかしら!」
「グレース様!」
「あ、あの…。」
「マーガレットちゃんはヘクターが相手じゃ嫌かしら…?」
グレース様の突然の申し出に、普段無表情なヘクターが素直に動揺していると、返事に困っている私にグレース様は追い討ちをかける様に問いてきた。
「やっぱり平民は難しいかしらね?それなら私の養子に出来るけれど…。」
その一言でヘクターの顔が強張るのが判った。
「平民とか貴族とか関係ありません。」
「あら!じゃあ…。」
「…すみません。不敬をお許し下さい、グレース様。申し訳ありませんがお断りします。」
はっきり告げた私の真剣な目を見て、グレース様はまさかキッパリ断るとは思わなかったのだろう。
私はそう言った瞬間、強張ったヘクターの表情に気付かなかった。
婚約は確かに今のこの貴族社会では珍しくない。しかもグレース様は公爵家の人間だ。本来なら断る事も不敬だろう。
けれどそう言われた瞬間、頭を過ぎったのはクラウスだった。
どんなにヘクターがいい人だとしても、結ばれない運命だとしても、私は…。
一瞬グレース様はヘクターを見たが私に向き合うとゆっくり頷く。
「理由を聞いてもいいかしら…。これでも、マーガレットちゃんがヘクターを嫌ってない事くらいちゃんと判るのよ?」
「…ずっとお慕いしている人がいるのです。」
「…っ!」
「あら…そう、そうなのね…。」
グレース様に真っ直ぐ見つめられて素直に好きな人が居るのだと伝えると、グレース様は私の手をギュッと包み込んだ。
その時、グレース様に告げる時に手を強く握りしめていたのだと気付いた。
「ごめんなさい。マーガレットちゃん…そんなに想う相手がいるのね。」
無意識に頬を伝っていた涙をグレース様が優しく拭ってくれる。
「いえ…叶わない想いなのです。けれど…まだ他の方を考えられそうにはないのです…。」
「そう…。辛い恋をしているのね。」
グレース様に〝辛い恋〟そう言われて私は首を横に振った。
確かに前世も今も叶わない恋だ。
今の〝彼〟クラウスには運命の相手がいるのだから。
前世の時は画面越しに伝えられない〝好き〟と言う不毛な恋をした。
好きで、好きで仕方なかった。
けれど、辛い想いだけではなかったから。
好きになって幸せな気持ちを与えてくれたのも本当だ。
画面越しに一緒に泣いて、一緒に笑った。
その瞬間は側に居ないけれど間違いなく私は幸せだった。
だから〝辛い恋〟とは呼びたくなかったのだ。
中々止められない涙をグレース様は優しく拭いながら落ち着くのを待ってくれた。
「…すみません。見苦しい所をお見せしてしまって。」
「いいのよ!私こそごめんなさいね、マーガレットちゃんの気持ちを持っと考えてあげられなくて。」
「いえ…。」
落ち着きを取り戻した私にグレース様は優しく微笑んでくれた。
隣にいるヘクターは眉を顰めて複雑そうな顔をしている。
それはそうだろう。
いきなり泣き出されたら困るに決まってる。
申し訳なさと、泣き続けた恥ずかしさで私は小さくなってしまう。
「けれど…残念だわ、マーガレットちゃんの事は諦めなきゃねえ、ヘクター?」
「!」
溜息を吐きながらヘクターを茶化す様に話を振るグレース様に私は目を見開いた。
何を言ってるの?それはグレース様が言い出した事で、ヘクターはそんなんじゃ…。
せっかく仲良くなり始めたヘクターに迷惑をかけると、慌てて私とヘクターはそんな仲ではない。友人だと訂正しようとした。
「…そいつを越えればいいだけだ。」
「!?」
「ふふ、そうよね!そうでなくちゃ!!」
「!!?」
ヘクターがそう言って驚いている私を見ると、グレース様は嬉しそうに目を細めて微笑んでいる。
ヘクターのその瞳は熱を含んでそれを伝える様に私の頬に熱を移した。
「マーガレット、逃げられると思うなよ?」
そう言ってヘクターは不敵な笑みを浮かべた。
初めて見せてくれたヘクターの笑顔に、少年の様な可愛らしさは何処にも無かった。
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次回、〇〇目線になります。
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