モブのモブ!? 気付いたら、大好きなアニメの世界だった!?

SORA

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ヴァルは数時間置きに様子を見に来ては、私が退屈しない様にお菓子や本を持ってきていた。

私、一応人質(?)なのよね?

部屋から出る以外には拘束すらされず、丁寧に扱われる事に戸惑いを覚えるなと言う方が無理だと思う。

ヴァルは私の名前を聞くまではマーガレットだと知らなかった。私が間違えて連れて来られたと思ったのだろうか。拐うつもりもなかったみたいだし、きっと他の誰かが私を利用しようとして連れてきたのだろうけど…。

それにしたって…。何だろうこの完全なお客様扱い?

そんな事を考えていると、部屋に誰かが入って来た。
ヴァルかな?と振り向くと、ヴァルとは違う男が立っていた。

「…っ!」

私を舐める様にジロジロと見たその男は、異様なくらいニヤニヤとしながら此方へ近づいて来る。私はその男から少しでも離れようと部屋の隅まで後ずさる。

「おいおい。お嬢ちゃん、つれないじゃないか。ヴァルとは遊べて俺とは遊べないのか?」

そう言って男は私に近づいて来る。

何を言っているの?この人。

訳の判らない事を言う男を不思議に思ったが、この男が私にとって危険だと言う事だけは確かだ。

「来ないで下さい!」

部屋の出入り口はこの男が入って来た場所だけだと逃げ場のない危機的状況に、近づかないでと大きな声で言う事しか出来ない。私の言葉を無視しながら近づく男。

「来ないで!」

間近まで来た男は私の腕を強く引くと、床に倒した。

「っつ!」

「お嬢ちゃん、俺とも仲良くしようじゃないか。なあ?」

倒された痛みで顔を顰めると、男は舌舐めずりしながら私を見下ろす。

誰か…っ!

恐怖で声にならない叫びで助けを呼び、ギュッと目を閉じると、同時に鈍い音がして急に男の気配を感じなくなり恐る恐る目を開くと、私の前に男が倒れていた。

…何が起きたの?

呆然とする私の元にバタバタと足音が聞こえて扉の方へ目をやると、勢いよく飛び込んで来たのはヴァルだった。

「お嬢さん!大丈夫か!?」

「「……。」」

驚く私と倒れる男を交互に見るヴァルは、深い溜息を吐いた。

「あ~、なんだ?大丈夫みたいだな。」

「はい…。」

「立てるか?」

そう言ってヴァルは私を引き起こしてくれる。

「何があった?」

「ヴァルさんが来たと思ったら、この人がやって来て…っ!」

説明しようとして、思い出すと掴まれた腕が青くなっている事に気づいた。その力強さを思い出しゾクリとした。

「怪我…したのか?此奴っ!」

私の腕の痣に気付いたヴァルは倒れている男を射殺さんばかりに見つめる。

「…大丈夫です。気付いたらこの人倒れていたので…。」

「…すまない。」

落ち着いて何とか説明すると、ヴァルは怪我をした私を気遣う。

「この男は厳しく罰する事にするよ。」

声がする方を見ると、ヴァルの後ろからその人は出て来てゆっくりと此方に近づいて来た。

「!?」

ヴァルの後ろからやって来たのは、ドウェイン・ルクス。王太子派の貴族でヴァルの雇い主だ。

ドウェインの登場に驚いている私に、人の良さそうな笑顔を見せるドウェイン。

「この間夜会で会ったお嬢さん。あの時は急いでいて名乗っていなかったね。私はドウェイン・ルクスと言う者だよ。」

「…マーガレット・ブランと申します。あの時は、ハンカチをありがとうございました。」

動揺しつつもドウェインと挨拶を交わすと、閉じ込められていた部屋から出してくれた。

「ヴァルから聞いただろうが、先ずはすまない。我々の意図せず所で君を巻き込んでしまった。」

応接室らしき部屋に連れて来られた私は、ドウェインから謝罪された。

「巻き込む…。」

ドウェインは私に色々教えてくれた。
ドウェインとヴァルは今、王太子派の貴族達のやり方について行けなくて離れようとしていた事。
それに気付いた貴族達がドウェインを嵌めようとしている事。
そしてエリオット派のクラウスと関わりのある私がその罠に使われた事。助け出す為にクラウス達が動く事になる事。
だからこの屋敷に居るのだと話してくれた。

「すまない。関係の無い君を巻き込んでしまった。」

「…よかったんですか?そんな大切な事を私に話して。」

「何も知らないまま巻き込まれるのは嫌だろう?…それに既に第二王子派の連中は動き出しているからね。」

改めて謝罪するドウェインに困惑していると、これは機密情報なのでは?と言う様な事を言って来た。

「貴族達が此方の方へ動き出している。裏切り者の私達の元へ。」

貴族達が動くという事は既にドウェインはその人達を見限ったのかもしれない。

「大丈夫なのですか?」

ヴァルが強いのはあのアニメの通りなら間違いないけれど、ドウェインは大丈夫なのだろうか?

「心配いらない。エリオット様の部下が君を助けに来るまでは、私達が君を守ると誓おう。」

ドウェインは自分の心配ではなく、巻き込んだ私の心配をしていた。
そんな事を言いたいのではないのだけれど…。

「…ドウェイン様達大丈夫なのですか?」

改めてそう尋ねると、ドウェインは何も言わずに笑みを浮かべていた。
まるで覚悟は決まっていると言うかの様に…。

「この屋敷の中なら自由に出歩いて構いません。さっきの奴みたいな者はもういないですから、安心して下さい。」

そう言ってドウェインは部屋を出て行った。


◇◇◇◇◇

ドウェインとヴァルが出て行って一人部屋に取り残された私は、どうしていいか判らずその場から動く事が出来ずにいた。

「いや~、危なかったね、お嬢様。」

「!?」

誰も居ないはずの部屋から突然聞こえて来た声に振り返ると、そこには誰もいない。

「あ~、お嬢様。すみませんが訳あって姿は見せられないんですが、お嬢様の味方です。なのでそのままで話して下さい。」

姿は見えない相手だけれど、敵意は無いと伝えて来た。

味方ってどう言う事だろう?と不思議に思っていると、さっきの事男が急に倒れた事を思い出した。

「…もしかしてヴァルさんが来る前に助けてくれましたか?」

「それが仕事だからね~。でも間に合って良かったよ。」

「ありがとうございます。」

「どう致しまして。」

襲われそうな所を助けてくれたのか問いかけると、何でもないとでも言う様な口調で返された。

「それで?どうして思い詰めた顔しているんですか?」

「…そんな顔してましたか?」

「はい。お嬢様は誘拐した彼らを助けたいですか?」

「……はい。」

「お嬢様人が良すぎますよ~。貴女拐われたんですよ?」

声の主の問いかけに頷くと、呆れた様な返事と共に溜息が返ってくる。

「まあ、主も思う所があるからお嬢様に危険が無い限り手出しするなって言ってましたがね。」

「え…。」

声の主がさらりと告げた事に目を見開く。
この声の主は私が拐われるのを知っていた?

「取り敢えずお嬢様はクラウス殿達をお待ち下さいよ。」

「あっ!ちょっと待って…!」

気になる言葉を残した声の主は、そう言ってそれきり呼んでも答える事はなかった。


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