付与術師は聖剣を作りたい……。

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夜景と美少女は映えるのです。

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「では、私達の出逢いに乾杯。」
 アリスが大人びた表情で言いながらグラスを掲げる。
 アルフレッドとミリアは、同じように「乾杯」と言ってグラスを掲げ、中の液体を飲み干す。
 アルフレッド達がいるのは、高級レストラン「シェルフィン」の展望ルーム。
 極一部の限られた人達しか入れないVIPルームだ。
 製造が難しく、王都でも中々見かけない硝子板で囲まれたこの部屋からは、街中が一望でき、眼下には煌めく夜景が広がっていた。

「街の明かりが、まるで星の海の様に見えませんか?私のお気に入りなんですの。」
 そう言って笑いかけてくるアリスの表情は年相応に見えて、アルフレッドの表情も自然と柔らかくなる。
「ホントだぁ~。素敵!アリスちゃんありがとうね。」
 振り返るミリアの笑顔は、きらめく街明かりに埋もれることなく輝いている。
 アリスに態度に何か裏があるのでは?と警戒していたアルフレッドだが、ミリアのこんな表情を見れたなら良しとするか、とアルフレッドは思うのだった。

 その後も他愛のない会話を交えつつ、食事をすすめていく。
 アリスは、冒険の話を聞きたがり、それをうけてミリアが今までにあったことを、面白おかしく話していく。
 と言っても、大半がアルフレッドのミリアに対する扱いが酷い、と言う話になるところから、いかに普段からミリアが不満をため込んでいたか、と言うことが見え隠れしている。

 その様な会話をしている間にも、料理のコースはすすんでいく。
 一流のレストランだけあって味も雰囲気も文句無しだった。
 ふと気になって、さり気なく料金を聞いてみると、コース内容にもよるが、平均して銀貨20枚前後と言われ、だったらコレくらいの味と雰囲気とサービスは当たり前か、と納得するアルフレッドだった。

「さて、そろそろ本題に入りましょうか?」
 デザートが出てきたところで、アリスがそんなことを言う。
「本題?」
 この場に似つかわしくない単語が、アリスの口から発せられたのに驚き、アルフォードは彼女を見つめる。
「えぇ、本題ですわ。アル様やお姉さまをここに呼んだ……ね。」
 アリスはニッコリと微笑みながらそう告げた。
「えーと、アリスちゃん?私、そろそろ帰っていいでしょうか?」
 ミリアが恐る恐ると言った感じでそう告げる。
 アリスの笑顔を見た時、ミリアは「この笑顔、見た事がある」と思うと同時に、この先自分に何が起きるのかを、一瞬のうちに悟ったのである。
 そう、アリスの笑顔は、アルフレッドが自分に対し、無茶ぶりをするときの笑顔と同じだったのだ。

「あら、お姉さま。そんなこと言わずに、ここのデザートは絶品ですのよ?」
「え、えぇ、美味しいけど……アルぅ~。」
 助けを求める様にアルフレッドを見るミリア。
「アル様、ここのお食事はどうでしたか?」
「いや、そのな、確かに美味しかったが……。」
 アルフレッドが何かを言う前にアリスが訊ねてくる。
「それは良かったですわ。では依頼料の一部としては十分ですわね。」
「「えっ?」」
 アリスが何を言っているのか分からない、という顔をするアルフレッドとミリア。
「ここの支払いは依頼の報酬に含まれていますので、安心してくださいな。お姉様、お代わり頼みますか?」
 デザートのケーキのお皿を掲げながら、アリスがミリアに問いかけるが、ミリアはフルフルと首を振る。
「えっと、一つ確認したいのだが?」
「ハイ、何でしょうか?」
「依頼の報酬って、昼の護衛依頼の事だよな?」
 ニコニコと笑っているアリスに、アルフレッドは恐る恐る訪ねる。
「イヤですわ。アル様ったら何おっしゃってるんですか?昼の依頼料はすでに支払い済ですわよね?」
「じゃぁ、依頼料って言うのは……。」
「勿論、これからお話する依頼の報酬ですわ。」
「その依頼を受けないと?」
「それはぁ、やっぱりぃ、ここの支払いをしていただきませんとぉ……。」
「……ちなみにいかほど?」
 惚けたように言うアリスに、一応料理の値段を聞いてみる。
「そうですわねぇ。お二人に喜んでいただきたいと思って少し頑張りましたからぁ……大体おひとり様銀貨30枚でしょうかぁ?」
 その金額を聞き、アルフレッドはミリアを見るが、彼女はフルフルと首を振り、両手で大きくバッテンを作る。
 アルフレッドが受け取ったお金は、素材や触媒を購入したせいで、宿代程度しか残っていないが、どうやらミリアの方も似たような状況らしかった。

 くっ、まさか、こう言う手で来るとは……ハメられた!とアルフレッドは思う。
 取りあえず、話は聞いてやるとしても、依頼については絶対に断ってやろうと心に決める。
 こういう脅しを受け入れる謂れもなく、こんなことを許す訳にはいかない。
 支払いについては……まぁ、訳を話して皿洗いでもすれば何とかなるだろう。
「……それで、依頼というのは?」
 何があっても断ってやる、と、アルフレッドは目の前のアリスを睨む。
「ハイ、私の護衛です。」
 嬉しそうにそう答えるアリス。
「それだけか?」
「これ以上は、正式に受けていただいてからお話いたしますわ。それで依頼料なのですが……。」
 アリスが出してきた条件は、1日当たり銀貨2枚、襲われた時など危険があった場合、その程度に応じての危険手当は別途あり、そしてここの支払いと依頼を受けている間のこの街での滞在費という事だった。
 条件としては悪くなく、普段であれば受けても構わなかったが、この様にハメて来る相手の依頼など素直に受けれるわけがない。
 アルフレッドは、断りの言葉を告げる為にアリスを見る。
 彼女は物怖じもせずニコニコと笑っている……が、テーブルの上に置いた手が微かに震えているのが見えてしまった。
 それを見たアルフレッドは、彼女にはここまでするほど深い理由があり、必死なんだという事が分かってしまい、言葉に詰まる。

「仕方がないですね。その依頼受けてあげます。」
 横からミリアが口を挟む。
 ミリアはそのままアリスの背後へ移動し、後ろからそっと彼女を抱きしめる。
「アリスちゃんが、ヘタに隠し事をせず、ちゃんと話してくれるならね。」
 ミリアがそう囁くと、アリスの身体から力が抜けるのが分かる。

 ミリアも、途中からだったが、アリスが無理をして演技をしている事に気が付いていた。
 そして、その小さな体が震えている事にも……。
 だからだろうか、気づいたらアルフレッドが答えるより早く、口と身体が動いていた。
 アリスは驚いた顔でミリアを見あげ、そしてアルフレッドに視線を戻す。
「ホントに……受けていただけるの……ですか?」
「まぁ、金がないからな。ここの支払いなんかとてもじゃないが無理だしな。」
 アルフレッドはそっぽを向きながら、そんな風に言う。
 その姿を見て、ミリアはクスリと笑い、素直じゃないんだから……と、小さな声で呟く。
「ありがとうございます……。」
 そんなアルフレッドやミリアに対し御礼を告げるアリスの眼から一滴の涙がこぼれる。
「あれっ?なんでだろう、おかしなぁ……。」
 アリスは慌てて目元を拭うが、緊張が解けた反動か、次々と溢れ出す涙を抑える事は出来なかった。

  ◇

「まだ怒ってるの?いい加減機嫌直してよぉ。」
 アリスとの食事を終えた帰り道、アルフレッドと腕を組んで歩くミリアが、絡ませた腕をさらに引き寄せながら、甘えた声を出す。
 ミリアが纏っているのは、薄い青を基調とし、レースをふんだんに使用したワンピースタイプのドレス。
 ミリアが動く度に、膝丈より少し上でふわりと翻るスカートの裾が、可愛らしさを演出している。
 アルフレッドの腕を包み込んでいる、少し開いた胸元が、いつもより強調されているのは、きっと色々盛っているからだろうと推測されるが、そんなことを正直に言わないだけの分別は、アルフレッドも持ち合わせている。
 高級レストランでの食事という事で、気合を入れておめかししたミリアの姿は、それなりに長い付き合いになるアルフレッドにしても新鮮なものであり、ぶっちゃけ、どぎまぎしていて、普段のような軽口が叩けるような状況ではなかった。

「おぅ、まぁ……別に……怒ってはいない。」
 だから、殊更ぶっきらぼうな口調になるのも仕方のない事ではあった。
「えへっ。」
 ミリアは、何が嬉しいのか、笑顔を振りまきながら掴まっている腕に更にしがみついてくる。
「歩き辛い……。」
「もぅ、ムードないなぁ。それに折角買ったんだからもっと褒めてよぉ。」
 そう言いながら、ミリアは少し離れると、ドレスを見せる様にくるりとターンをする。
 遠くの街明りをバックに、近くの淡い街灯に照らされた彼女の姿は、幻想的と言っても過言ではない程輝いて見える。
「あぁ、可愛い可愛い。」
 だから、アルフレッドは内心の動揺を押し隠すように、ワザと軽い調子でそう答える。
「もぅ!心籠ってないよぉ!」
 少し膨れっ面をしながらも、ミリアの顔には笑顔が浮かんでいた。
「お前、酔ってるだろ?」
「エヘッ、酔ってないよぉーだ。」
「酔っぱらいはみんなそう言うんだよ。」
 アルフレッドは、呆れつつも、ミリアの身体を支える。
 ミリアは、重心を預けながら、アルフレッドに寄り添う。
「アリスちゃん、何か色々抱え込んでそうだよね。」
「あぁ、厄介事の塊にしか見えないな。」
 歩きながら、ぼそりと呟くミリアに、アルフレッドはそう返す。
「うん……でも放っておけなくてつい……ヤッパリ怒ってる?」
 ミリアがアルフレッドの顔を覗き込むように見あげてくる。
 アルコールが入っているせいか、上気して赤く染まった頬、少し潤んだ瞳……元より、エルフ特有の整った顔立ちの所為で、普段より可愛く見えてしまう。
「怒ってないって……ミリアが言い出さなくても、結局は依頼を受けていたさ。」
 アルフレッドは、動揺を抑えながらそう答える。
「だよねぇー。アルってば女の子にやさしいもんねぇ。」
 このロリコン、と笑いながら見上げてくるミリアのおでこにデコピンを入れる。 
 アイタタと額を抑える姿が、また何とも可愛らしく、アルフレッドの鼓動がさらに早くなる。
 ミリアが可愛く見えるなんて、きっと俺も酔っているんだ……。
 アルフレッドはそう思いつつ、寄りかかってくるミリアを支えながら、宿への道をゆっくりと歩いていくのだった。
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