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五話
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パーティー会場を出ると、私はサイアス様に声をかける。この状況がまだ少し頭の中で整理しきれていないこともあり、ぼんやりとした目でサイアス様を見る。
「あの、エスコートはもう……」
「心配ですから、ご実家までお送りします」
「ですが馬車があるはず……あ」
そこで私はハッと気づく。
今日は、エリオットが先に行くと言ったので、両親と同じ馬車で来た。
御者の雇い主は公爵である父であり、私ではない。
案の定、御者を見ると気まずそうな顔をして目線をそらされた。
「ね。ですから私がお送りします」
「え、ええ。お言葉に甘えることにします……」
私は大人しくサイアス様のご好意に甘えることにした。
しばらくしてサイアス様が連れてきたのは、毛並みの艶やかな白馬。
絵になるなぁ、なんてぼーっと見ていたら、手を差し伸ばされた。
「私は馬車は使わないので、この馬に乗って帰ることになりますが、よろしいですか?」
私は慌てて我に返る。ボーッとしていたらいけない。
「勿論です。むしろ迷惑をおかけして申し訳ないです」
ここから屋敷まで歩いて行くのは流石にきついし、そうすると時間がなくなってあの子を迎えに行く時間がなくなってしまう。それは絶対に避けたいので、サイアス様の提案は嬉しいものだった。
サイアス様の指示通り私は白馬に跨った……というより、何故かサイアス様に横抱きにされ乗る形となった。
サイアス様の意外に締まった腕の中にすっぽりとおさめられてしまう。
下手に動いても迷惑になるだけだとされるがままに固まっているが、一応声をかけてみる。
「あの私、馬乗れるので、気を遣って頂かなくても」
「……いえ、このままで」
どうしてですか?と尋ねずに口を閉じたのは、サイアス様の瞳が何かに耐えるように苦しそうに歪められていたからである。しかしどこかに、快楽も含まれているような気がするのは気のせいだろうか。
白馬が走り出ししばらくすると、この状況に慣れてきて、頭の中で色々なことを考える余裕が出てきた。
頭の中で今後のことについて筋道を立ててみる。
……このまま公爵家の屋敷にいても、明日には荷車に乗せられて大衆に見送られながら、この国を後にすることになるだろう。
でも、それだとあの子が救えない。
誰にも気付かれないうちに、両親の目が離れているうちに、あの子を迎えに行かなければいけない。
これから一度公爵家の屋敷に返ったら、最低限の荷物をまとめて、あの子……弟のルイスを連れ出そう。
これは大きなチャンス。逃すわけにはいかないのよ。
「あの、エスコートはもう……」
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「ですが馬車があるはず……あ」
そこで私はハッと気づく。
今日は、エリオットが先に行くと言ったので、両親と同じ馬車で来た。
御者の雇い主は公爵である父であり、私ではない。
案の定、御者を見ると気まずそうな顔をして目線をそらされた。
「ね。ですから私がお送りします」
「え、ええ。お言葉に甘えることにします……」
私は大人しくサイアス様のご好意に甘えることにした。
しばらくしてサイアス様が連れてきたのは、毛並みの艶やかな白馬。
絵になるなぁ、なんてぼーっと見ていたら、手を差し伸ばされた。
「私は馬車は使わないので、この馬に乗って帰ることになりますが、よろしいですか?」
私は慌てて我に返る。ボーッとしていたらいけない。
「勿論です。むしろ迷惑をおかけして申し訳ないです」
ここから屋敷まで歩いて行くのは流石にきついし、そうすると時間がなくなってあの子を迎えに行く時間がなくなってしまう。それは絶対に避けたいので、サイアス様の提案は嬉しいものだった。
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サイアス様の意外に締まった腕の中にすっぽりとおさめられてしまう。
下手に動いても迷惑になるだけだとされるがままに固まっているが、一応声をかけてみる。
「あの私、馬乗れるので、気を遣って頂かなくても」
「……いえ、このままで」
どうしてですか?と尋ねずに口を閉じたのは、サイアス様の瞳が何かに耐えるように苦しそうに歪められていたからである。しかしどこかに、快楽も含まれているような気がするのは気のせいだろうか。
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……このまま公爵家の屋敷にいても、明日には荷車に乗せられて大衆に見送られながら、この国を後にすることになるだろう。
でも、それだとあの子が救えない。
誰にも気付かれないうちに、両親の目が離れているうちに、あの子を迎えに行かなければいけない。
これから一度公爵家の屋敷に返ったら、最低限の荷物をまとめて、あの子……弟のルイスを連れ出そう。
これは大きなチャンス。逃すわけにはいかないのよ。
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