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六話
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屋敷に着くとサイアス様に礼を言って屋敷に入った。
公爵家の侍女や執事の目はいつにも増して冷たく、もう既に婚約破棄騒動について知っているようだった。
「お帰りなさいませ、オデットお嬢様」
そんな中でも一人、いつもと変わらず私に声を掛けてくれる者が一人。
幼少期から私に支えてくれた私付きの侍女であるティアナだ。
ティアナは私の異母姉として幼少期から共に育ってきたため、私の家族と言っても過言ではない。幼いうちから姉の本性を知っていたティアナは、どんな時でも唯一私を信じてくれるかけがえのない存在だった。
「お話は聞いております。……お側にいられなかった自分が不甲斐ないです」
「貴方が気にすることないのに。ティアナは全く悪くないわ。それよりあまり時間がないの」
出来るだけ早くあの子を連れ出さないと。
「……やはりそのお顔ですと、決心は固まっているようですね」
ティアナは寂しそうに微笑んだ。彼女の赤茶色の髪が微風で揺れる。
気づいていたの、と目を見開く私を見てティアナは寂しそうに目を伏せた。
「オデットお嬢様のことなら私、何でも知っておりますもの。……準備なら既に私がしております。後はルイス様をお連れになるだけ」
「ありがとうっ!」
私は思わずティアナに抱きつく。
突然のことにティアナは少し驚いたような声を上げながらも、次の瞬間には優しく私を抱きしめ返してくれた。
ティアナの存在に何度助けられてきたことか。最後くらいは、昔みたいに甘えてみても良いかな。
そう思って私は私より少し背の高いティアナの胸に顔をうめた。
「ティアナ、今まで本当にありがとう」
例えティアナであっても、家族を捨てて私に着いて行くことは無理だろう。ティアナの両親は彼女を可愛がっている。
ここでお別れね、とティアナに今までの礼を言えば、ティアナは笑いながら返事をしてくれる。
「はい。そしてこれからも宜しくお願いします」
「これからも……?」
ティアナの言葉に、私は顔を上げて彼女を見た。これはどう言う意味で言ったのだろう。もう会えなくなるはずなのに。
「えーっと、もう会えなくなるのよ?ここでお別れなのよ?」
「いいえ、私もついていきますから」
「貴方、家族はどうするの!」
「オデット様を侮辱しルイス様の虐待に同意する親など、もう他人です」
確かにティアナの母親は私のお母様に侍女として、そしてティアナの父親は私のお父様に執事として、仕えているけれど。
「良いの?本当に?」
私の為にそんな決断をして。
不安そうに見つめる私に向かってティアナは口を開にはっきりとこう告げた。
「とっくの昔に決めていたことです」
「そう、なの……」
嬉しいような、恥ずかしいような、心地良い温かさが私の胸に広がっていく。
サイアス様といいティアナといい私に優しすぎる。……って、私にはあまり時間がないんだった!
感動している場合ではない。急がないとと、私は駆け出す。
「ティアナ、少しだけ待っていて。最後にあの子を迎えに行ってくるわ!」
公爵家の侍女や執事の目はいつにも増して冷たく、もう既に婚約破棄騒動について知っているようだった。
「お帰りなさいませ、オデットお嬢様」
そんな中でも一人、いつもと変わらず私に声を掛けてくれる者が一人。
幼少期から私に支えてくれた私付きの侍女であるティアナだ。
ティアナは私の異母姉として幼少期から共に育ってきたため、私の家族と言っても過言ではない。幼いうちから姉の本性を知っていたティアナは、どんな時でも唯一私を信じてくれるかけがえのない存在だった。
「お話は聞いております。……お側にいられなかった自分が不甲斐ないです」
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ティアナは寂しそうに微笑んだ。彼女の赤茶色の髪が微風で揺れる。
気づいていたの、と目を見開く私を見てティアナは寂しそうに目を伏せた。
「オデットお嬢様のことなら私、何でも知っておりますもの。……準備なら既に私がしております。後はルイス様をお連れになるだけ」
「ありがとうっ!」
私は思わずティアナに抱きつく。
突然のことにティアナは少し驚いたような声を上げながらも、次の瞬間には優しく私を抱きしめ返してくれた。
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そう思って私は私より少し背の高いティアナの胸に顔をうめた。
「ティアナ、今まで本当にありがとう」
例えティアナであっても、家族を捨てて私に着いて行くことは無理だろう。ティアナの両親は彼女を可愛がっている。
ここでお別れね、とティアナに今までの礼を言えば、ティアナは笑いながら返事をしてくれる。
「はい。そしてこれからも宜しくお願いします」
「これからも……?」
ティアナの言葉に、私は顔を上げて彼女を見た。これはどう言う意味で言ったのだろう。もう会えなくなるはずなのに。
「えーっと、もう会えなくなるのよ?ここでお別れなのよ?」
「いいえ、私もついていきますから」
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確かにティアナの母親は私のお母様に侍女として、そしてティアナの父親は私のお父様に執事として、仕えているけれど。
「良いの?本当に?」
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「そう、なの……」
嬉しいような、恥ずかしいような、心地良い温かさが私の胸に広がっていく。
サイアス様といいティアナといい私に優しすぎる。……って、私にはあまり時間がないんだった!
感動している場合ではない。急がないとと、私は駆け出す。
「ティアナ、少しだけ待っていて。最後にあの子を迎えに行ってくるわ!」
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