聖女であることを隠す公爵令嬢は国外で幸せになりたい

カレイ

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十九話

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 騎士たちの手が一旦引っ込んだところで、私はティアナに話しかけた。

「ティアナ、これ以上は無理よ!これからはルイスだけを守って」
「主人の願いといえど、それだけは聞きません。私はまだ諦めてなんかいませんもの、オデット様」

 目を細めたティアナに、騎士たちが腹を抱えて笑う。

「まだ諦めないのか?」
「ほんと、威勢だけは良いな」
「出会ってる場所が違ってたらスカウトしてたくらいだぜ」
「可哀想だな、こんな主人のためにここまでして」
「ああ、哀れだ」
「貴方たちこそ、人の心配している場合じゃないですよ?……そろそろ効いてきますかね」

 ティアナは明らかに不利な状況なのに、どこか余裕があった。

「はっ、何を馬鹿なことを」
「俺たちのどこが……」

 言い返そうとした騎士が途中で言葉を無くす。
 どうしたのかと見てみれば、馬の上でグッタリとして、その次には意識を失っていた。

「おい、どうしたんだって……」

 次々に騎士たちは意識を失っていく。
 いつの間にか彼らは全滅していた。
 それを見届けるとティアナは嬉しそうに言う。

「短剣の先に即効性のある毒を仕込んでおいたんです。毒と言ってもそんなに強いものではなく、三日寝込む程度の、眠り薬に近いものですが」
「そう、だったの……」

 だからあんなにブンブンと短剣を振り回していたんだ。
 でも待って。ティアナが倒した騎士は四人。でも最初は十人いたわ。
 後の六人はどこで倒れたのだろう。
 そう思っていると馬車が止まり、サイアス様が目の前に現れる。

「私が全員相手に出来れば良かったのですが、騎士団長に手間取って……オデット様の侍女の方、すみません」
「いえいえ、剣先に毒を塗るなんて考えを教えてくれて、有難い限りです」

 どうやら見当たらなかった人たちはサイアス様が相手していたようだった。
 でも王立騎士団って相当強い人が集まって……それをあんなに倒すなんて、サイアス様っていったい何者?
 考え込む私に、ずっと腕の中にいたルイスが声を上げる。

「姉さん、姉さん」
「あっ、ごめん。何かしら」
「馬車、壊れちゃったよ」
「そうね……確かに」

 馬車の扉は外れ外から丸見え状態だ。
 このまま旅を続けることも出来ない。
 ティアナに相談しようとその姿を探せば、騎士を一人ずつ木に拘束していくティアナとサイアス様の姿が目に映った。ルイスの手を引きながら歩み寄る。

「ティアナ、これは何を……」
「メアリー様への忠告です。これ以上余計な手出しをするなという」
「そう……」
「後、そちらの騎士団長さんに今から尋問するつもりです」

 ティアナが指差す方をみれば、ぐったりと倒れながらも薄ら目を開いてまだ意識のある騎士が一人いた。周りの騎士たちと違って黒のマントを羽織っているところから、騎士団長と判断できる。
 サイアス様は彼を他の騎士たちとは少し離れたところに拘束していた。ティアナは騎士団長に歩み寄る。

「さぁ、全て吐いて貰いましょうか」
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