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二十話
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「はぁ?教える訳ないだろ」
騎士団長はぐったりとした様子ながらもまだ反抗心はあるようで、ぶっきらぼうにそう言い放った。
「じゃなければ、こうするしかありませんね」
ティアナは短剣を騎士団長の首に当てる。
「メアリー様は何と命令してきたのですか?」
話さなければ殺やれると理解した騎士団長は、嫌々ながら口を開いた。
「あのお方は優しいお方だから、連れ去られた愛しい弟を取り返して欲しいと懇願されただけだ!」
「なら何故オデットお嬢様を殺そうと?」
「それは悲しむ王太子妃様を哀れに思って、王太子様が下した命令だ。国外追放で済ませてもらったのにこのザマ。皆の怒りは計り知れない。我々も王太子妃様のためだったらなんでもする覚悟でいるからな」
「そうですか……」
ため息を吐くティアナに対し、姉に対する思いが熱くなったのか騎士団長は早口で喋る。
「賢明なあのお方は、信じたくはないが、もしかすると妹が逃げ出すかもしれないから見張ってくれ、もし逃げたら後をつけてくれ、と婚約破棄騒動の前に仰っていた。我々が公爵家と連動してお前らの動きを見張っていれば、見事に荷造りをして裏切る気満々だった。失望してあのお方に報告したという次第だ」
「私の行動にも気づいていてあえて気づかないふりをしたと。……まぁこれで全部わかりましたね。聞いてない情報までありがとうございます。……最後に、他に追手は?」
「流石に俺たちしかいねぇよ。あのお方は俺たちを信頼して今回の件を任せてくれたからな」
やはり王立騎士団も、姉に上手いように動かされていたのか。予想通りといえば予想通りだけど、姉の信者はいったいどれだけいるのだろう。
ティアナは騎士団長の首に突き付けた短剣を下ろすと、彼の側を離れる。
もう自分には用がないとわかったのか、騎士団長の灰色の目が今度はサイアス様を捉えた。
「サイアス……あのお方を裏切るお前の気持ちが分からない。この女は悪女だぞ。お前がこの女を気にかけていたのは周知の事実だったが、まさかここまで落ちぶれるとは。……平民の成り上がりには難しい世界だったのかもな」
「そうかもしれません」
「なぁ、お前はいつも素っ気ないよな。本当は俺より強い癖してその能力を隠しているし」
「…………」
「まぁ良い、お前の無口には慣れてる」
「…………」
「でも、次は負けない」
騎士団長はそれだけ言うと目を伏せる。
「どうせこのまま暇になるくらいなら、一思いにここで俺も眠らせてくれよ嬢ちゃん。この恥を忘れねぇってことで、背中を斬りつけて欲しいところだが、この状況じゃ出来ねぇな。だったら……」
右頬を突き出す騎士団長。
戸惑うティアナを呼びかける。
「今更戸惑うな。ほら、ほっぺたに一つ」
ティアナは短剣をゆっくりと騎士団長の右頬の上に滑らせた。
「ありがとよ」
それだけ言うと、しばらくして騎士団長は意識を手放した。
騎士団長はぐったりとした様子ながらもまだ反抗心はあるようで、ぶっきらぼうにそう言い放った。
「じゃなければ、こうするしかありませんね」
ティアナは短剣を騎士団長の首に当てる。
「メアリー様は何と命令してきたのですか?」
話さなければ殺やれると理解した騎士団長は、嫌々ながら口を開いた。
「あのお方は優しいお方だから、連れ去られた愛しい弟を取り返して欲しいと懇願されただけだ!」
「なら何故オデットお嬢様を殺そうと?」
「それは悲しむ王太子妃様を哀れに思って、王太子様が下した命令だ。国外追放で済ませてもらったのにこのザマ。皆の怒りは計り知れない。我々も王太子妃様のためだったらなんでもする覚悟でいるからな」
「そうですか……」
ため息を吐くティアナに対し、姉に対する思いが熱くなったのか騎士団長は早口で喋る。
「賢明なあのお方は、信じたくはないが、もしかすると妹が逃げ出すかもしれないから見張ってくれ、もし逃げたら後をつけてくれ、と婚約破棄騒動の前に仰っていた。我々が公爵家と連動してお前らの動きを見張っていれば、見事に荷造りをして裏切る気満々だった。失望してあのお方に報告したという次第だ」
「私の行動にも気づいていてあえて気づかないふりをしたと。……まぁこれで全部わかりましたね。聞いてない情報までありがとうございます。……最後に、他に追手は?」
「流石に俺たちしかいねぇよ。あのお方は俺たちを信頼して今回の件を任せてくれたからな」
やはり王立騎士団も、姉に上手いように動かされていたのか。予想通りといえば予想通りだけど、姉の信者はいったいどれだけいるのだろう。
ティアナは騎士団長の首に突き付けた短剣を下ろすと、彼の側を離れる。
もう自分には用がないとわかったのか、騎士団長の灰色の目が今度はサイアス様を捉えた。
「サイアス……あのお方を裏切るお前の気持ちが分からない。この女は悪女だぞ。お前がこの女を気にかけていたのは周知の事実だったが、まさかここまで落ちぶれるとは。……平民の成り上がりには難しい世界だったのかもな」
「そうかもしれません」
「なぁ、お前はいつも素っ気ないよな。本当は俺より強い癖してその能力を隠しているし」
「…………」
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「…………」
「でも、次は負けない」
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右頬を突き出す騎士団長。
戸惑うティアナを呼びかける。
「今更戸惑うな。ほら、ほっぺたに一つ」
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「ありがとよ」
それだけ言うと、しばらくして騎士団長は意識を手放した。
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