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二十一話
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壊れた馬車は使い物にならないと思ったけれど、ティアナが扉を作ると言い出した。
荷物の中にはその道具があるらしく、どうして持っているのかと尋ねてみれば、最悪家を建てることも考えていたという。
時間帯は深夜。あたりもろくに見えない中、荷物の中からランプを見つけ出した私は、その明かりを頼りに作業をするティアナのそばまで近寄った。
向こうではサイアス様が薪で火を焚いている。慣れた手つきで火をおこしていたのは、騎士団での訓練の経験があるからだろう。そのすぐ側にはルイスが大きな丸太に腰掛けぬくんでいる。
私はランプを地面に置きしゃがみ込んだ。
「何か手伝えることはないかしら」
ノコギリで木を切っていたティアナは手を止め、私の方を向く。
「お嬢様は休んでいてくださいな」
「嫌よ、今まで私何にも出来てないのよ。せめてこれくらいはしないと。木でも何でも切るわ!」
「ですがやはり……」
公爵家の令嬢として育った私は一歩外の世界に出た途端、役立たずと言っても過言では無かった。
アンナとジオールからルイスを守ったのも、騎士団から守ったのも、サイアス様とティアナの二人だ。私は何も出来ていない。
こんなんじゃ、このままルイスと平和に暮らしていけない。
「……お嬢様、確か料理はお得意ですよね」
落ち込んだ私の様子を見て、ティアナがそう言った。
「えぇ、ルイスの食事はよく私が作ったもの」
咽喉の細いルイスでも食べられるような品を、私は隠れてよく作っていた。両親にバレてからは、私の代わりにティアナに頼み込んで作ってもらっていた。
「でしたら、荷物の中に調理器具と少しは食料があったはずです。それで何か作って頂ければ。腹の足しになるような、ちょっとしたもので構いません。馬車を補強するのには、時間がかかりそうなので」
「分かったわ。任せて!」
ランプはティアナの作業に必要だと思いそのまま地面に、体だけ立ち上がった。
馬車に積まれた荷物を漁る。
コンパクトに纏められているとはいえそれはかなりの量があった。その中から何とか調理器具と食料を取り出すと、私は焚き火のそばへ寄る。
「姉さん、何するの?」
「ティアナに頼まれて食事を作るところよ」
「姉さんの料理?やった!」
「待っててね、すぐに作るから」
ルイスの喜ぶ顔を見て沸々とやる気がみなぎる。
料理は、これから毎日必要になることだ。
「オデット様、火をお使いになられるのならこちらに料理用の焚き火をもう一つ作ります。少しお待ちください」
サイアス様はそう言うと、本当に少しの間に私が手に持つ鍋のサイズに合う焚き火を作って下さった。そして何と木材でせっせと、調理場まで作ってしまったのだ。
「こちらの方がやりやすいと思って」
「はい、嬉しいです」
嬉しくなって笑うと、サイアス様の垂れ目も優しく細められた。
「よし、作りましょう!」
体制は整った。調理開始だ。
荷物の中にはその道具があるらしく、どうして持っているのかと尋ねてみれば、最悪家を建てることも考えていたという。
時間帯は深夜。あたりもろくに見えない中、荷物の中からランプを見つけ出した私は、その明かりを頼りに作業をするティアナのそばまで近寄った。
向こうではサイアス様が薪で火を焚いている。慣れた手つきで火をおこしていたのは、騎士団での訓練の経験があるからだろう。そのすぐ側にはルイスが大きな丸太に腰掛けぬくんでいる。
私はランプを地面に置きしゃがみ込んだ。
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「お嬢様は休んでいてくださいな」
「嫌よ、今まで私何にも出来てないのよ。せめてこれくらいはしないと。木でも何でも切るわ!」
「ですがやはり……」
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こんなんじゃ、このままルイスと平和に暮らしていけない。
「……お嬢様、確か料理はお得意ですよね」
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「えぇ、ルイスの食事はよく私が作ったもの」
咽喉の細いルイスでも食べられるような品を、私は隠れてよく作っていた。両親にバレてからは、私の代わりにティアナに頼み込んで作ってもらっていた。
「でしたら、荷物の中に調理器具と少しは食料があったはずです。それで何か作って頂ければ。腹の足しになるような、ちょっとしたもので構いません。馬車を補強するのには、時間がかかりそうなので」
「分かったわ。任せて!」
ランプはティアナの作業に必要だと思いそのまま地面に、体だけ立ち上がった。
馬車に積まれた荷物を漁る。
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「こちらの方がやりやすいと思って」
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