じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ

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「嬉しいです!嬉しすぎてもう……ハァ、屋敷に閉じ込めてしまうかもしれません!……ああ、ずっとこの滑らかな肌に触れてみたかったんです。耐、えられません!どうしてこれほどまでに、貴方は私を狂わすのでしょう」

 状況が飲み込まれない。
 私は現在、されるがままに騎士団長様に強く抱きしめられた。それも後ろから。彼の厚い胸板からは心臓が多く波打つ音が聞こえる。
 そして首筋の匂いをクンクンと嗅がれ、大きなゴツゴツとした手で背中を撫でられた。
 その手はすぐに馬を操る手綱へと移されるが、私の時間は止まっていた。

 ……待って、どういうこと!?一体何が起こっているの?

 ひとまず状況を整理をしよう。
 私はは脳内でこの一瞬の出来事をゆっくりと再生する。
 騙されて森に捨てられてどうするか嘆いていたら、サーシャの計らいで騎士団長様に助けていただいたのよね。ここまでは覚えている。その後「良ければ屋敷に来ませんか?」と言われて「ご迷惑でないならば」と答えたのだが……その途端、体を抱えられて馬に乗せられたのだ。そしてこの状況に至る。

「早くないですか!?」

 展開が早すぎて付いていけない。せめて屋敷についてからだとか思ってしまうのは、私だけではないはずだ。

「もう少しゆっくり馬を走らせますね」
「いや、そうではなくて……」

 馬の上で身動き一つ取れず私はせめて口だけは動かせることに気づいた。

「あのっ、一回話を……」
「限界だったんです!距離を取っていないと、自分があなたに何をしてしまうか分かりませんから……。でもサーシャ様からお話を伺って、これはチャンスだと思ったんです!」
「チャ、チャンス!?」
「ええ、ずっとあなたに、恋い焦がれておりましたから」

 ……えぇっ!
 サーシャではなく私に?
 私は驚きで思わず振り返った。至近距離で騎士団長様の顔を見ると、何やら苦しそうに歯を食いしばっている。

「あの」
「ああっ、駄目です!そんな至近距離で甘い声を聞かされると、ほ、ほんとに耐えられなく……」
「あの、いったんちょっと離して、」

 ください、と言おうとしたところで私の言葉は途切れた。

「ん……!」

 何故なら我慢しきれなくなった騎士団長様が私に口づけを落としたからだ。
 熱を帯びた唇から痛いほど彼の愛情を伝えられ、口付けが終わるとそのまま火照った体を男に預けた。彼はいとも簡単に私を抱き止める。
 クラクラとした頭では何も考えられない。
 騎士団長様は私を愛おしそうに見つめると、慣れた手つきで馬を走らせ始めた。
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