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※妹の怒り2
しおりを挟むお姉様を理不尽な理由で追い出した両親たち。私は彼らの話には耳を貸さずに馬車に乗り込むと、御者に早口で尋ねた。
「お姉様の居場所を知りませんか!?」
「サーシャ様っ!?」
御者は私の反応にビクッと体を震わせた。
無理もないだろう。今までの私はいつもお姉様に守られていて、優しくて穏やかなサーシャを保てていたから。しかしいつもおっとりとしていられたのは、お姉様がいたからに過ぎない。
「お姉様はどこです!?」
「わ、分かりませんっ、シルヴィア様を乗せた馬車はまだ帰ってきてないのです」
「行き先は?」
「ここから一番近い森だと思います!ですが、そうだとしても一番速い馬車でさえ片道五時間かかってしまいますよ」
どうしてそんな酷いところに……!
「分かりました。では今すぐその森へ向かってください。早く!」
「はっ、はひっ!!」
私の大声に御者は反動的に馬車を走らせ出した。
私は馬車の中で一人、お姉様のことについて考えを巡らせる。
……もし私が助け出したところで、伯爵家に二人で戻るのは危険すぎる。だからといって二人で逃亡しても捜索されるかもしれない。どうするのが最適なのでしょう。
「うーん、どこかお姉様を保護出来るところがあれば……う~ん。あっ!」
その時パアッと閃いた。というよりあることを思い出した。
「そうです、騎士団長のバーナード様がいました!」
バーナード様はこの国の英雄と謳われる騎士団長だ。
無敗王の異名をもつほど武力も頭脳も優れたお方で、口を開くことは滅多にない。
しかし彼はこちらが驚くほどお姉様に恋焦がれている。
……鈍感なお姉様はお気付きにならなかったけれど、彼はいつもお姉さまを目で追っていましたもの。
そしてお姉様の言葉にだけ返事をする。
はっきりと目で見て分かる対応の差がそこにはあった。そしてそれが意味していることはすぐに分かる。
……うん。きっとバーナード様ならお姉様を迷わず助けに行ってくださるでしょうし、その後も保護してくださる。
「ええ、決めました」
私は一人で納得して呟くと大声で御者に話しかける。
「すみません!行き先を変えたいのですが」
「えぇっ!?」
馬車はキキーッとブレーキがかかり、急に止まったことによって体のバランスが崩れる。それでも私は声を張り上げて言った。
「目的地変更です!まずは騎士団長バーナード様のお屋敷に向かって下さい」
「ええ!?でも突然の訪問はやめといた方が……」
「緊急事態なので仕方ありません。後で謝罪はしっかりとします。ですから今はとにかく急いでっ!」
再び馬車は凄いスピードで走り出した。私は馬車の中で、どうにかなって下さいと祈りを捧げるばかりだった。
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