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幸福
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「今日はとうとう王太子様の結婚式かー」
「まぁ、俺らからすればステラちゃんを酷い目を遭わせた奴の結婚式なんて、どうでも良いがな」
「しかし王妃様だけは別だぞ」
「ああ、結婚相手も王妃様が選んだ方だから、きっと素晴らしいお方なのだろう」
王太子の結婚式当日、店には沢山のお客さんが訪れていました。その全てが私を気遣うためにしていることだと知って自然と知って自然と笑顔が溢れます。
「心配しなくても大丈夫ですよ。もう私とは関係ないことですし。それによくよく考えれば、彼らのおかげで私は今ここにいられる訳ですから」
「まぁ、ステラちゃんが気にしてないなら良いけれど」
「でも、なんかあったら強がらずにすぐおばちゃん達に言うんだよ」
「ありがとうございます」
和やかな雰囲気の中、次第に外から歓声や音楽が聞こえてきました。
「お、そろそろパレードの時間か……」
「ご馳走様。お金はここに置いておくね」
「あ、ありがとうございます!」
お客さんは次々と外に出て行きます。
「……行かなくて良いのか?」
厨房から出てきたシドさんが私に声をかけてきました。
「そうですね、私は……」
「ステラちゃん!」
「行かなくて良いです」と答えようとしたところで、勢いよくお店の扉が開きました。勢いよく入ってきたのは、元公爵家の兵隊さんの一人でした。片手に手紙を持ちながら、私の元まで近寄ってきます。
「これ、王妃様からのお手紙です!」
「王妃様からの?」
私はそれを受け取るとすぐに封を開けました。一文字一文字を大事にゆっくりと目を通していきます。
そこには「幸せになれましたか」とだけ一筆。
思わず私は外に飛び出します。
王族を乗せた馬車が向こうから見えました。先頭に主役の王太子とその花嫁が。その後ろに国王様と……王妃様が。
歓声が響く中でちょうど馬車が私の目の前に来た時、国王様は私に気づいたようで、私と目が合うとバツが悪そうな顔をそっと私から逸らしましたが、私は気にせず王妃様を探します。そうして王妃様を見つけると、大きく息を吸って叫びました。
「幸せです!!」
王妃様がふと私の方を真っ直ぐ私の方を振り向きました。視線が合うと、一瞬、何とも嬉しそうに微笑まれます。
そしてその直後目が合った王太子からは、もう以前のような私を見下す視線は感じませんでした。代わりに感じるのは、謝罪に決意。きっと私の勘違いなのでしょうけれど、それでもどこか変わった彼に、私はこの国をよろしくお願いしますと心の中で伝えました。
私が店に戻るとシドさんが私を出迎えてくれます。そして、一瞬の出来事に深呼吸する私に少しの間微笑むと、何も言わずに厨房へと戻っていきました。
遠くから聞こえる楽器隊の音を聞きながら、私は思います。
どれだけの人が私を思ってくれているのか。
王妃様にシドさん、公爵家の兵隊たち……。私に幸せをくれる人が気づいたらこんなに沢山いる。
なんだか今が、この時間が、とてつもなく幸せに溢れていると感じて、思わず胸が詰まります。
緩まった涙腺を引き締めるように私は頬を叩いて喝を入れると、気持ちを新たに仕事に取り掛かりました。
「まぁ、俺らからすればステラちゃんを酷い目を遭わせた奴の結婚式なんて、どうでも良いがな」
「しかし王妃様だけは別だぞ」
「ああ、結婚相手も王妃様が選んだ方だから、きっと素晴らしいお方なのだろう」
王太子の結婚式当日、店には沢山のお客さんが訪れていました。その全てが私を気遣うためにしていることだと知って自然と知って自然と笑顔が溢れます。
「心配しなくても大丈夫ですよ。もう私とは関係ないことですし。それによくよく考えれば、彼らのおかげで私は今ここにいられる訳ですから」
「まぁ、ステラちゃんが気にしてないなら良いけれど」
「でも、なんかあったら強がらずにすぐおばちゃん達に言うんだよ」
「ありがとうございます」
和やかな雰囲気の中、次第に外から歓声や音楽が聞こえてきました。
「お、そろそろパレードの時間か……」
「ご馳走様。お金はここに置いておくね」
「あ、ありがとうございます!」
お客さんは次々と外に出て行きます。
「……行かなくて良いのか?」
厨房から出てきたシドさんが私に声をかけてきました。
「そうですね、私は……」
「ステラちゃん!」
「行かなくて良いです」と答えようとしたところで、勢いよくお店の扉が開きました。勢いよく入ってきたのは、元公爵家の兵隊さんの一人でした。片手に手紙を持ちながら、私の元まで近寄ってきます。
「これ、王妃様からのお手紙です!」
「王妃様からの?」
私はそれを受け取るとすぐに封を開けました。一文字一文字を大事にゆっくりと目を通していきます。
そこには「幸せになれましたか」とだけ一筆。
思わず私は外に飛び出します。
王族を乗せた馬車が向こうから見えました。先頭に主役の王太子とその花嫁が。その後ろに国王様と……王妃様が。
歓声が響く中でちょうど馬車が私の目の前に来た時、国王様は私に気づいたようで、私と目が合うとバツが悪そうな顔をそっと私から逸らしましたが、私は気にせず王妃様を探します。そうして王妃様を見つけると、大きく息を吸って叫びました。
「幸せです!!」
王妃様がふと私の方を真っ直ぐ私の方を振り向きました。視線が合うと、一瞬、何とも嬉しそうに微笑まれます。
そしてその直後目が合った王太子からは、もう以前のような私を見下す視線は感じませんでした。代わりに感じるのは、謝罪に決意。きっと私の勘違いなのでしょうけれど、それでもどこか変わった彼に、私はこの国をよろしくお願いしますと心の中で伝えました。
私が店に戻るとシドさんが私を出迎えてくれます。そして、一瞬の出来事に深呼吸する私に少しの間微笑むと、何も言わずに厨房へと戻っていきました。
遠くから聞こえる楽器隊の音を聞きながら、私は思います。
どれだけの人が私を思ってくれているのか。
王妃様にシドさん、公爵家の兵隊たち……。私に幸せをくれる人が気づいたらこんなに沢山いる。
なんだか今が、この時間が、とてつもなく幸せに溢れていると感じて、思わず胸が詰まります。
緩まった涙腺を引き締めるように私は頬を叩いて喝を入れると、気持ちを新たに仕事に取り掛かりました。
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